かさなるしあわせかさなるしあわせ
恋人の家での初めての『お泊り』はいくつになっても胸を擽り、心が浮き立つものだと思う。ましてや年齢を考えれば、もう恋をするとは思っていなかったのだから尚更だ。
一回りどころか、二回りの方が近い年齢差。それを情熱的に飛び越え真っ直ぐに想いを告げてきた青年は、眩いほどの華やかさを持つだけでなく、鯉登音之進というその名前は文字も響きも凛々しいもの。
最初鶴見はそんな音之進に対して、彼は常に恋の勝者であったのだろうと思った。誰の目をも奪う姿だからこそ、手管も駆け引きもなく『好きです』と想いを伝えるのが何よりも魅力となる青年という印象だったのだ。
それが意外にも恋愛経験はゼロ。しかも自分が初めての恋人だという事に鶴見は心底驚いた。自分の魅力を知っての告白ではなく、音之進はそうする以外の方法を知らなかったのだ。
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