愛の囀り【オル相】 信用されていないとは思っていた。
私が語る愛はきっと君の耳には未だに鳥の囀りに劣る雑音なのかもしれない。
それでも、人目を盗んで触れ合わせた手と手や、我慢できなくて外で仕掛けてしまったキスや、他にもたくさんの些細な出来事が私と君の想いは繋がっているのだと思わせた。そこだけは、同じ気持ちでいてくれていると半ば祈りにも似た気持ちで確信していた。
ああ、なのになのに。
「あんた、別に俺じゃなくてもいいんでしょう」
私が生きていく上でのたくさんの隠し事が君にとって疑念の種だということを私は知っている。こんなにも上滑りして白々しい愛なんてよく言えますねと君が吐き捨てる根本が、私の不誠実な態度に起因することも知っている。
私は最初から間違えたのだ。
君を愛しさえしなければ、中途半端に想いと体を繋げなければ、こんなに君を苦しめることはなかった。
だけど私には、目を逸らして私に背を向け去ろうとする君を見送るだけの勇気もない。
「君じゃなきゃだめなんだよ」
ほんとうに、ほんとうに思っているのに、多分この言葉すら、君には溜息の理由にしかならなくて。
私がよっぽど酷い顔をしているらしいのを、蔑んで憐れむように君は目を細めて見る。
そして私は、立ち止まった沈黙で許されたのだと思い込みたくて君をベッドに引き摺り込んだ。身のうちに留め置けない衝動を全部ぶつけて、それでもなお、私に背を向けて汗の引いた今も一言も発さない君をどこにも行けないように掴んでいる。
「愛してるよ」
「……そうですか」
本気になれば私のことなど振り払い見つからないよう身を隠せる君が、敢えて私の指先が引っかかるギリギリのところでいつも踏み止まっていてくれることが君の愛の発露なのだと自惚れて楽観視できるようになるには、多分あとこの夜を百回は越えないといけない。