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    sayura_gk

    18↑。右鯉のみの字書きです。

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    sayura_gk

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    いつか書きたい杉鯉
    もしかしたらこの出会い、ネタ被りしてるかもしれないけど

    未定 給料日直後の週末の夜はバイト仲間との飲み会。絶対参加ではないそれは、杉元がこの配送センターで働き始めた時には既に習慣化していた。
     師走まであと数日。配送センターはいつも以上に忙しくなる時期だ。そのためか、たまたまなのか、風男に比べて参加者が多かったように思う。
     いつもの居酒屋の、いつもの飲み放題付コース。たくさん笑って飲んで食べれば、それなりに楽しくて。十人を超えて始まっまたはずの飲み会は、気が付くといつもの飲み仲間の四人にまで減っていた。
     その内の一人が乗り換えの終電がなくなると言い出し解散となった。駅まで数分の距離を酔いを冷ましつつ歩けば、誰かが「雨が降りそうだな」と言う。降られる前に家に着きたいなと、杉元は思ったものだ。
     だが、その思いも虚しく。たった二駅分を電車に揺られる間に雨は降り出した。改札を出た時にはバケツをひっくり返したような雨足で、酷く視界が悪い。コンビニくらいしかない住宅地という事もあり、閑散とした駅には客待ちのタクシーもなかった。
     仕方がない。
     溜め息一つでびしょ濡れになる事を受け入れる。走ったところで濡れるのを回避できるような雨量でもない。取り敢えずスマホだけは濡れないようにリュックの奥底に避難させた。
     一分と経たず下着までずぶ濡れになる。しかも十一月の雨は冷たい。飲酒後は風呂に入るなと言うが、今日は無理だ。タオルで拭くだけの方が風邪をひくだろう。雨に濡れる間に酔いも覚めそうだ。
     身長が高い事もあって、杉元の歩幅は大きい。それをいつもより心做しか早めながら、自宅へ続く交差点へと辿り着いた。
     真夜中のそこは、通る車が極めて少ないために黄色い光が点滅を繰り返している。街頭が濡れるアスファルトを照らす横断歩道の先──ガードレールに座る人間がいた。
     視界は悪いが、こちらに向けられた背中から男だろうとわかる。こんな真夜中の雨の中、タクシー待ちでもしているのか杉元が近寄っても男は動かなかった。
     杉元とて好きで近寄った訳ではない。自宅アパートがその先なのだ。男に目を向ける事もなく通り過ぎる。雨で冷えた体が寒い。一刻も早く帰りたかった。
     そう思うのに。現に体は冷えて奥歯はガチガチと鳴りそうなのに。杉元は脚を止めた。
     電車で寝過ごして知らない駅に降りてしまったのか。ネカフェとかカラオケとかで泊まればいいかと歩いて来たのか。それともタクシーを求めてか。若しくは迎えを待っているのか。
     そのうち迎えが来るのであれば良い。でもそうでなかったら。雨に濡れながら朝を迎えたら間違いなく体調を崩すし、もしかしたら倒れるかもしれない。見知らぬ人ではあるが、倒れて救急車で運ばれるならまだしも、もしもの事があれば目覚めが悪い。濡れた彼を見かけたのは自分だけなのかもしれないし。そんな言い訳を胸の中で呟いて、杉元は数歩を引き返した。
    「なぁ、こんな所にいてもタクシーは来ないよ。それとも迎えが来るのか?」
     自分の足先を見るように俯いていた男はゆるゆると顔を上げた。街頭の灯りが眩しのか、切れ長の目が細められる。動きはそれだけで雨に打たれまま見つめ合った。
    「風邪、ひくよ?」
    「……」
     ゆる、と首を振ったのか。それとも眩しさに耐えかねたのか。男は再び俯いた。
     杉元は話にならないと頭をガシガシと掻き、その手を見知らぬ男に伸ばした。ぐいと力を込めれば、男の顔が上向いて杉元を見る。先ほどと同様に瞳は虚ろで、寂しそうで痛そうで。杉元には放って置く事ができなかった。
    「ウチに来い」
    「え……」
     雨に掻き消えそうな小さな声。弱々しいそれを確かに聞いて、杉元は更に腕へと力を込めた。
    「良いから来い」
    「なん、で…」
    「このまま朝までいたら死ぬかもしれねぇだろ。そんなの俺は知らんぷりできねぇよ」
    「……」
    「お前名前は? 俺は杉元佐一」
     腕を掴んだまま歩く自己紹介はぶっきらぼうに聞こえるだろう。だがこの雨の中、改まってなどいられなかった。
     もう一度「名前は?」と問えば、小さな声が返された。オトノシン、と──。


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