江澄は必死で首筋に吸いつく藍曦臣に、この人はきっとさみしいのだ、となぜかしんみりしてしまう。
同じなのだ、この人と俺は。
ろくに手順も踏まず、入れられたあとも、痛くて苦しくてつらいのに、自分の上で「江澄、江澄」と一所懸命腰を振る様子を見てたらかわいそうになってしまって、文句もいわずに受け入れる。
翌朝、目を覚ましてからは、ぼんやりしている藍曦臣に「昨日は満足できたか?」と聞く。
「ええ、すばらしい夜でした」
「それはよかった」
これは慈善事業だ、と江澄は無理に笑顔を作る。
たった一度のことだ。
思い出にすればいい。
そう思っていたのに、なぜか次には寒室に招かれて、そこで抱かれる。
そうして月に一度か二度、藍曦臣に呼び出されては関係を持つという日々が続く。
ところが、ある日、江澄は楼閣の中で藍曦臣を見かける。妓女を揚げる楼閣である。(双方仕事)
それきり藍曦臣からの呼び出しはぱたりと途絶え、江澄はまたひとつ傷を増やす。
そうだ、女の人の方がいいに決まっている。自分はお役御免になったのだ。
この心は墓まで持っていく。誰に知られるでもなかったが、ただ少しだけでも触れ合えた記憶があれば生きていける。
ところが藍曦臣はそうではなかった。楼閣で妓女に指摘されて、ようやく自分が江澄に情を抱いていることに気がついて、大混乱しているだけだった。
しかも、自分からしか呼び出したことがない。さらには、江澄は最中に声を上げようとしない。
これはいやがられているのではないか。
三月はがんばってがまんするものの、清談会で顔を合わせたらもう辛抱できなかった。
三月ぶりである。
体を抱きしめただけで泣きたくなるほどにうれしい。
反対に江澄は、抱きしめられただけで、しまい込んだはずの気持ちが出てきてしまって、どうにもならなくなる。
「もう、やめてくれ」
「なぜ、そのようなことを言うの。やっぱり私が無理を言っていたのかな」
「そうだな。こんなこと、はじめるべきじゃなかったんだ」
「あなたは少しもうれしくなかった?」
「……ああ」
「私のことは少しも好きではない?」
「……そうだ」
「今日が最後?」
「……わかった。最後だな」
からのすったもんだあって、最終的にはちゃんとくっつきます。(最後が雑)