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    そのうちクロロレになります。ェュ前提なのでご注意下さい。紅花ルート

    有情たちの夜.4「枠の中2_7」 同胞の血で染まった谷を見て赤い、と感じたのは白きものたちだ。やはりクロードは恐ろしく勘が良い。レアのあの姿は見ていないはずなのに。
    「その件に関して推測をお話ししたいのであればお聞きしましょう」
    「拒否する。それよりロナート卿の話をしようぜ」
     緑色の瞳がゆらぐ蝋燭の灯りを受けている。新品のものを用意させたので尽きてしまうことはないだろう。西方教会関連の工作を担当していたのはアランデル公たちだ。彼らに利用された者たちは皆、捨て石にされまともな取り調べも裁判もなしに処刑されている。ダスカーの際もそうだったが、セイロス騎士団と中央教会の乱暴なやり方を目の当たりにしたヒューベルトは改めて彼らを味方に付ける気を失った。神がかった言いがかりをつけ後ろから背中を刺しかねない。
     ロナート卿が中央教会の振る舞いに耐えかねた事情はヒューベルトもうっすらと把握していた。───こんな時期に散発的に反乱を起こされてもなんの後押しもしてやれない───一報が入った晩にそう嘆いた主君をモニカならどう励ましただろうか。あの頃は主君と二人きり、ガルグ=マクであれ宮城であれお互い以外に信頼できる存在はなかった。だが今はベレスに背中を任せられる。だからこうしてヒューベルト自身でクロードの尋問が出来るのだ。
    「なあ、ヒューベルト。命よりも大切な物はあると思うか?」
     ある。ヒューベルトにとって、そしてモニカにとって自分の命よりもずっと大切なのがエーデルガルトだ。
    「答えなくて良いぜ。ロナート卿には命より大切なものがあったから勝ち目もないのに蜂起したんだ」
    「私どもに勝ち目がないと仰るのですか?」
    「俺にはないんだよ。俺にとって命より大切なものはない」
     クロードはそう、断言してから顔を歪めた。捨て身の人間が何をやるのか、ロナート卿のことがあったのにきちんと理解出来なかったのが悔しいのだろう。だが彼となら未だ会話や交渉が可能だ。だから答えによっては水くらいなら飲ませてやってもいい。



     ヒューベルトは隠しごとをしている。つまりエーデルガルトもまだ何かを隠している、と言うことだ。この部屋に囚われている限り、残念ながらクロードにもう隠しごとはない。ガルグ=マクにいた頃、クロードもディミトリもエーデルガルトも秘密の数を持っていて、そう言う意味では対等だったように思う。だがクロードは父の名を告げてしまったことで強みを失った。それに比べたら些細なことだが意識が戻った時の感触からして、隠し持っていた武器や薬品の類も取り上げられている。
    「それが王国と盟約を結ばず中途半端な形で我々に抗った理由ですかな?」
     僅かだがヒューベルトの声に好奇心が含まれていた。当然の疑問でローレンツと再会する機会があれば何故、諸侯を結集して事に当たらなかったのか、と詰られるだろう。シルヴァンやメルセデスそれにアネットと親しかった彼は、親帝国派の自分には無理でも盟主になら、という期待を持っていたはずだ。
    「違う。イーハ公もディミトリもロナート卿の件について中央教会に苦情申し立てをしなかっただろう?」
     国力が落ちてしまった王国が中央教会に鎮圧や捕縛を依頼するところまではクロードにも理解できる。だがどんな小国であろうと死刑に処すならば為政者の名において処さねばならない。
    「彼らは委ねてはならないものを教会に委ねました」
     ヒューベルトは吐き捨てるようにそう言ったが王国をそこまで弱体化させたのは帝国の手の者たちだろう。そしておそらくその件を成功させたのはヒューベルトと敵対する派閥の者たちだ。些か身勝手だがその失望はクロードにもよく分かる。戦後の論功行賞に向けた味方同士の争いもすでに始まっているのだ。ヒューベルトは、いや、エーデルガルトは敵より憎い同胞を圧倒せねばならない。
    「神懸かった理由で背中を刺されるのはごめんでね」
     きっとディミトリはそんなことを望まない。だがそうせよと勧める者は彼の周りに必ず存在する。そして彼にもイーハ公にもその暴発を抑える力はない。だからクロードはディミトリと盟約を結ぶ気になれなかった。
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