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    『ドクターが結婚するらしいですよ?』
    傀博♂のSS。
    かきかけ。本当に書きたいとこだけ。全力ゆるふわ時空。ファントム出てない。
    もしかしたらこれイントロにして一本書くかも。書かないかも。

    #傀博
    puppetBo

    「け、っこん……ですか……ドクター……?」
    ばさり、と軽い紙束が床に落ちていく。目の前の、ロドスのトップにして愛らしい姿のコータスの少女は、その目をまん丸にして私を見つめていた。
    「あー……うん。やっぱり、駄目?」
    「だめということはありませんがけっこんされるということはつまりドクターとどなたかがけっこんされるということでしょうか」
    「同じこと二回言ってるな……。うん──ってアーミヤ!?」
    散らばった紙の上に更にアーミヤは崩れ落ちる。突然のことに、私も慌てて彼女のそばに駆け寄って、その手を取った。
    「ア、アーミヤ、大丈夫か!?すぐケルシーを呼ぶから、」
    「だいじょうぶです。わたしはだいじょうぶです」
    「ほ、本当に?」
    思わず握った手が震えていた。長い耳が力なく垂れ床に擦りそうだったので、もう片方の手でそれを彼女の肩にかける。そんな私を、やがて彼女はゆっくりとした動作で見上げていた。
    「……ロドスのためにならないとか。目的の邪魔になる、という話なら。今言ったこと全部無かったことにして良いよ、アーミヤ」
    「……え?」
    「そういう契約めいた関係性に、そこまで固執していたわけでもないんだ、私達。それが枷になるようなものなら、わざわざ結ぶこともない、って。それは私達二人の共通の意見。だから君が駄目だっていうなら、やめておく」
    元よりそのつもりだったから。だから、あらかじめ私達の間で決めていたことを私は彼女にそのまま告げた。だけどアーミヤはますますその目を震わせて、それから、すごく真剣な顔で私を見つめていた。
    「──ロドスに在籍する方が婚姻関係を結ぶ際の手続きでは、直筆による書類の提出が求められます。ですが基本的には一部の給与や保証に関わるだけで、実業務への影響はありません。人事部に提出用の書類がありますので、後でドクターにお渡ししますね」
    「え?」
    「加えて。もしお二人がいずれかの国家の戸籍を保有している場合は、別途届出を行う場合もありますが──あの、ドクターは……」
    「あぁ、まぁ……少なくとも私がそんな大層なものを持ってないか……」
    「……ロドスでは、関係ありません。大丈夫です」
    ぎゅっと、手を握り返される。その真剣な目に、私は少しばかり気後れしてしまうほどだった。
    彼女は、多分私のことを見ているのだろう。それは表面的なものでなく、多分、心の中に至るまで。
    「どうして、結婚しようと思ったんですか?」
    「……理由も、きっかけも、説明できるようなものは無い、かなあ」
    「えっ、そうなんですか?結婚、ってもっと……なんだかロマンチックで、一世一代の大勝負みたいなものかと……」
    「あはは……期待に応えられなくてごめんね、アーミヤ」
    随分驚いた様子の彼女と見つめ合いながら、流石に何か彼女の納得できるような理由でも探してみようかと。そう思いながら、私はぼんやり彼のことを想う。
    「……例えば、繋いだ手を離した時に。それでも何か繋がるものが欲しいと思ったから、とか。二人の関係に一つ、何か名前を追加してみたいと思ったから、とか。……猫が、とても幸せそうに鳴いていたから、とか──」
    理由なんて、そんなものかなあ、と。結局よく分からない話だけをポツポツと彼女に告げる。多分、それは聞いて納得できるようなものじゃ無かっただろう。だけど目の前の少女は少しだけ泣きそうな、とても綺麗な顔で笑っていた。
    「素敵な理由だと、私は思います」
    「そ、う……?それなら、まぁ……良かった」
    「……ドクター」
    「ん?」
    床に二人座り込んで。向き合って手を握りしめて。彼女は一度目を伏せて、それからもう一度私をまっすぐ見つめていた。
    「一つだけ条件があります」
    「うん、良いよ」
    「良いんですか?」
    「うん」
    彼女にだけは、私は絶対に誠意を見せなければならないと。それだけは、私の中で決まっていた。だから彼女の問いに、私はまっすぐ首を振る。
    「私の質問に、答えてください。一つだけ……すごく、簡単な質問です」
    「それだけ?」
    「はい」
    「分かった」
    私の答えに彼女は楽しそうに笑う。「安請け合いし過ぎですよ、ドクター」と。そんなことを言われてしまって、私も少し、笑ってしまった。
    「ドクター」
    「何?」
    「ドクターは今、幸せですか?」
    嘘なんて、つきようのない問いだった。何より彼女の前でそう答えるのは、なんとなく、神様に誓いを立てることにも似ている。そんな気がした。
    「幸せだよ」
    言葉って不思議なものだ。私がそう言っただけで、本当に幸せな気持ちが胸のあたりを小さく温めているようだった。
    その温もりは、彼女に届いてくれただろうか。だけどそんなことは杞憂だと、彼女の目を見てすぐ分かった。
    「……それなら。私はもう、何も言いません」
    「……ありがとう」
    二人でじーっと見つめ合って。なんとなく、おかしくなってきて。気付いたら二人で笑っていた。
    ずっと床に座り込んでいたから流石に冷えてしまって、私たちは立ち上がって床の上の書類を拾い集める。全てを彼女の腕の中に戻し、そしてどちらともなく部屋の外へと歩き出した。
    「ドクター、結婚式はどうするんですか?」
    「結婚式!?いやしないしないしない!私も彼も、そういうの絶対向いてないから」
    「えっ!?ロドス中を挙げてお祝いしますよ!協力関係にある外部のオペレーターの皆さんにも招待状を出します!」
    「だっ、大丈夫!恥ずかしすぎるから、それは……書類一枚書いておしまい。それで十分」
    「えー……」
    すごく不満げな彼女を宥めながら廊下を進む。どうしてそんなに式にこだわるのだろう。お祭り騒ぎみたいな、そんな感じなんだろうか。でも私が見世物っぽくなるのは最悪良いけど、彼は絶対そういうの苦手だしなあ。
    「……ドクターの晴れ姿、見たかったです……」
    と思ったらまさかの親目線。それは流石に予想外だったので私も思わず固まってしまう。
    彼女の望みなら、それは叶えなければならないだろうか。いやでも、ロドス中を巻き込むとかは流石に厳しい気がする。
    「……折衷案、というか……分かった、流石に世話になってる人たちに何も言わないのも失礼かもしれないから……個人的に手紙くらいは出すよ……」
    「写真です!せめて写真を撮って添えましょう!ロドスのオペレーターの中にはプロのカメラマンもスタイリストの方もいますから!ドクターもファントムさんも、絶対に似合います!」
    今更ながら、結婚相手がファントムだと私は彼女に告げただろうか。いやもうとっくにバレてるのか。
    だけどあまりに楽しそうな彼女を前に、私は思わず肩から力が抜けて。結局「出来る限りコッソリお願い」としか言えなかった。

    そのお願いが、ロドスどころがそれこそテラ中を巻き込みかねない騒ぎになるなんて。この時の私は本当に全く、思いもしなかったんだ。
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    mssk

    PROGRESS5/5のネクオペで発行予定(間に合えば)の小冊子の冒頭になります。

    古城ローグライク凋零残響END後の傀博♂のお話
    新刊セットのノベルティの予定です
    ※※少し人を選びそうなお話のため、いらない場合は新刊セットではなく新刊単体でお求めください※※


    含まれるもの
    お互いのことが「一番」大事な傀博
    さよならワールドエンド石畳の廊下を踏みしめる、地響きのような音が鳴っていた。人などよりもずっと大きくて質量のあるカラクリが、迷う素振りもなく鈍い動きで城の奥へと進む音。だが図体の大きさから想像できない程度には器用なようで、普段はアコーディオンを抱えているはずの腕で今は一人の男をしっかりと抱えている。
    キコ、キコ、キコ。カラクリの足が進むたびに人工関節は小気味良い音でリズムを歌う。けれどその足取りのたびに逃げ場をひとつ潰されるようで、私はその軽快なリズムを聞くたびに体を縮めることしかできなかった。
    「……下ろして、くれ」
    『アナタニ指示権限ハアリマセン。⬛︎⬛︎様ノ回収ハクリムゾンソリティアカラノゴ命令デス』
    少しノイズ混じりの機械音声はそう告げる。そうして、相変わらず一切歩みを緩めぬままただ城の中へと戻って行った。
    3635

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    ばさり、と軽い紙束が床に落ちていく。目の前の、ロドスのトップにして愛らしい姿のコータスの少女は、その目をまん丸にして私を見つめていた。
    「あー……うん。やっぱり、駄目?」
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    「同じこと二回言ってるな……。うん──ってアーミヤ!?」
    散らばった紙の上に更にアーミヤは崩れ落ちる。突然のことに、私も慌てて彼女のそばに駆け寄って、その手を取った。
    「ア、アーミヤ、大丈夫か!?すぐケルシーを呼ぶから、」
    「だいじょうぶです。わたしはだいじょうぶです」
    「ほ、本当に?」
    思わず握った手が震えていた。長い耳が力なく垂れ床に擦りそうだったので、もう片方の手でそれを彼女の肩にかける。そんな私を、やがて彼女はゆっくりとした動作で見上げていた。
    「……ロドスのためにならないとか。目的の邪魔になる、という話なら。今言ったこと全部無かったことにして良いよ、アーミヤ」
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    「そういう契約めいた関係性に、そこまで固執していたわけでもないんだ、私達 2810

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    「あー……うん。やっぱり、駄目?」
    「だめということはありませんがけっこんされるということはつまりドクターとどなたかがけっこんされるということでしょうか」
    「同じこと二回言ってるな……。うん──ってアーミヤ!?」
    散らばった紙の上に更にアーミヤは崩れ落ちる。突然のことに、私も慌てて彼女のそばに駆け寄って、その手を取った。
    「ア、アーミヤ、大丈夫か!?すぐケルシーを呼ぶから、」
    「だいじょうぶです。わたしはだいじょうぶです」
    「ほ、本当に?」
    思わず握った手が震えていた。長い耳が力なく垂れ床に擦りそうだったので、もう片方の手でそれを彼女の肩にかける。そんな私を、やがて彼女はゆっくりとした動作で見上げていた。
    「……ロドスのためにならないとか。目的の邪魔になる、という話なら。今言ったこと全部無かったことにして良いよ、アーミヤ」
    「……え?」
    「そういう契約めいた関係性に、そこまで固執していたわけでもないんだ、私達 2810