早くキミと。天と三月はソファに並んでドラマ放送を見ていた。今晩はラブストーリー。有名な脚本家が手掛けていると評判の作品だ。
息をのむような目が離せないシーンに入ったところで、放送は突然CMに入る。
「あっ、良いところでCM入るんだよな~。」
三月は悔しそうに笑う。
「あ、三月だ。」
天が呟いた。
「ん?ああ、このCMな。」
画面に写っていたのは、梅酒のCMに主演として出演する三月だ。
淡い月光の下、頬がほんのり赤らんだ三月の微笑みが一つ。
秋の夜長の少しの寂しさと、穏やかな日常を感じるCMだった。
「いいなぁ……」
思わず呟いたのは天だった。
「いいなって……梅酒が?飲んでみたいの?お前未成年だもんな。」
天の呟きに三月が尋ねる。
「早くお酒が飲みたいとかじゃなくて……三月と、ああいう風に飲みたいなって。」
三月を見つめる天の眼差し。無防備で柔らかくも、熱を帯びて溶けそうな眼差し。
「そうだな。2年経てば一緒に飲めるよ。」
三月はへらりと笑って言う。
「今、そういう気分なのに。」
天は口を尖らせた。
「そんな焦んなって。2年後もちゃんとここにいるからさ。オレも天と一緒に飲めるの、楽しみにしてるよ。」
三月は微笑んだ。CMよりも甘く、幸福に。この世で天しか見ることのない日常だ。
「うん……。」
今晩は三月もお酒を飲んでいない。
天がお酒を飲めるようになったら、もう少し違う景色も見えるようになるのだろうか。