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    haiiro1714

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    haiiro1714

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    バレンタイン大・遅・刻!
    ヌフリ?ヌフリだと本人は思って書いたヌフリ小説です。急ぎで書いたのでちょっと前後文に違和感あったりします!誤字脱字、文法上の間違いあったらご一報下さい。

    ##ヌヴィフリ

    テイワットにいくつかある感謝を伝える日。
    その中でも、とびきり甘い香りに包まれるのが今日という日だとヌヴィレットは認識している。
    いつもならばまだ仕事をしている時間に半休を取り、向かうのは歌劇場。
    今日はフリーナが監督を務めた舞台の最終日であった。



    カーテンコールを終えて、フリーナの家へと足を運ぶ。予め伝えた時間通りに到着し、彼女の部屋の扉をノックする。
    「はーい、どちら様…って、本当に来たんだね。」
    扉の前に佇むヌヴィレットを見てフリーナは目を丸くした。
    「私が約束を違えるとでも?」
    ムッとした様子を隠す事もなくヌヴィレットは言った。
    「君が約束を反故にするなんて思ってないよ。ただ、その、ちょっと驚いただけ。…僕がそっちに行っても良かったんだよ?」
    時間ならあるし、とフリーナは続けた。
    「君が他人を部屋に入れたがらない性格なのは重々承知している。だが、この量を全てパレ・メルモニアまで1人で運ぶのは難しいだろう。」
    フリーナ越しに見えるのはカラフルな箱の数々。
    「まあ、入りなよ。君って目立つからさ。」
    促されて中に入る。
    水神時代に比べたら少ないが、それでもかなりの数の贈り物が届けられているようだ。
    「はい。」
    ヌヴィレットの前には水の入ったコップを、自身はインスタントのコーヒーをかき混ぜながらフリーナはベッドに腰掛ける。
    「これで全部か?」
    「うん。こっちが食料品、そっちが雑貨。」
    室内の箱の山を指し示す。
    じゃあ、いつものやつ頼んだよ。と言われ、了解した。と返答して水元素の権能を発動する。
    暫くして全ての検品を終えて箱をそれぞれ分別する。
    「こちらは媚薬、毒薬入り。こちらは安全に食べられる分だ。」
    全体の三分の一程の量の山にヌヴィレットは要調査と書いた紙を貼り付け、持ってきていた紙袋へと入れる。
    「わざわざ君が来なくても良かったのに。」
    コーヒーを飲みながらフリーナが言った。
    「そういう訳にはいかない。」
    いくつかの雑貨も紙袋へと入れながらヌヴィレットは答える。
    「メリュジーヌ達だってチョコに細工がしてあれば分かるんだろう?最高審判官ともあろう方が一市民のプレゼントの検品の為に有休を使うのは如何なものかと思うよ。」
    「私の有休をどう使おうと一市民である君に指図される謂れはないな。」
    「あー、そうかい。それは失礼したね。もう水神でもない一市民の家に訪ねて来るなんて本当に最高審判官殿は仕事熱心なことだ!」
    売り言葉に買い言葉で部屋の空気が一気に悪くなったのが分かった。
    言葉とはつくづく面倒な物だとヌヴィレットは内心で溜息をつく。
    こうやって彼女が私の神経を逆撫でする様な言葉をかける時は大体何か話を逸らしたい時だ。
    「…どうやら、言い方を間違えたようだ。すまない、フリーナ殿。」
    先に謝ることで退路を減らす。
    危うく彼女のペースに乗せられそうになっていたことを反省した。
    座ったままの彼女の前に屈み、視線を合わせる。
    俯く彼女の表情を柔らかく波打つ髪が隠す。
    「君の事が心配だったのだ。最高審判官としての義務や責任感ではなく、君の友人として。」
    おずおずと顔を上げたフリーナと視線が合う。海色の蒼玉は不安気に揺れていた。
    口を開きかけては閉じるを何回か繰り返すフリーナを辛抱強く待つ。
    ややあって小さな、ともすれば聞き逃してしまうほどの声量で彼女は問うた。
    「僕は君の負担になっていないかい?」
    今にも泣き出しそうな声と表情で、ああ、そう言えば彼女はそういう娘だったと思い出す。
    臆病で心優しい少女は、恐らく、自分のせいで業務が止まってしまったり、余計な仕事が増えてしまったのではないかと心配しているのだろう。
    「これくらいでフォンテーヌが機能不全に陥る様な事はない。職員たちは皆優秀なの者ばかりなのだから。」
    ヌヴィレットがそう言えばフリーナが口を開く。
    「それなら尚更、君の休暇を僕なんかに使わせてしまって申し訳ないよ。もっと良い使い方がある筈だ。」
    まだ言うか。とヌヴィレットは眉を顰める。どうやら、彼女には自分の言いたかったことが正しく伝わっていない様だ。
    「フリーナ。先程も言ったが、私は君の友人としてここに来ている。…そうだな。旅人とパイモンが悪意ある第三者から菓子を貰ったとしよう。たまたまその菓子に毒が入ってると知ってしまったとして君はどうする?」
    ヌヴィレットの突然の質問にフリーナは目を瞬かせる。そして当たり前の様に言った。
    「?、勿論止めるよ。」
    「二人がその話を信じなかったら?」
    「取り上げて捨てる、かな?」
    二人が死んでしまうよりは余程良い、とフリーナは続けた。
    「二人に嫌われたとしてもか?」
    ヌヴィレットの質問にフリーナは頷く。
    「当たり前だろう?他にどうしろって言うのさ?」
    困惑気味のフリーナにヌヴィレットは溜息を吐く。
    このわからず屋な少女には荒療治が必要な様だ。
    すっくと立ち上がったヌヴィレットをフリーナが視線だけで追いかける。
    ヌヴィレットは先程、毒入りだと断定した菓子の入った紙袋から箱を一つ取り出すと美しい包紙を破り捨て、チョコレートを口に入れた。
    「……っ!?ヌヴィレット!!」
    フリーナが慌てて駆け寄り、右手でジャボを力任せに引っ張った。二人の距離が近くなる。
    「何をしているんだい!?早く吐き出すんだ!!」
    ヌヴィレットの口に指をねじ込もうとしているフリーナの左手を掴んで握り込む。
    「……安心するといい。毒の成分は抜いてある。」
    種明かしをしてやればフリーナはその場にへたり込んだ。
    「な、なんだ…よかった…。」
    安堵の表情を浮かべる彼女に少し腹が立った。
    「これで君にも私の気持ちがわかっただろう?」
    左手は掴んだまま、彼女と視線を合わせる。
    過去に一度だけ、似たような事があった。
    その時は立場が逆で既に食べた後だったが。
    毒に苦しむフリーナをヌヴィレットが偶然発見して、権能で毒を体内から取り除き事なきを得たのだ。
    その事件以降、彼女への贈り物にはヌヴィレットかマレショーセ・ファントムのメンバーによる厳しいチェックが入るようになっている。
    今にして思えば、毒に苦しむ彼女は妙に手慣れていた印象を受ける。机の上に置かれた嘔吐剤、水の入った大振りなピッチャー、そして自らの口に指を入れ毒物を掻き出そうとしている水神。
    ヌヴィレットが発見する以前にも同じ様なことがあったと考えるのが妥当だろう。何せ、水神であった頃の彼女は不老不死であったのだから。致死量であったとしても水神の呪いで死ねない体が毒を体外に排出するまで耐えていたのだろうと推測できるが解毒されるまでの苦痛は想像するに余りある。
    「ヌヴィレット、痛いよ。」
    そう言われて、無意識に彼女の掴んだままの左手に力が籠もっていた事を知る。
    「すまない。」
    掴んだ手はそのままに力だけ緩める。
    「…そう言うのなら離してくれない?」
    「それは出来ない。」
    二人の会話が途切れ静寂が部屋を包み込む。雨音が窓を叩く音だけが聞こえていた。
    暫くして、静寂を破ったのはヌヴィレットだった。
    「今の君は毒を摂取したら簡単に死んでしまう。…それがとても恐ろしい。」
    震える声で言われて息を呑む。ヌヴィレットの言葉はフリーナの中にじわりと染み込んだ。途端に罪悪感で胸がいっぱいになる。
    「…泣いているのか?」
    ヌヴィレットの手がフリーナの頬を撫でる。
    「ごめん、ヌヴィレット。僕、君、に…と、とても、酷、いこと、を、した。」
    しゃくり上げながら頬に添えられた彼の手に己の手を重ねる。
    「ご、ご…めん、な、さ」
    小さな子供の様に泣く彼女の掴んだままだった手を繋いでやる。
    努めて、優しい声を出す。
    「わかってくれたのならそれでいい。こちらも少々やり過ぎた。」
    ヌヴィレットが毒で死んでしまうかと怖かった。
    恐らく、彼も同じ想いを抱えていた筈だ。数百年前も、今日も。
    フリーナはヌヴィレットに手を繋がれたまま泣き続けた。



    「泣き疲れたか。」
    涙の跡を残す頬を数度撫ぜてから、フリーナをベッドに運ぶ。ずっと床に座り込んでいたせいか、抱き上げた彼女の体はすっかり冷え切っていた。
    起こしてしまわぬよう、静かにベッドに体を横たえ、上から毛布を掛けてやる。フリーナがヌヴィレットに駆け寄った時に落としたマグカップを拾い上げ、床を濡らす茶色の液体を水元素の力で掃除する。室内の暖房に電源を入れる頃には窓の外はすっかり暗くなっていた。
    流石にそろそろ帰らなくてはならない。
    勿論、件の紙袋は持ち帰り次第、執律庭へと提出予定だ。
    フリーナのことは心配だが、最高審判官、元水神の家から朝帰り!などというゴシップが出回るのはもっと困る。そんなものが出回ってしまったら今度こそ彼女は自分との接触を絶ちかねない。
    部屋全体に水元素を使い危険物が彼女の部屋に残っていないことを確認して、ヌヴィレットはメモを取り出し頁を一枚破り取る。
    まずはスペアキーを借りていく旨と返却日をしっかり書き記す。
    次に、昼間観た舞台の感想。
    最後に自分の名前を書き、ペンを仕舞う。
    ナイトテーブルの上にメモを置き、その上に文鎮代わりに彼女への贈り物として用意していたオルゴールを蓋を開けて置く。クロックワーク製のオルゴールはヌヴィレットから与えられたプネウマをエネルギーに曲を奏で始める。優しい曲調のそれはフォンテーヌ人であれば誰もが知る揺籃歌。
    「おやすみ、フリーナ。良い夢を。」
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