Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    sayura_gk

    18↑。右鯉のみの字書きです。

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 6

    sayura_gk

    ☆quiet follow

    いつか書きたい杉鯉
    もしかしたらこの出会い、ネタ被りしてるかもしれないけど

    未定 給料日直後の週末の夜はバイト仲間との飲み会。絶対参加ではないそれは、杉元がこの配送センターで働き始めた時には既に習慣化していた。
     師走まであと数日。配送センターはいつも以上に忙しくなる時期だ。そのためか、たまたまなのか、風男に比べて参加者が多かったように思う。
     いつもの居酒屋の、いつもの飲み放題付コース。たくさん笑って飲んで食べれば、それなりに楽しくて。十人を超えて始まっまたはずの飲み会は、気が付くといつもの飲み仲間の四人にまで減っていた。
     その内の一人が乗り換えの終電がなくなると言い出し解散となった。駅まで数分の距離を酔いを冷ましつつ歩けば、誰かが「雨が降りそうだな」と言う。降られる前に家に着きたいなと、杉元は思ったものだ。
     だが、その思いも虚しく。たった二駅分を電車に揺られる間に雨は降り出した。改札を出た時にはバケツをひっくり返したような雨足で、酷く視界が悪い。コンビニくらいしかない住宅地という事もあり、閑散とした駅には客待ちのタクシーもなかった。
     仕方がない。
     溜め息一つでびしょ濡れになる事を受け入れる。走ったところで濡れるのを回避できるような雨量でもない。取り敢えずスマホだけは濡れないようにリュックの奥底に避難させた。
     一分と経たず下着までずぶ濡れになる。しかも十一月の雨は冷たい。飲酒後は風呂に入るなと言うが、今日は無理だ。タオルで拭くだけの方が風邪をひくだろう。雨に濡れる間に酔いも覚めそうだ。
     身長が高い事もあって、杉元の歩幅は大きい。それをいつもより心做しか早めながら、自宅へ続く交差点へと辿り着いた。
     真夜中のそこは、通る車が極めて少ないために黄色い光が点滅を繰り返している。街頭が濡れるアスファルトを照らす横断歩道の先──ガードレールに座る人間がいた。
     視界は悪いが、こちらに向けられた背中から男だろうとわかる。こんな真夜中の雨の中、タクシー待ちでもしているのか杉元が近寄っても男は動かなかった。
     杉元とて好きで近寄った訳ではない。自宅アパートがその先なのだ。男に目を向ける事もなく通り過ぎる。雨で冷えた体が寒い。一刻も早く帰りたかった。
     そう思うのに。現に体は冷えて奥歯はガチガチと鳴りそうなのに。杉元は脚を止めた。
     電車で寝過ごして知らない駅に降りてしまったのか。ネカフェとかカラオケとかで泊まればいいかと歩いて来たのか。それともタクシーを求めてか。若しくは迎えを待っているのか。
     そのうち迎えが来るのであれば良い。でもそうでなかったら。雨に濡れながら朝を迎えたら間違いなく体調を崩すし、もしかしたら倒れるかもしれない。見知らぬ人ではあるが、倒れて救急車で運ばれるならまだしも、もしもの事があれば目覚めが悪い。濡れた彼を見かけたのは自分だけなのかもしれないし。そんな言い訳を胸の中で呟いて、杉元は数歩を引き返した。
    「なぁ、こんな所にいてもタクシーは来ないよ。それとも迎えが来るのか?」
     自分の足先を見るように俯いていた男はゆるゆると顔を上げた。街頭の灯りが眩しのか、切れ長の目が細められる。動きはそれだけで雨に打たれまま見つめ合った。
    「風邪、ひくよ?」
    「……」
     ゆる、と首を振ったのか。それとも眩しさに耐えかねたのか。男は再び俯いた。
     杉元は話にならないと頭をガシガシと掻き、その手を見知らぬ男に伸ばした。ぐいと力を込めれば、男の顔が上向いて杉元を見る。先ほどと同様に瞳は虚ろで、寂しそうで痛そうで。杉元には放って置く事ができなかった。
    「ウチに来い」
    「え……」
     雨に掻き消えそうな小さな声。弱々しいそれを確かに聞いて、杉元は更に腕へと力を込めた。
    「良いから来い」
    「なん、で…」
    「このまま朝までいたら死ぬかもしれねぇだろ。そんなの俺は知らんぷりできねぇよ」
    「……」
    「お前名前は? 俺は杉元佐一」
     腕を掴んだまま歩く自己紹介はぶっきらぼうに聞こえるだろう。だがこの雨の中、改まってなどいられなかった。
     もう一度「名前は?」と問えば、小さな声が返された。オトノシン、と──。


    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💕
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works

    1405Barca

    REHABILI現パロ尾鯉のギャグです。赦して。
    別に無趣味というわけではない。
    私大入学を機に都内に越してはや一年、灰の降らぬ生活にも慣れた今日この頃。ゼミに定期的に顔を出し、アルバイトも適度にこなし、サークルに入らない代わりにと近場の道場に度々足を運ぶ日常は同世代から見ても怠惰ではない。しかしながら大学生活二度目の春を迎えた鯉登音乃進にとって、それは惰性と断じる他ない日々だった。
    そもゼミ活動が本格化するのは3年次からであって、今は文献の読み方・引用のやり方など基礎的な学習であるし、アルバイトは音乃進と同じく進学と共に上京し、今では大手の営業職に就く兄から紹介された家庭教師をそれなりの頻度でこなすだけ。幼年から続けてきた示現流も、人目の多い都会の道場で猿叫することは叶わず。つまるところ、どれも時を忘れて熱中できるほどのものではないのだ。あと一年待てばゼミも本格化し憧れの鶴見教授と個人面談もあるのだが、彼のよかにせ教授は現在ロシアで調査発掘に勤しむ多忙な日々を送っていると聞く。院生でも声を掛けにくいと聞く熱中状態の鶴見教授に、ほやほやの一年目ゼミ生がアクションを起こせるはずもなく、画面びっちり敬愛と近況で埋め尽くしたメールを削除して、肌寒い春の夜風に撫でられながら音乃進は自室のパソコンの前で小さくキェェと鳴いた。
    4006

    ohmita

    PROGRESSまだ書き終わってネ~~~けど丁度いいとこまで書けたので尾鯉の日だから出します。
    谷崎潤一郎『人魚の嘆き』パロのなんちゃって中華風尾鯉。尾形が貴公子でおとのちんが人魚です。鶴見中尉とヴァシリちゃんもちょこっと出てくる。全部かけたらピクシブにあげます。
    人魚の嘆き「一つ箱が多いようだが。」
    紳士の穏やかな問いに、金の玉座へ身を凭せかけた若者は物憂げに答えました。
    「一つ増えても二つ増えても、あって困るものではないでしょう。どうぞ持って行ってください。――――まったく、恐ろしい程に上手くいった。」
    若者はいくらか酔った様子でありましたが、両の目だけはまるで獣のように爛々として紳士を見据えておりました。ところが紳士は、若者の眼差しを受けて畏れるどころか、子でもあやすように微笑みます。
    「私はきっかけを与えただけに過ぎないよ。君が思っている以上に、君の御父上は恨まれていたし弟君よりも君こそが当主に相応しいと思う者が多かった。それだけのことだ。」
    白々しい言葉を嘲り若者は唇を歪めて笑いました。若者の父は、そのまた父から受け継いだ武功を更に重ね、時の皇帝の覚えもめでたく、最早他人は羨むのを諦めるほどの巨万の富を拵えました。また若者の弟は父に倣い武を磨き学にも秀で、正妻の息子として大変立派な人でありました。
    23122