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    ankounabeuktk

    @ankounabeuktk

    あんこうです。オル相を投げて行く場所

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    龍神パロ

    満つ【オル相】 旱と疫病、食べ物もなければ年寄り子供ばかりか働き手も次々死んで、煮炊きの煙より死体を焼く煙の方が多かった。親が死んで悲しみに暮れる間も無く家族三人の慎ましいあばら屋は自称親戚に乗っ取られ、祈祷師の婆さんの神託に従って村長は荒ぶる龍神様に贄を差し出すのだと成人前の子供を集めて籤引きをした。自分に向けられた萎びた藁を握る村長の表情は苦渋の選択だと匂わせている。でも俺は俺の隣にいる村長の娘が絶対に選ばれないことを知っている。
     神様というものは、ていのいい方便に使われる名前でしかないから。
     引き上げた先に赤い印のついた藁を眺め、嬉しさに泣き崩れる周囲の子供と駆け寄り抱き締める親の安堵の声を聞きながら、自分達が悪者になりたくないだけの意気地無しに聞こえないように、こんな茶番じゃなくて最初から俺を指名すれば良かったのにと呟いた。




     それが、三年前の出来事だ。
    「八木様。朝ですよ」
    「もうちょっと……昨夜遅くて……」
    「そうですか。ではおやすみなさい」
     太陽の光を拒むように布団を頭上まで引っ張り上げた八木様は、その立派な角までは隠さない。
     起きたくないなら放っておこうと俺は呼びかけをやめて立ち上がろうとすると、がばりと布団を跳ね上げて飛び起きた。
    「もうちょっと粘ってよ!」
    「眠いんでしょう?」
    「違うよ、消太に起こされるのを少しでも長く味わいたいの!」
    「……はあ」
     目が覚めちゃった、と八木様は着崩れた浴衣を直しながら布団から這い出てその上に腰を下ろす。
    「おはよう消太」
    「おはようございます」
     深々と頭を下げる。八木様はきっと少し困ったように笑っている。そういう接し方をされるのが好きじゃないと前に言っていたけれど、俺にとっては命の恩人であり俺はこの人に養われている身であり、成人したら『私のものにする』と言われているので、全ての意味で俺のご主人様であることに違いない。
    「昨夜のお戻りも遅かったですね。修善寺様のところでしたか」
    「うん」
     俺たちの村に旱と疫病をもたらしたのは、龍神様のお怒りではなかった。聞けば神様には神様の中で争いがあるらしい。何処かの神に呪いを差し向けられた八木様はそれを無効化することができず、神力が弱まってしまった結果が、つまりそういうことらしい。
     湖に突き落とされた俺を偶然見つけた八木様はびっくりして自分の棲家に連れ帰ってくれた。そこは湖の底にあるくせに濡れない不思議な空間で、まるで浦島太郎の竜宮城みたいだなんて思ったりした。突き落とされた事情を聞かれたので、旱と疫病を鎮めて頂くためその引き換えに差し出された命ですと答えた時の、八木様の「人は食べないよ」と困り果てた顔は、とても神様になんか見えなかった。
    「そうだ、消太にってお土産を貰ったんだ」
     寝起きの気怠げな顔を見上げた。黙ってればこんなにも神々しいのに、口を開いた途端虫も殺さなそうな柔らかな表情になる。八木様は手のひらくらいの葉に包まれたものを枕元から取り上げて俺の手のひらにちょこんと乗せた。
    「順調に育ってくれて嬉しいってさ」
     修善寺様の作る団子は栄養の足りてない俺の成長を促進させる効果があるらしい。治癒の神力に長けた方で、八木様は呪いの浄化のため定期的に修善寺様の元へ通っている。ここに来た頃は八木様の臍くらいまでしかなかった骨と皮ばかりだった自分も、今では八木様の胸くらいまで背が伸び、肉もついた。
     早速包みを開き、団子をひとつ摘んで口に運ぶ。俺が咀嚼する様を嬉しそうに目を細めて眺めている姿は全く神様らしくないけれど、嫌いじゃない。
    「……ところで、年も明けたし俺は村にいたらもう大人扱いされる年になったんですが。いつ俺を八木様のものにしてくれるんですか」
     俺を見ていた視線が分かりやすく横に逸れて行く。都合の悪いことを誤魔化すためにじわりと上がる口角を俺はじっと睨め付けた。
    「もうちょっと、かなぁ」
    「もうちょっと、あとちょっとって、そんなのんびりしてたら俺爺さんになっちまいますよ。年寄りの肉なんて不味いでしょう」
     ずるずると先延ばしにされる約束に、俺は文句を言うことしかできない。
    「人は食べないってば。君は知らないかもしれないけど、契るってのは」
    「知ってますよ。そんなに子供じゃありません」
     俺は胡座を掻いたままの八木様にぐっと近寄る。
    「口吸いくらいしたらどうです」
    「このままだと寝込みを襲われかねないな」
    「許可を頂けるのなら今夜にでも」
    「するわけないだろ。まだ駄目」
    「じゃあいつになったら良いんですか」
     どうせ答えをくれる気などない問いをまた投げる。
     だけど八木様は、今日ばかりは少し眉を寄せて何かを考え込んだ。
    「……次の満月の夜、修善寺の御婦人のところへ行こう。君の体が私を受け入れるのに耐えられるところまで成長していると確認ができたら、いいよ」
     最後の許可はいつもとは違う、低い声。
     思ってもみなかった返答に俺はすぐ言葉が出てこなかった。目の前で呆ける俺の頬に八木様はするりと指を触れさせ、俺の手入れもろくにしていない伸びた髪を耳にかけた。それだけで体はびくりと震える。
    「それまでに覚悟を決めておいで。ひとたび契れば、君は二度と人の世界には戻れない体になる。一生私とここで過ご」
    「そんなの、三年前から決めてます」
     食い気味に返した俺に八木様はただ笑った。
    「……そっか」
     顔が近付いてくる。俺は黙って目を閉じる。ひんやりとした、低い体温の唇が一瞬だけ触れた。
     次の満月の夜まで何日かを頭の中で数えたかったけれど、胸の鼓動が激しくてそれどころじゃなかった。
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    ankounabeuktk

    DONEなすさんのオールマイトの「消太」呼びについてよ妄想に爆萌えした結果のえろい方。
    でも挿入はない。
    イーブン【オル相】 しょうた、と名前を呼ばれて俺ははっと意識を戻した。
     まだ薄暗がりの部屋の中、尻が痛い。
     見慣れない風景に一瞬自分がどこにいるのかわからなくなり、身と息を潜めたまま本能的に周囲の気配を窺う。
     徹夜からの夜警当番だった。オールマイトがうちに帰って来てよ、と甘えて言ったのを何時に終わるかわかりませんからとはぐらかした。終わった時には疲れと眠気はピークを超えているだろうし恋人としての義務を果たせる自信がなくて。そうかあ、と残念そうに言ったオールマイトはそれ以上食い下がることはなく、俺はすみませんと週末に一緒に過ごせない申し訳なさに頭を下げて寮を出たのだ。
     そして明け方に平和に終わった帰り道、眠気に任せてぼんやり移動していたらオールマイトのマンションの前に立っていた。あんなことを言ったくせにここに帰るんだと刷り込まれていた意識が猛烈に恥ずかしかった。こんな時間にチャイムを鳴らして部屋に入るのは非常識だ。オールマイトは窓から来る俺のために寝室のベランダの窓の鍵をいつも開けている。今日も有難くそこから入ろうと捕縛布を使って真上に駆け上がった。カーテンはレースのものだけが閉じていたが、暗さで中を窺い知ることはできない。窓に手を掛けたら案の定からからと開いた。
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