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    yo_lu26

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    第2回アズジェイwebオンリー『契約後には紅茶を』
    2022年2月26日(土)21:00〜27日(日)20:50

    イベント展示作品でした。

    #アズジェイ
    azj

    口直しには紅茶をアズールは珈琲が飲めない。いや、飲めないというのは正確ではない。客の前や、訪問先で出されたときは失礼のない範囲で、さも問題ないという顔で飲んでみせる。しかし、後から猛烈な勢いでジェイドやフロイドしかいないところで、不満を垂れ流すのだ。やれ、苦いだの、飲み物にしては主張が強すぎる、だの、色がそもそも食欲をそそらない、だの、食後は珈琲一択の店は気が利かない、だのと無限に文句が出てくる。そして口直しに寮に戻ってから、必ずジェイドの淹れた紅茶を飲みたがる。
    「ジェイド、お願いします」
     何を、とは言わない。二人のルーティンだからだ。こういうときには、フロイドには頼まない。フロイドの気分が乗らないと、ごめぇん、茶葉切らしてたーなんて言いながら、最悪また珈琲を出してくる可能性がある。
     いつも心得たように頷いて、ジェイドはカップまできちんと温めて、アズールの不満を吹き飛ばすような、とびきりの一杯を淹れる。陸では砂糖無しで珈琲が飲めると大人、という根拠は曖昧だけれど、共通認識として存在する文化があるらしい。でもジェイドは、アズールが一生珈琲が苦手なままならいいな、と思っていた。彼に、さも当然のようにねだられて、紅茶を淹れるのは彼を甘やかすことのできる数少ない機会だった。
     だから、ある時、有名な老舗の店で出された珈琲を飲んだアズールが、美味しい!と目を輝かせたのをみて、ジェイドは驚いた。本当に美味しい珈琲を飲むと、味が分かるようになる、とは常々実家のリストランテのシェフ達から言われていたが、なるほど、確かに彼らの言う通りだ、とアズールも納得したのだった。その日から、彼は珈琲を克服した。むしろ、今まで楽しめなかった分、興味津々なようで、カフェメニューの参考にもなるから、と色んなアレンジを試したがった。自分で豆を買って挽いたりして、今度は逆にジェイドが珈琲を振る舞われたりしている。今ではすっかり、ジェイドがアズールのために紅茶を淹れることはなくなっていた。アズールの淹れるこだわりの珈琲は美味しい。しかし、同時に悔しくて苦い味がする。彼は僕の不満を置きざりにして、さっさと大人になってしまいたいらしい。
     今日もアズールの部屋で珈琲をご馳走になっている。
    「ジェイド、浮かない顔ですね。少し苦味が強かったか。ミルクと砂糖はいりますか?」
     僕の不満の原因を味だと勘違いしている鈍いひと。
    「いいえ、アズール。結構です」
     もう、結構。もう沢山。僕は珈琲はいらない。貴方に紅茶を注ぎたい。大切な僕だけの役割だったのに。絶対に兄弟にとられたりしない、僕だけの。
     珈琲を飲み干して、ご馳走様でした、と席を立つ。
    「ジェイド」
     背後から声が聞こえたので、振り返らないまま立ち止まる。
    「ブラックの珈琲も、ストレートの紅茶も8キロカロリー以下なんですよ」
     いきなり何を言い出すのか、と思わず振り返ると、はっきりしない声でもごもごとアズールが続きを述べる。
    「だから、もう一杯くらい飲んでも、今日の摂取カロリーをオーバーしたりしません。だから、もう一杯付き合え」
     おやおや、よくそんな上から目線の誘い方ができますね、貴方は僕の上司か何かですか?と反射的に嫌味を言いそうになるのをぐっと、こらえる。だって、今のはアズールが明らかに僕を引きとめている。
    「……もう少し、ゆっくりしていってもいいでしょう。一体僕が何のために、手ずからお前の目の前で豆を挽いて、ゆっくりと時間をかけて蒸らしていると思っているんだ」
    「……! アズール、まったく、貴方という人は」
     笑うな、とアズールが不服そうな顔をしてみせた。ジェイドは別に滑稽だから、笑ったのではない。幸福で笑ったのだ。
    「ふ、ふふ、では今度は僕が紅茶をお持ちしても?」
    「……沸かしたお湯を持ってきて、目の前で淹れてくれるなら」
    「もちろん、仰せのままに」

     口直しの役割は失ったけれど、アズールはちゃんとジェイドを必要としているらしい。アズールが珈琲を自ら淹れるのは自分に対してだけだ、と判明してからは、珈琲に対するジェイドの不満も嘘のようになくなって、ジェイドはアズールの淹れた珈琲を愛するようになった。

     大人になった二人が、今度は一緒に選んだ部屋のソファに腰かけて、似たようなやりとりをするようになるのは、また別の話。

     

     
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    Replies from the creator

    yo_lu26

    PROGRESSスペース読み原稿
    「三千字のアウトプットに三万字の思考が必要って本当ですか?」
    「成人向けが恥ずかしくて書けないのですが、どうしたらいいですか?」
    上記をテーマにしたスペースを開催しました。読み原稿です。メモ書きなので分かりにくいところもあるかもしれませんが、ご参考までに。
    20240203のスペースの内容の文字起こし原稿全文

    ★アイスブレイク
    自己紹介。
    本日のスペースがどんなスペースになったらいいかについてまず話します。私の目標は、夜さんってこんなこと考えながら文章作ってるんだなーってことの思考整理を公開でやることにより、私が文字書くときの思考回路をシェアして、なんとなく皆さんに聴いてて面白いなーって思ってもらえる時間になることです。
     これ聞いたら書いたことない人も書けるようになる、とか、私の思考トレースしたら私の書いてる話と似た話ができるとかそういうことではないです。文法的に正しいテクニカルな話はできないのでしません。感覚的な話が多くなると思います。
    前半の1時間は作品について一文ずつ丁寧に話して、最後の30分でエロを書く時のメンタルの話をしたいと思います。他の1時間は休憩とかバッファとか雑談なので、トータル2時間半を予定しています。長引いたらサドンデスタイム!
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