ウスバカゲロウの恋「待て!おい!」
そう叫びながら類のドローンを追いかけているのは、見知らぬ少年だった。痩せっぽっちのその少年はドローンに引っかかった薄手の布を空飛ぶ機械から取り戻そうとしているのに、少しばかり身長が足りなくて届かないようだ。
「おい!返せ!」
ドローンに言っても仕方ないのになぁ、と操縦している類が少し離れたところから呑気に見ていたら、少年の足がもつれて派手に転んでしまっていた。
「!?」
流石にそんなことになるなんて思って無かったから慌てて駆け寄る。ケガをさせるなんて本意ではないから。
「すまないね。大丈夫かい?」
巻き付いた布を丁寧に取り払い、ほつれなどがないか軽くチェックした後畳んで差し出した。それは酷く薄くて柔らかい、手触りの良い布だった。白味がかった光沢が七色に光って虹のようだ。とても高価そうな布で、この目の前の少年が持っているには不釣り合いに見えた。
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