茂夫と律がリビングで並んでテレビを見ている時だった。
「兄さん」
そう呼びかけながら律は両手を伸ばし茂夫の唇の両端を人差し指で押し、そのまま上に持ち上げた。茂夫は目をパチパチさせる。
「な、なに?」
「今日クラスメートに僕と兄さんは笑った顔が似てるねって言われたんだ…うーん、自分じゃ良く分からないな…」
眉を寄せて言う弟の真剣な様子に茂夫は可笑しくなってしまう。
「あ、あはは、そうなのかな。」
「自分じゃ分からないけどね…ふふ、兄さんの頬柔らかい。」
律は茂夫の頬を手のひらで柔らかく揉んだ。
ぷにぷにむにゅむにゅもちもち
「もう、やめてよ。」
そう言うと今度は茂夫が律の両頬を手のひらで包つむ。
「律だって…」
柔らかいよ。そう続けようとした茂夫だが、言葉を飲み込む。確かに弟の頬は自分のと比べて柔らかさがなく、シュッとしてるような…。確かめるように茂夫は律の頬を揉んだ。
すりすりつるつるふにゅふにゅ
「あはは、兄さん、お返しだよ!」
ぷにぷにむにゅむにゅもちもち
すりすりつるつるふにゅふにゅ
ふたりの攻防は母親の「遊んでないで早くお風呂入りなさい!」という声が飛んでくるまで続いた。