タイトル未定(きつねの神様🎈と人の子🌟) ——街外れの、そのまた外れの山の中。
ぽっかり開けた空間に、人々に忘れ去られた祠が一つ。
ひとたびうっかり迷い込めば、悪い狐に化かされて、酷い“いたずら”に遭うのだとか。
行きはよいよい、帰りはこわい。
鈴の音一つ聞こえたら、振り返らずに帰ること。
恐ろしい御狐様と、目を合わせることの無いように。
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人による手入れが行き届いていない、街外れの小さな山。その中腹辺りに一箇所だけ、がらんとした空き地があった。そこだけ丸く切り取られたかのように木が生えていないその空き地の奥には、こぢんまりとした祠のような木造の建物が一つ、寂し気に鎮座している。長い間放っておかれているのか、苔むして今にも崩れてしまいそうな屋根の下、縁側で一人の青年が片足をぶらりとさせながら辺りの木々を眺めていた。赤、黄、橙。冬支度を始めた樹木たちが、その葉を色とりどりに染め上げている。
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