ギンコさんの話をします。
眼福眼禍で、ギンコさんは周さんに積極的に自分の過去を聞くことはしなかったじゃないですか。
とはいえ、ギンコさんだって自分の過去……十より以前の頃のことにまったく何にも興味ないってことはないと思うんですよ。知るすべはそうそう転がってないだろうが、もし知るすべが見付かったら、まあ。そりゃあ少しは気になるさ。ぐらいの感じなんじゃないかな。
でも、過去を知ることに対して少しだけ怖さのようなものも感じてたんじゃないかな。それで周さんに自分から尋ねることはしなかったんじゃないかな。
そもそもさ。ギンコさん、十より以前の記憶が無いなら、自分が本当に人間なのかどうか、自信がないんじゃないか……?
ヒトに擬態する蟲もいる。自覚が無いだけで、自分もまた蟲なのかもしれない。
蟲なら同属である蟲が見えること、蟲を寄せる体質であることも何ら不思議なことじゃぁない。
自分と同じような目の色をした人間に会ったことがない。これで自信をもって「自分は人間だ」って思う方が難題なのでは……?
本編開始時はそのあたり自分のなかでうまく折り合いつけてそうだけど、少なくともスグロに会う前ぐらいまでは、そこんとこもずっと不安で、葛藤してたのでは……?
口数少ないながらも、行動を共にした蟲師や、ワタリの仲間たちや、旅の途中で立ち寄った里の人たちを、失礼にならない程度にじっと見て、相手と自分の共通点を探して、自分は人間なのか、それとも別の何かなのか、必死で見極めようとしてた時期も……あるのでは……?
……あっ!!医家の!!知り合い!!!!
化野先生と知り合ったらさ!!人体の詳しい構造に関する書物とか見せてもらったりできるじゃん!!あと先生が「人間の脈の速さは、ネズミなんかの小動物と結構な差があってだな……」みたいな豆知識を披露する時も「ほーん」ぐらいのふりして結構熱心に耳を傾けていたのでは……!?
ほんでけっこうかなり親しくなってから、ぽつりと、「なぁ、化野。医家としての意見を聞きてぇんだが。」「ん? どうした、藪から棒に。」「……俺はヒトか、それ以外か。どっちに見える。」とか聞いたりするイベントが発生するかもしれんやん……!?!?
先生はギンコさんのこれまでの葛藤を思って息を呑むけど、今はすぐに答えを返すべき場面だって思って居住まいを正す。
「……医家の矜持に賭けて言うが。 お前は人間だよ。ギンコ。」
みたいなさぁーーーーーーーーーーー!!!!
そういうやりとりがさぁーーーーーーーーーーー!!!!
あったりしますかァーーーーーーー!?!?!?!?!?!?
ギンコさんはその言葉でめちゃくちゃめちゃくちゃ安堵するんだけど、それをそのまま医家先生に言うのも恥ずかしいんで、「ずいぶんな自信じゃねぇか」って混ぜっ返しそう。
ここで先生がむんと胸を張って「少なくともお前は蟲じゃあない!」って言い切る。「根拠は?」「おいおい忘れたか? 俺は蟲が見えんのだ!!これッぽっちも!!!!」ってキレ気味で先生が言うのでついつい笑って「あ~。確かに」って頷いて「まぁなんだ、元気出せよ」って半笑いで肩叩いたりしそうじゃんギンコさんさぁ!!
ッカーーーーーー!!!!たまんねぇな!!!!