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    takami180

    @takami180
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    曦澄のみです。

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    長編曦澄17
    兄上、頑丈(いったん終わり)

    #曦澄

     江澄は目を剥いた。
     視線の先には牀榻に身を起こす、藍曦臣がいた。彼は背中を強打し、一昼夜寝たきりだったのに。
    「何をしている!」
     江澄は鋭い声を飛ばした。ずかずかと房室に入り、傍の小円卓に水差しを置いた。
    「晩吟……」
    「あなたは怪我人なんだぞ、勝手に動くな」
     かくいう江澄もまだ左手を吊ったままだ。負傷した者は他にもいたが、大怪我を負ったのは藍曦臣と江澄だけである。
     魏無羨と藍忘機は、二人を宿の二階から動かさないことを決めた。各世家の総意でもある。
     今も、江澄がただ水を取りに行っただけで、早く戻れと追い立てられた。
    「とりあえず、水を」
     藍曦臣の手が江澄の腕をつかんだ。なにごとかと振り返ると、藍曦臣は涙を浮かべていた。
    「ど、どうした」
    「怪我はありませんでしたか」
    「見ての通りだ。もう左腕も痛みはない」
     江澄は呆れた。どう見ても藍曦臣のほうがひどい怪我だというのに、真っ先に尋ねることがそれか。
    「よかった、あなたをお守りできて」
     藍曦臣は目を細めた。その拍子に目尻から涙が流れ落ちる。
     江澄は眉間にしわを寄せた。
    「おかげさまで、俺は無事だったが。しかし、あなたがそのような怪我をしては意味がない」
    「いえ、あの場合、あなたをお守りすることが最優先でした。あなたは要だった。あなたを守れたから、民も無事だったのです」
    「あなたは藍家の宗主だろうが」
    「あなたもです。江宗主。宗主だからこそ、守るものを見誤ることはできません」
     藍曦臣は引かなかった。江澄も引くわけにはいかなかった。藍曦臣が倒れたとき、身が引きちぎられるほどの痛みが襲った。
     蓮花塢の悲劇から、射日の戦、金光瑶の奸計を経て、江澄は多くを喪った。もう二度と喪わずに済むように、両手の届く限り守っていきたいと思っていたのに。
    「あなたがいなくなるのは、耐えられん」
     ようやく得た友だ。大切な人だ。お願いだから、いなくならないでほしい。
    「晩吟」
     藍曦臣に手を引かれた。導かれるままに牀榻に腰かけると、やわらかく抱きしめられた。
    「私も、あなたを失いたくないのです」
     江澄は背中に手を回そうとしてやめた。藍曦臣の怪我を思い出した。むしろ、こんな体勢で痛くないのか。
    「愛しています」
     離して欲しい。怪我に良くない。
     そう言おうとしたところだった。
     江澄は口を開けたまま、目を瞬いた。
    (なんだって?)
     初めに疑ったのは自身の耳だ。それから、藍曦臣の正気も。
    「愛しています、江晩吟」
     だが、体を離した藍曦臣が面と向かって言うものだから、江澄はたじろいだ。他に疑えるものはない。
     藍曦臣の指が頰をなでた。
     近づいてくる顔を避けるどころか、江澄はぎゅっと目をつむった。
     額と、頬に、口付けを受ける。
     顔に熱が集まってくる。
     目を開けると、藍曦臣がひどく嬉しそうに微笑んでいた。それを見ただけで、喉がつまった。
     何故、自分は、やめろと言わなかったのか。
     あなたは友だと言ったではないか。
     江澄は藍曦臣の胸を押し返して、うつむいた。
     一層、顔が熱い。
    「晩吟?」
     低い声に、動悸が速まる。
     つまり、それは。

     江澄は離れていく指をとっさに握った。
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    月はまだ出ない夜
     一度、二度、三度と、触れ合うたびに口付けは深くなった。
     江澄は藍曦臣の衣の背を握りしめた。
     差し込まれた舌に、自分の舌をからませる。
     いつも翻弄されてばかりだが、今日はそれでは足りない。自然に体が動いていた。
     藍曦臣の腕に力がこもる。
     口を吸いあいながら、江澄は押されるままに後退った。
     とん、と背中に壁が触れた。そういえばここは戸口であった。
    「んんっ」
     気を削ぐな、とでも言うように舌を吸われた。
     全身で壁に押し付けられて動けない。
    「ら、藍渙」
    「江澄、あなたに触れたい」
     藍曦臣は返事を待たずに江澄の耳に唇をつけた。耳殻の溝にそって舌が這う。
     江澄が身をすくませても、衣を引っ張っても、彼はやめようとはしない。
     そのうちに舌は首筋を下りて、鎖骨に至る。
     江澄は「待ってくれ」の一言が言えずに歯を食いしばった。
     止めれば止まってくれるだろう。しかし、二度目だ。落胆させるに決まっている。しかし、止めなければ胸を開かれる。そうしたら傷が明らかになる。
     選べなかった。どちらにしても悪い結果にしかならない。
     ところが、藍曦臣は喉元に顔をうめたまま、そこで止まった。
    1437

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    PROGRESS恋綴3-2(旧続々長編曦澄)
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     その日は各々の牀榻で休んだ。
     締め切った帳子の向こう、衝立のさらに向こう側で藍曦臣は眠っている。
     暗闇の中で江澄は何度も寝返りを打った。
     いつかの夜も、藍曦臣が隣にいてくれればいいのに、と思った。せっかく同じ部屋に泊まっているのに、今晩も同じことを思う。
     けれど彼を拒否した身で、一緒に寝てくれと願うことはできなかった。
     もう、一時は経っただろうか。
     藍曦臣は眠っただろうか。
     江澄はそろりと帳子を引いた。
    「藍渙」
     小声で呼ぶが返事はない。この分なら大丈夫そうだ。
     牀榻を抜け出して、衝立を越え、藍曦臣の休んでいる牀榻の前に立つ。さすがに帳子を開けることはできずに、その場に座り込む。
     行儀は悪いが誰かが見ているわけではない。
     牀榻の支柱に頭を預けて耳をすませば、藍曦臣の気配を感じ取れた。
     明日別れれば、清談会が終わるまで会うことは叶わないだろう。藍宗主は多忙を極めるだろうし、そこまでとはいかずとも江宗主としての自分も、常よりは忙しくなる。
     江澄は己の肩を両手で抱きしめた。
     夏の夜だ。寒いわけではない。
     藍渙、と声を出さずに呼ぶ。抱きしめられた感触を思い出す。 3050

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     藍曦臣の手には文があった。十日も前に送られてきた江澄からの文である。
     まだ、返事を書けていない。
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     それが今や、書きたいことといえばひとつしかない。
     ――会いたい。
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     食べ終わるのがもったいないほどだった。
     さて、食べ終えたからには顔を上げなければいけない。
     江澄はひとつ息を吐いて背筋を伸ばす。
     向かいには、ものすごく機嫌の良さそうな笑顔があった。
    「おいしかったですね」
    「そうだな」
    「今日は何時までいられるのですか」
    「いや、急なことだったから、もう帰ろうかと」
     途端に藍曦臣はうなだれた。彼のそんな顔は初めて見た。
    「それはしかたありませんね。どちらで宿を?」
    「ぎりぎりまで飛ぼうと思っていたから、決めていないが」
     江澄は腕を組んで、天井を見上げた。今からであれば、日が沈む頃には姑蘇を出られるだろう。
     明日には蓮花塢に戻らなければいけないが、それは夕刻でも問題ない。最悪、明後日の朝一番に戻れれば……
     そこまで考えて、江澄はうっすらと頬を染めた。そんなことを言えば無茶をするなと叱られるに決まっている。だが、考えてしまうくらいにはここを離れがたく思っている。
    「あー、あのな、曦臣」
    「はい」
    「今すぐに発たなければいけないわけではなくて」
    「そうなんですか」
    「もう少 3119