大事に育ててただけなのに「ノートン、もうすぐホワイトデーだからね!」
「わかってるよ」
女性職員から声をかけられたノートンが手を振って応える。毎年バレンタインのお返しはもらった女性の手伝いに駆り出されていた。最近は噂が広まって「一人につき一つ、簡単なお手伝い」に統一したものの、ホワイトデーは分刻みでスケジュールが組まれるほど忙しい。
「ホワイトデー? に何かあるのか?」
隣を歩いていたボアから訊ねられて、バレンタインやホワイトデーの概念と毎年のルーティンを話した。
ボアは最近ノートンがいる管理局にやってきた保護対象者だ。双子の兄が蛇に変化できるという蛇人間で、ボアと離れたがらなかったものだから一緒に保護する形になった。
ボアは目に蛇の要素が現れていたが、中途半端に要素が現れていたことと現人神として崇められていたバイパーに対する不敬として片目が潰されている。他にもバイパーとの外見の相似もあって虐待に近い境遇だったようだ。
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