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    甘味。/konpeito

    800文字チャレンジだったりssを投げる場所

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    本日の800文字チャレンジ
    Ⅱその後/クロ+リン/幸福な悪夢

    「クロウ先輩、卒業おめでとうございます」
     一輪のカーネーションをクロウへ差し出した。ライノの花に似た色の、丁寧にラッピングされているそれは、在校生から卒業生へ感謝の気持ちを伝えるためのものだった。
    「なんか企んでやがるのか」
     一向に受け取る気配のないクロウへカーネーションを押し付ける。ようやく受け取ってくれたそれを検分する彼にため息が出た。
    「そんなんじゃないから」
    「だったらいつも通りにしろよ」
    「でも……」
     言い淀むリィンの肩を叩くクロウは別れを惜しむ涙もなく、普段と全く変わらない。明日から会えないなんて考えもしない振る舞いだった。
    「いいからいいから。それにお前から先輩なんて呼ばれると、こっちの調子が狂うんだよな」
    「分かった。クロウ、卒業おめでとう」
    「おう、あんがとな。トワたちにはもう渡したのか」
    「ああ。先に会えて。クロウは卒業後はジュライへ帰るんだろう。寂しくなるな」
    「男との別れを惜しんだってなんにも出ないんだからな。まあ、俺もお前さんの顔が見れなくなると思うと寂しくなるぜ」
     とん、と彼の大きな手がリィンの頭を撫でた。滲んだ涙をごまかすために瞬きを繰り返す。
    「ったく、最後くらい笑顔で見送ってくれよ。でないとお前の顔を思い出すとき、その顔ばっか思い出しちまうじゃねえか」
     髪から頬へ降りてきた彼の手が力なく落ちていく。胸から夥しい量の血を滴らせた彼は、制服姿ではなくなっていた。抱きしめる身体からゆっくり熱が失われていく。
    「クロウ――!」
     自室のベッドで飛び起きたリィンは、全力で走り抜けたあとのような徒労感につつまれていた。まだ鼓動が耳の奥で鳴っている。
     リィン以外誰もいない第三学生寮は、しんと静まり返っていた。
    「夢、か……」
     目を落とした両手は血に濡れておらず、シャツはじっとりと嫌な汗を吸っている。目蓋にこびりついた光景を振り払うように、濡れた額を拭うのだった。
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