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    花月ゆき

    @yuki_bluesky

    20↑(成人済み)。赤安(コナン)、虎兎(タイバニ)、銀神(銀魂)、ヴィク勇(YOI)好きです。アニメ放送日もしくは本誌発売日以降にネタバレすることがあります。

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    花月ゆき

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    秀零の日。
    記憶喪失&身体だけ縮んだ赤安(中学生)が、工藤邸に一緒に住んでいる設定(たまにコナン君が遊びに来る)です。
    https://poipiku.com/1436391/9417680.html
    https://poipiku.com/1436391/9804135.html

    #赤安

    記憶は心の底に③ コナンSide

     商店街の福引で、蘭が東都水族館のペアチケットを引き当てた。思わず「相変わらずすげえな……」とコナンは呟いてしまうが、商店街の喧騒に紛れて、蘭には聞こえていない。
     礼を言ってチケットを受け取り、家へと向かって歩きはじめた蘭を、コナンは隣からそっと見上げた。蘭は嬉しそうにチケットを取り出し、まじまじと眺めている。ところが、チケットを見ていた蘭の表情がしだいに曇りはじめた。
    「どうしたの? 蘭姉ちゃん」
    「どうしよう……コナン君。このチケット、クリスマスまでの土日しか使えないんだって」
    「そうなの?」
     コナンは蘭からチケットを受け取る。そこには【土日限定!東都水族館のクリスマスにご招待】の文字があった。
    「お父さんとお母さんにって思ったんだけど、今月は二人とも休日返上で仕事するって言ってたし……園子と私も、土日は全部予定が入っちゃってるし……ペアチケットだから、コナン君達に渡しても枚数が足りないし……」
     悩む蘭の隣で、コナンはひとり呟く。
    「土日限定となると……このチケットが使えるのは、九日、十日、十六日、十七日、二十三日、二十四日。……十日!」
     日付を挙げていきながら、コナンはあることに気がついた。
    「蘭姉ちゃん! このチケット、僕のお友達に渡してもいい?」
    「でも、枚数が……」
    「大丈夫! 二枚で足りるから!」
    「そう? じゃあ、コナン君から渡してくれる?」
    「うん! ここから近いから、今から渡してくるね!」
    「ありがとう、コナン君。あんまり遅くならないようにね!」
     蘭に手を振って、コナンは走り出す。
     毎月、十日は、“あの二人”にとって、特別な日である。
     そして“あの二人”にとって、東都水族館は縁のある場所だといってもいい。東都水族館に行けば、記憶を取り戻すための、小さなきっかけが生まれるかもしれない。そんな期待を抱いて、コナンは工藤邸へと急いだ。

     そして、十二月十日の朝。コナンは東都水族館にいた。
     あの日。コナンが赤井と降谷にチケットを渡しに行くと、「コナン君も一緒に行こうよ!」と降谷が言い出したのだ。コナンは断ったが、「いつもお世話になっているお礼に、コナン君のチケット代は赤井と僕で出すから!」と降谷は言い、あっという間にスマホでチケットを購入してしまった。
     断れなくなった空気感にコナンが苦笑していると、赤井が「俺も零君も、東都水族館には行ったことがないんだ。案内してくれないか?」と言った。
     赤井と降谷が東都水族館を訪れるのはこれがはじめてではない。だが、記憶を失っている二人にとっては、はじめての場所となる。
     ふと、コナンの脳裏に、ある懸念が思い浮かんだ。
     万が一、二人が記憶の矛盾に気づくことがあれば、二人の心身に何か異変が起きる可能性もあるかもしれない。
     もしものときに備え、二人を見守ろうとコナンは心に決め、「わかったよ。僕に任せて!」とこたえた。降谷は、「今月の十日は何をしようって考えていたところだったんだけど、コナン君のおかげで決まったね」と笑った。
     土曜日ということもあって、入口はひどく混み合っていたが、入場すると自由に動き回れる余裕はあった。まずは、海の生き物が展示されている場所へ行く。想像していた以上に、赤井と降谷は楽しそうだ。パネルに書かれていないことまで説明しはじめる降谷に、周囲にいた人たちが感心した様子で聞き入っている。赤井は赤井で、「さすがだな、零君」と降谷を褒めたたえていた。赤井に褒められることが一番嬉しいようで、降谷は時折、頬を赤くしていた。
     イルカのショーがはじまると、赤井、コナン、降谷の順で、左から順番に座る。歩いているときもそうだが、赤井と降谷は、必ず自分を真ん中にするのだ。今は中学生と小学生ほどの年齢差しかないが、もともとは大人と小学生ほどの年齢差があった。そのときの感覚が、まだかすかに二人の中に残っているのかもしれない。
     ショーが終わり、レストランへと向かう途中で、クリスマスらしい装飾の施されたエリアを通りかかった。大きなクリスマスツリーを中心として、様々な屋台が出ている。そのなかに射的を見つけて、コナンは思わず立ち止まってしまった。
    「どうしたの? コナン君。射的の景品でほしいものでもあるの?」
    「あ、いや……そんなんじゃなくて……」
     降谷の前でひらひらと両手を振る。射的を見て、ライフルを持つ赤井を連想してしまったのだが、もちろんそれを降谷に言うことはできない。
    「遠慮しなくていいよ、コナン君。どれがほしいの?」
    「あ~、じゃあ……あの一番上にあるイルカのぬいぐるみかなぁ……」
     うまく誤魔化すこともできずに、コナンは射的の景品を上から下まで眺めて、店が一番推しているであろうクリスマス限定カラーのぬいぐるみを指差した。すると、降谷がすかさず赤井に言う。
    「赤井、あなたこういうの得意でしょう? 任せていいですか?」
     降谷の言葉に、コナンは驚いた。降谷本人は、“気づいていない”。
    「あ、ああ……」
     降谷に言われるがまま、赤井がコルクの入った銃を手に取る。本物の銃弾が詰まれているわけでもないのに、コナンは緊張した。隣にいる降谷も、固唾を飲んで見守っている。
     銃を構える中学生の赤井に、大人の赤井が重なって見えて、コナンは目を見開く。我に返ったときにはもう、銃から飛び出したコルクが、一発で景品を仕留めていた。
    「すごい! さすが、秀一兄ちゃん!」
     ありがとう! と礼を告げると、赤井はひとつ微笑んで、すぐに視線を下ろした。赤井の視線の先には、コルク銃の引き金を引いた自身の左手がある。降谷も降谷で、景品のぬいぐるみを受け取るコナンの隣で、何かを思案しているような様子をみせていた。
     赤井も降谷も、しばらく何かを考えこんでいたが、次の目的地であるレストランへ行き、メニューを見はじめると、しだいにいつもの二人へと戻っていった。
     昼食をとったあと、コナンは東都水族館のオススメのエリアへ二人を連れて行った。人が多いので待ち時間もあったが、会話が尽きることはなかったので、待っている時間も苦にはならなかった。
     あっという間に夕方になり、そろそろ帰らなければならない時間となった。十八歳未満の子どもは、保護者の同伴がなければ夜までいることはできない。最後に大観覧車に乗ろうと降谷が言うので、コナンは二人と一緒に観覧車の待機列に並んだ。
     十二月にしては暖かい陽気が零れ落ちている日だったが、陽が落ちはじめると、吹いてくる風も強く、冷たくなってくる。
     ゴンドラに乗る前も一際大きな風が吹き、今にも飛ばされそうな降谷の帽子を赤井が手で押さえた。
    「しっかり押さえていないと、また飛んで行ってしまうぞ」
    「……え、ええ。そうですね」
     また? 赤井の発言にコナンは引っかかりを覚えたが、ゴンドラに乗る順番が回ってきたので、コナンは歩を進めた。
     ゴンドラの中で、赤井と降谷は隣り合わせに座り、コナンは二人と向かい合うように反対側の席に座った。ゴンドラの中は静寂に包まれていた。赤井も降谷も、視線を外に向けてはいるが、外の景色を楽しんでいるようには見えない。二人とも何か考え事をしているようだった。
     ふと降谷が口を開いた。
    「……赤井。過去に僕の前で射的をしたことってありましたか?」
    「……いや、俺の記憶違いでなければ、なかったと思う」
    「そうですよね」
     続けて、今度は赤井が降谷に問いかけた。
    「……零君。君は俺といるときに、帽子を風に飛ばされてなくしたことはあったかな」
    「……いえ、なかったと思います」
    「やはりそうか」
     二人の会話に、コナンはどきりとした。失くした記憶を、二人は手繰り寄せはじめているのかもしれない。コナンは、「実は、二人とも、ここに来たのははじめてじゃないんだよ」そう打ち明けたくなったが、声にはならなかった。
    「僕達、疲れてるんですかね」
    「……え?」
     降谷の声に、コナンは目を瞬かせる。
    「実は……今日が楽しみ過ぎて、昨晩ほとんど寝てないんだよ。赤井も僕も」
    「そ、そうなの?」
     コナンの目が点になる。それは本当のことなのかと一瞬疑ったが、降谷の発言を肯定するように赤井が言った。
    「……実はこんなものを買ってしまってな。零君と二人で読み込んでしまったんだよ」
     赤井の手には、【東都水族館を120%楽しむ!超ガイドブック】があった。度々忘れそうになるが、記憶を失くしている今の二人は、大人ではなく中学生だ。チケットを渡してからずっと、二人は今日この日を全力で楽しもうと準備をしていたのだろう。そんな二人を微笑ましく思いながらも、コナンの心の中は複雑な気持ちでいっぱいだった。
     コナンは小さく息を吐き、外の景色へと視線をやる。
     コナンの視界の外で、赤井と降谷が真剣な顔をして互いの目を見ていたことに、コナンは気づかなかった。
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    花月ゆき

    DONE秀零の日。
    記憶喪失&身体だけ縮んだ赤安(中学生)が、工藤邸に一緒に住んでいる設定(たまにコナン君が遊びに来る)です。
    ①https://poipiku.com/1436391/9417680.html
    ⑤https://poipiku.com/1436391/9895567.html
    記憶は心の底に④コナンSide

     一月十日。コナンは阿笠邸を訪れていた。目的は、赤井と降谷の解毒薬の進捗を聞くためだ。
    「……30%ってところかしらね」
    「……そうか。やっぱり、俺たちが飲まされた薬とは違うのか?」
    「ええ。成分は似ているけれど、同じものではなさそうよ。ああ、それから、薬によって記憶が失われたどうかはまだわからないわ」
     赤井と降谷は毒薬によって身体が縮み、今は中学生として日常を送っている。
     身体は健康そのものだが、なぜ、FBIとして、公安として、職務に復帰できないか。それは、二人が大人だった頃の記憶を失くしているからだ。
     コナンの脳裏には、“あの日”の光景がよみがえっていた。
     今すぐにでも倒壊しそうなビルの中。炎と煙で視界を遮られながらも、赤井と降谷とコナンは、組織が残したとされる機密データを探していた。このデータさえ手に入れることができれば、組織壊滅のための大きな足掛かりになる。なんとしてでも、この場で手に入れておきたいデータだった。
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