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    こちらの話の番外編です。
    年齢操作クロヒル編(小さくなるのはヒルダの方です)

    ガルグ=マク小っちゃいものクラブ展示クロヒル編 いつか見た光景がクロードの眼前で再現されていた。ヒルダさん!と叫ぶマリアンヌは隣にいるはずなのに、彼女の声が遠くから聞こえたような気がする。今回は敵将の前へワープした際に起きた事故だ。ヒルダより先に前衛としてワープで放り出されていたローレンツが慌てて空中にいた彼女を受け止める。手足の長い彼だから幼女の姿になったヒルダに手が届いたのかもしれない。桃色の髪は頭の後ろでひとつに結い上げてあるが少し乱れている。
     すでに転送魔法の魔法陣に囲まれていたクロードは何一つなす術がなく、ただ、その光景を見ているしかなかった。咄嗟にヒルダを受け止めてくれたローレンツには感謝の言葉しかない。
     ヒルダと違って頭身はそのままで敵将の射程範囲内に移動できたクロードはフェイルノートを引き絞った。ローレンツが小さなヒルダを守りながら長時間戦うことは難しい。増援を呼ばれる前にクロードが一撃で敵将を倒す必要がある。
     クロードがこの一矢に集中できるのは皆のおかげだ。ヒルダのこともローレンツのことも脳裏から追い出し、標的となる敵将を睨み付ける。そもそも一騎打ちで勝てるほど腕力に優れていなかったクロードは弓を覚えるしかなかった。だがこちらは才能があったようで放たれた矢の描く弧が金色に見える時がある。ホルストのような剣の達人は太刀筋が光って見えると聞くので似たような境地に達した、と言えるだろう。
    「恨めばいいさ!」
     そう叫んでフェイルノートから放った矢は敵将の喉を貫いた。装飾品を手作りしたり美容に熱中したり、と愛らしい面が目立つがヒルダは前線で育っている。それでもあの年頃の小さな娘にこんな光景は見せたくない───クロードのそんな思いを察したのかローレンツが大きな手で目隠しをしていた。紫の籠手は目どころか顔のほとんどを覆い隠している。素直に瞼を下ろしているかどうかはクロードにもローレンツにも分からない。
     将を倒し敵の抵抗が止んだのでクロードは黄色い外套を肩から外しながらローレンツに近寄った。先ほどは何よりも安全を優先していたが五年前と同じく服の寸法が合っていない。そのことに気付いたローレンツが真っ青になっている。
    「助かった!クロード、靴と手袋も拾ってあげてくれたまえ」
     クロードの黄色い外套に包まれた小さなヒルダは二人の会話を聞いて声を出してもいい、と判断したようだ。
    「エルヴィンさま、よろいをあたらしくなさったたのですか?」
     父親と間違われ動揺したローレンツの頬が赤く染まる。彼はクロードと違って色白なので動揺が顔色に現れやすい。あんなことで領主が務まるのだろうか。
    「違う、僕はローレンツだよ。ヒルダさん」
    「ちがうわ、ローレンツくんはわたしよりちいさいもの」
     クロードの脳裏に、五年前抱えて運んでやった家中から愛されて育った子供の姿が浮かぶ。ヒルダもローレンツも五大諸侯の子女かつ紋章保持者なので円卓会議や"フォドラの首飾り"視察の際に親に連れ回されていたらしい。幼い頃からの顔見知りであったようだ。
    「ああ、確かにそうだ。ローレンツはもっと小さかったよ。俺はクロードだ。よろしくな、ヒルダ」
    「でしょ!ちっちゃかったよね!ねえ、エルヴィンさまでもクロードくんでもいいけどホルストにいさんかおとうさまのところへつれていってくれる?」
     古い顔見知りであったせいで生じた誤解をどう解いたものか、ローレンツは困り果てている。
    「笑うなクロード!」
     思わず吹き出してしまったのは動揺を誤魔化すためだ。滑稽でもあるのだが彼らが小さな頃から顔見知りであったことが羨ましい。そんなことを悟られないようクロードはヒルダの靴と手袋を手に二人の後ろをついて行った。とにかくベレトや魔法に詳しい者たちに相談せねばならない。
    「エルヴィンさま、そこでいちどおろしてもらっていいですか?」
     ぶかぶかになった服は着心地が悪いのだろう。小さいながらもおしゃれなヒルダはクロードの外套も利用して何とか見た目を整えようとしている。その間にクロードはローレンツから耳打ちされた。
    「小さなヒルダさんは羽根のように軽いが父と間違われるのが居た堪れないので代わってくれ」
    「いいぜ、エルヴィンさま」
    「揶揄うのをやめたまえ、クロード!!」
     交代だ、というと素直にヒルダはクロードに身体を預けてくれた。ヒルダはゴネリル家のご令嬢らしく、共に地上に足をつけている限り最も頼りがいのある存在だがそれだけではない。装飾品作りや香油作りでも才能を発揮している。
     つまり彼女を抱き上げて運んでいると身体にお手製の香油の匂いがつくのだ。ローレンツが代わってくれ、というのはおかしな話ではない。好きな人の前に別の女性がつけた香油の匂いをさせて現れたくないのだろう。マリアンヌはおそらくそんなことを気にしないが、ローレンツはそう言うことを気にするのだ。

     ベレトは無表情なので内心が読めない。だが敵兵を倒して鍵を探し出し、扉を開けてヒルダの元に真っ先に走ってきたのは彼が心配している証拠だ。だからクロードは彼を信頼している。
     そして彼の後を追って主だった将たちがクロードたちの元にやってきた。面倒見の良いレオニーや親切なイグナーツ、それに小さなヒルダの視線から見て兄ホルストに似ているであろうラファエルは相好を崩しているし、年上ぶりたいリシテアは自分より小さくなったヒルダの方が背も足も小さいことを噛み締めている。
     そんな中でマリアンヌはただひたすら慈しみに満ちた顔をして、クロードに抱きかかえられたヒルダの姿を眺めていた。クロードはまだヒルダに自身の秘密を明かしていない。だからこの姿に何を思ったのか言って欲しくなかった。
    「原因が解明されるまでワープは使えないな……」
     そういうと作戦を立てたベレトは唸った。何故こんな事故が起きたのか。かつてローレンツも似たような事故に遭ったことがある。クロードはヒルダを膝の上に乗せたままローレンツに問うた。皆、当事者の話を改めて聞きたがっている。
    「お前の時は魔道書の誤植だったよな?」
     そのせいで五年前、子供の姿になってしまったローレンツは頷いた。真っ直ぐでさらさらとした紫色の髪が彼の仕草に合わせて揺れている。戦争が始まってからローレンツは髪を伸ばし始めた。魔力は髪に宿るからだ。
    「そうだ。幸いなことに一晩で元に戻ったがな」
    「エルヴィンさま、いつおうちにもどれるの?」
     クロードの膝に乗ったままのヒルダが問うた。グロスタール伯の顔を知るマリアンヌが堪らず吹き出している。ヒルダがこれくらい幼かった頃のグロスタール伯は本当にローレンツと瓜二つだったのかもしれない。
    「いや、参ったな……」
     小さなヒルダはどうしてしらばっくれるのか、と思っているようだ。ローレンツは頬を膨らませた小さなヒルダの機嫌をどう取ったものか考えあぐねている。だから気づいていないらしいが彼はこれからしばらくの間、友人たちから"エルヴィンさま"と呼ばれるだろう。望外の楽しいこと、は機会を逃さず楽しむべきだ。皆その機会を狙っている。
    「あの時と同じ方法で元に戻るならレストが使える修道士の手配しましょう」
     こう言う時にマリアンヌはとことん空気が読めないが五年前と比べてはるかに堂々と発言するようになった。もしかしたら彼女はローレンツに秘密を告げられるようになるかもしれない。
    「教え子の幼い頃の姿が見られるのは楽しいが……またこんなことが起きては何もかもが滞ってしまうな」
     ベレトがぽつりと呟いた。戦闘は先ほど終わったばかりで皆疲れている。もう少しの間だけ、解決法から目を背けていたい。だが彼はきっと言ってしまうだろう。クロードにはベレトが次に何を言うか、もう分かっていた。
    「全て買い直す資金がないなら知識のある者が総出で手持ちの魔道書の綴りが間違っていないかどうか確かめる必要がある」
     リシテアが顔を覆って呻いたがこれは全く大袈裟ではない。クロードに騙されるようにして新生軍の立ち上げに参加させられ皆、身が粉になるような日々を送っている。そこにそんな作業が加わったのだ。マリアンヌもローレンツもこめかみを抑えている。だが強大な帝国軍を相手に乏しい物資をなんとかやりくりして戦っている現状では、魔道書を全て新しいものに買い直せない。


     マリアンヌも先ほどローレンツと同じ光景を目にしていた。ただし格子の向こう側から、リブローのでも魔法が届かない位置から、だった。あれが五年前と同じく、戦場でなかったならばちょっと楽しい騒動で済んだかもしれない。だがガルグ=マクで再会したクロードに巻き込まれる形でマリアンヌたちは最前線に立っている。
     ローレンツが遠目にもわかるほど血相を変え、地面に叩きつけられるはずのヒルダを必死で抱きとめてくれた。彼はいつも誰かを守ろうとする。その後クロードが一撃で敵将を倒してくれた。彼はいつも狙いを外さないが、今回ばかりは外さなかった理由に個人的な思いが含まれていて欲しい。
    「ローレンツさん、事故当時の記憶は今もないのでしょうか?魔道書の誤りを見つけるのに役立つかもしれません」
     ローレンツは残念そうに首を横に振った。学生時代と比べて髪が伸びたので確かに彼の父と雰囲気がそっくりになっている。ヒルダがあれくらい幼かった頃、グロスタール伯は今のローレンツと同じくらい若々しかったのかもしれない。
    「残念ながらないのだ……今後のためにも魔道書の頭から中身を確かめるしかなさそうだよ」
     マリアンヌはため息をついた。先ほどのリシテアのため息とは理由が違う。五年前の事故の際、マリアンヌは自分が求めてはいけないものを目の当たりにした。
    「はぁ……だが、僕もマリアンヌさんも協力しないわけにいかないな」
     ローレンツはため息の理由を誤解している。マリアンヌのため息は安堵のため息だ。もしマリアンヌが獣の紋章を継いでいなかったら、あんな子を腕に抱いてローレンツの隣を歩く未来があったのかもしれない。だからこそあの時、未来に怯える小さな彼にグロスタールの紋章を持つ妻を娶ればいい、とどうしても言えなかった。あの頃からそう言えなかったほど彼のことが好きだった、と気づいたのは最近だが。

     その後、小さなヒルダをガルグ=マクまで抱えていく役目はラファエルが指名された。筋骨隆々な身体つきがホルストと似ているからだろう。お役御免となったクロードが大きく肩を回している。
    「血の気が引きましたね……大丈夫ですか?クロードさん」
     貫禄が出るよう頬髭を生やしているが大袈裟に嘆く表情は学生時代とあまり変わらない。遠くからそっとヒルダを見ている時の嬉しそうな顔も含めて、だ。
    「いや小さくて細くて折れそうだった。あれなら気絶したローレンツの足首を持って地面を引きずる方がずっと気楽だ」
     小鳥を手の中におさめるとしたら、と考えればいい。持続することを考えず、完全に脱力するか力を込めるなら簡単だ。だが不快な思いや怖い思いをすることがないように小さくて柔らかいものを守るのは本当に難しい。
    「ご経験が?」
    「残念ながらないね。いつもマリアンヌがあいつを回復してやるからだろうな」
     そう言ってニヤリと笑うクロードの視線は何を見てもすぐにラファエルの肩に乗った小さなヒルダに戻っていく。小さなヒルダの要望に応えたのかラファエルがふざけて身体を揺らすので、危ないと言ってローレンツが怒っている。
    「エルヴィンさま、そんなにしんぱいしなくてもだいじょうぶ!」
    「そうだぞ!そんなに心配しなくても大丈夫だぁ!ヒルダさんはマーヤみてえに、羽根みてえに軽いからな!」
     ああもう、と荒げた声が少し後ろにいるマリアンヌにまで聞こえてきた。
    「随分と楽しそうだな。マリアンヌ」
     将来、ローレンツが我が子を可愛がる姿を見る時、彼の隣にはマリアンヌではない女性が立っているに違いない。本来なら心にいくばくかの痛みを伴う光景のはずだった。
    「クロードさんこそ楽しそうですよ」
    「望外のものが見られるのは楽しいことだろう?」
     マリアンヌの脳裏に彼との会話が蘇る。生まれが明かせず、どこへ行っても疎まれる子供。クロードはヒルダを眺めているだけでこんなに幸せそうにしているのに、マリアンヌと同じく本当の自分をさらけ出していないのかもしれない。

     クロードがガルグ=マクを乗っ取った、と周知されてからは四方に散っていた教会関係者たちが再び集まり、様々な部門を再開させた。悲しいことに五年前より孤児院はその規模を拡大している。先にガルグ=マクへ戻ったベレトが小さなヒルダ用の服と靴を用意し今後の手筈の説明もしてくれた。少し変わったワープだから、という説明で納得してくれたらしい。
    「わかりました。おようふくとくつをありがとうございます。ようやくじぶんでどこにでもいけるわ!」
    「ヒルダさん、どこに行きますか?ご案内しますよ」
     髪の毛を後ろでひとまとめにした髪型がとても愛らしい彼女は真っ先にクロードのところへ行く、と言った。
    「あらエルヴィン様のところでなくてよいのですか?」
     マリアンヌまで彼のことをエルヴィンと呼んだ、と知ったらローレンツはどんな顔をするだろうか。
    「だってこれ、クロードくんにかえしてあげなくちゃ!あのかっこうにはこのきいろのがいとうがぴったりよ」
     ヒルダは幼いころからおしゃれが大好きだったのだろう。幼い彼女なりに畳んだクロードの外套を手にしている。
    「分かりました。ご案内しましょう。でもその前に洋服選びのお手伝いをしていただけませんか?」
     洋服選び、と聞いて小さなヒルダの顔が輝いた。本来のヒルダが身につけるべき服を一揃い医務室まで持っていかねばならない。本人が選んだとなれば彼女も不満はないだろう。マリアンヌはまず、小さなヒルダを連れて本人の部屋を訪れた。

     やはりヒルダは小さかろうと完璧だ、とマリアンヌは思う。小さなヒルダは行李や棚の中を開けて物色しているがマリアンヌと違って無意識に物を置いたりしない。寝台の上に洋服を広げて考え込んでいる。
    「おおきくなったらこんなおようふくがきたいなとおもってたの」
    「素敵な組み合わせです。では畳んでからクロードさんのお部屋に参りましょう」
     その他にも目覚めた時に必要そうな物、をマリアンヌは大きめの籠に詰めた。この部屋に元からあった大きな物で、両手で抱えるしかない。
     仕方ないので小さなヒルダに前を歩かせクロードの部屋の扉を叩いてもらった。どうぞ、と言う声と同時に中から何かの崩れる音がする。扉が外開きでなければ開け閉めにも苦労するかもしれない。勿論、寮の扉の開き方はそんな理由で決まっているわけではないが。
    「ああ、ヒルダとマリアンヌか。歓待してやりたいがこの有様でね」
     クロードの背中越しに見える室内は床に紙が散乱している。彼がわざわざ廊下まで出てきたのはそのせいだろう。
    「クロードくん、がいとうをかしてくれてありがとう」
     小さなヒルダが自分の外套を手にしていることに気づいたクロードは膝をついた。
    「小さなお嬢さんのお役に立てて幸いだ」
     クロードは外套を恭しく受け取ったが、ヒルダからは見えないようにマリアンヌが持っている籠の上にそっと広げて被せた。一連の流れはまるで手品のようだった。
    「マリアンヌ、それだと籠の中身が丸見えだ」
     クロードにそっと耳打ちされる。確かにすぐに身につけられるよう肌着を一番上に置いていた。上から広げた手巾を被せたので大丈夫だ、とマリアンヌは判断していたが言われてみれば薄い小さな布だ。やはりどうしても冷静ではいられないらしい。
    「どうしたの?はやくいこうよ!」
    「動揺してるのはお互い様だから仕方ないさ。後は頼んだぞ」


     マリアンヌはその晩、とりあえずあれ以上の失態はないはずだと信じて床についた。しかしこの件には後日談がある。魔道書の誤植由来で事故が起きた際の教本には何度も翌朝の揉めごとを避けるために大人用の寝衣を着せてから眠らせてレストをかけよ、と書かれることになった。
     あの時、クロードの言う通り動揺していたマリアンヌはヒルダの寝衣を入れ忘れている。医務室の修道士もまだ解呪作業に慣れていなかったのでその場にある物を流用したらしい。クロードの外套だけを身に纏って医務室で目覚めたヒルダのことを思うとマリアンヌは申し訳なさで消えてしまいたくなる。
     後にマリアンヌは深酒をするたびに夫となったローレンツにこの件について話すようになるのだが、その度に彼は口籠もり何とも言えない表情を浮かべるのだった。
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    DONE #クロロレ春のこども祭り2021重力から自由になったと思った矢先、クロードは全身に強い痛みを感じた。跳ね起きようとしてマヌエラ先生から身体を押さえられる。押さえられた拍子に視界がぐるぐると回りやがて上下が定まった。

    「落ち着きなさいクロード!貴方は飛竜から落ちたの。下敷きになったローレンツも骨折したわ。二人とも信仰魔法で治したけれど大怪我だったから落ち着くまで時間がかかるわ」

     落ち着く、とはなんだろうか。信仰魔法の主な副作用は吐き気と眩暈だ。先程マヌエラが起きあがろうとしたクロードを止めたのはせっかく治したのに目眩を自覚せず歩こうとして転倒されては無意味になってしまうからだろう。

    「ああ、それで視界がぐるぐると……それとローレンツが下敷きって??」
    「ローレンツも無事だから落ち着きなさい。目眩を起こしたまま歩くのは本当に危ないの。人によって体質の違いがあるけれど一日か二日は絶対安静よ」

    「せんせい、もうしわけないのだがおけをぼくのてもとにいただけないだろうか?」

     反対側の寝台から声変わり前の高くてかわいらしい子供の声がした。医務室の寝台には全て幕が掛かっていて互いが見えないようになっている。

    「ああ、 1753

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    MAIKING「説明できない」
    赤クロと青ロレの話です。
    5.初戦・上
     三学級対抗の模擬戦はクロード達の勝利に終わった。これもクロードの記憶とは異なっている。容赦のなかったベレスの記憶があるクロードは事前に何か工作するかベレトに探りを入れてみたが拒否された。こんな下らないことに全力を尽くすなという意味なのか気高い倫理観の持ち主なのかはまだクロードには分からない。腹下しの薬は冗談だったが賛同してもらえたら武器庫に忍び込んで他学級の使う武器の持ち手にひびを入れてしまうつもりだった。

     母国やデアドラと比べるとガルグ=マクは肌寒い。気に食わない異母兄が王宮で働く女官を寝室に引っ張り込むような寒さだ。それでも来たばかりの頃と比べればかなり暖かくなっている。過酷な太陽の光に慣れたクロードの目にも山の緑は目に眩しく映った。長時間、薄暗い書庫で本を物色していたからだろうか。廊下に差す光に緑の目を細めながら歩いていると大司教レアの補佐を務めるセテスに声をかけられた。クロードは規則違反に目を光らせている彼のことがあまり得意ではない。

    「ちょうど良かった。クロード、後でベレトと共にこちらに顔を出しなさい」
    「分かりました。セテスさんは先生が今どの辺りにいる 2100