イモ食って笑え「ポップ、イモ焼けたよ!」
「お、うまそーじゃん」
枝の先に刺さったサツマイモがほわほわと湯気を立てている。ダイは、熱くて触れないでいるおれのイモをひょいと取って、ぱかりと割った。
「はい」
「ありがと」
ダイの手で紙に包まれたイモを受け取る。紙に包まれた状態でも熱が伝わってきた。めっちゃ湯気出てんだけど、ダイは熱くないのか?手の皮が厚いんだろうか。
「へへ、いただきまぁす!」
ダイは早速、黄色い断面に、がぶりと齧り付いていた。おいし、と、呟いて、ほかほかのイモをほくほくの笑顔で食っている。ダイの口の端についたイモのかけらをすくって口に運んでやれば、ぺろっと食べて、「ありがと」って笑う。かわいい。ダイの頭をわしゃわしゃと撫でた。
秋の風は少し冷たくて、夏の名残りを吹き飛ばしていく。空は青く高く、天候は穏やか。隣でかわいい恋人が、イモ食って笑ってる。
なんでもない、ただの一日。
でも、しあわせってきっとこういうことで。おれたちは、きっとこういうのを守りたかったんだ。
枯れ葉の山に放り込んだイモを、ふたりですっかり食べ尽くしてしまった。ほくほくと甘い焼きイモが詰まった腹を撫でながら、ダイが満足げに息を吐いた。
「おいしかったなぁ」
「次は栗でも焼くかぁ」
「くり!いいね!」
ダイがキラキラと目を輝かせる。さっきまでイモに夢中だったくせに、現金なやつ!腹から笑いが込み上げてきた。
「はは!ほどほどに食えよ!栗が森から消えねえ程度にな」
「そんなことしないよ!」
「どーだか!食いしん坊のダイくんだからなー?」
「ポップ!」
「あはは!」
ぶすくれたダイの頬を突くと、ぷすーっと空気が抜ける。戦いが終わってから、やっと戻ってきた子供らしい顔が、なんだかとても愛おしくて、頬にひとつ口づけを贈った。
なんでもない、穏やかな一日。
それが、ほんとうに愛おしくて、たまらなかった。