ジョウヤス②道路の真ん中で目を覚ました時には太陽が真上まで来ていた。
目覚めたばかりだからかぼんやりとする頭で朝のことを思い出す。調子がいいと家を出て、歩き出して…それからの記憶が怪しい。薄ボケた記憶にまた倒れたんだろうと答えを出してからなんとか立ち上がった。
数時間道路で寝ていた割には関節は痛くないし、歩けないわけじゃない。これなら学校に行けるだろう。
いつもより多少遅い足取りで歩き続け、校門を抜けたところで中庭でしゃがみこんでいる青い髪のやつを見かけた。
太陽が真上に来ていたから、きっと昼飯を食っているんだろう。いつもなら屋上にいるヤスが中庭にいることが珍しく、近づいてしまった。
「何してんだ?」
「……今頃、来たのかよ…もう昼だぞ……」
「まだ昼だろ」
ヤスの隣にしゃがみこんで手元を見るといつもと同じパッケージに入った弁当が予想通りそこにあった。
今日は、ハンバーグ弁当か。
起きてすぐだからか別段腹が空いていたわけじゃないがじっとヤスの弁当を見つめてしまった。
「……んだよ」
「いや、美味そうだなぁって思ってな」
「当たり前だろ、うちの弁当で美味くないもんなんてねえんだよ」
そう言ってまたハンバーグを口に含んだヤスの顔へ視線を移す。ライブの時と同じように弁当のことを話している時のヤスは楽しそうで嬉しそうで輝いて見えた。
左どなりに座ったせいか時折チラリと見える右目もキラキラと輝いていて、目が離せなかった。
「……ジョウ?」
「ん?」
「いや……」
何かを言いたげに箸の動きを止めたヤスの視線がさ迷っている。なにかあったのだろうかと、待っていると校舎からハッチンが歩いてくるのが見えた。
きっとヤスを探しているんだろう。
そう思ってヤスを見て、少し恥ずかしそうにしている姿を見たらハッチンに見せたくないなとなんとなく思ってしまった。
ハッチンはまだヤスに気づいていないようだったから、立ち上がってヤスの右側に座ると持ってたベースケースでヤスの顔を隠す。
「おい、なにして」
「しっ……」
「っ!?」
「ファッ! ジョウー! ヤス見てねえ?」
「こっちには来てないぞ?」
「ファ〜、まじかよ……ヤス、どこだ〜?」
咄嗟にヤスの口を指先で止めてしまったが、すぐに聞こえてきたハッチンの声に間一髪だったと息を吐き出した。
なにも疑いもせずまた校舎に戻って行ったハッチンに心配になりながらヤスに触れていた指先を離すついでにハッチンを追いかけていた視線をヤスに向ける。
いつもより目を丸くしたヤスの耳が赤い。
「なっ、なにすんだよ……!?」
「なんなんだろうな…」
「は!?俺が知りてえんだけど、おい…ジョウ?」
怒っていたはずなのにオレがため息をついて顔を手で覆うと心配そうな声が混じる。
今している表情も他のやつに見せたくないなんて、自分の気持ちもよくわからないままヤスに向かってなんでもないと首を振った。