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    takami180

    @takami180
    ご覧いただきありがとうございます。
    曦澄のみです。

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    takami180

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    恋綴4-9
    ひさしぶりですみません。
    短いですが、尻叩きの意味も含めて上げさせてください。

    #曦澄

     夕方になって江澄は目を覚ました。
     藍曦臣が古琴を弾き続けていたことに気が付くと、彼は申し訳なさそうにするでもなく笑顔を浮かべた。
    「本当だ、いてくれたのだな」
    「ええ、約束いたしましたので」
    「うれしい」
     藍曦臣が牀榻に腰かけると、彼はすぐに腕を伸ばして抱きついてきた。やはり体が細い。背中をなでるとよくわかる。
    「今日はなにをしたんですか」
    「いつもどおりだ。仕事が片付かなくてな」
    「起きている間はずっと仕事ですか?」
    「そうだな。最近は仕事しかしていない」
    「夜狩りにも行っていないのですね」
    「そういえば、行っていないな」
     藍曦臣は少し体を離して、両手で江澄の頬を包んだ。
    「私が来るまで、夢の中ではなにをしていました?」
     藍曦臣は確信していた。江澄は夢とうつつを取り違えている。彼にとって現実は夢の中にあり、夢は現実なのだ。
     江澄はふしぎそうに眉根を寄せつつも、「仕事だ」と答えた。
    「夢でも仕事が多かったな。だから、ものすごく疲れていたんだ。全然休んだ気がしなくて、夜狩に行く気にもなれなくて」
    「そうでしたか」
    「でも、あなたが来てからいいことばかりだな。ちゃんと休めるし……、ああ、でも」
     江澄は藍曦臣の手に頬を擦りつけながら、眉根を下げた。
    「本当は、現実であなたに会いたい」
    「阿澄」
    「文を、出してみたんだが、返事がないし、もう本当に会えないかもしれない」
     藍曦臣はたまらずに江澄をきつく抱きしめた。
     どうやら江澄は彼の現実の中で藍曦臣をあきらめることなく、関係の修復を図っていたらしい。
    「抱いてくれ、藍渙。あなたにこうして会えるうちに、あなたを覚えておきたい」
     江澄は藍曦臣の髪をかき分け、あらわになった耳に唇を寄せた。
     藍曦臣も今度はそれをとどめず、江澄の体を押し倒した。彼にとっては夢でも、己にとっては現実である。こんなふうに肌を重ねて、あとで江澄は傷つかないだろうか。だが、求めてくれる本心は間違いでないと信じたい。
     藍曦臣は江澄の首元に顔を埋め、その肌に吸いついた。



     安学逸は元々、向家の門下であった。十五の歳に自ら志して江家に移り、失われた蓮花塢の書物について、集積と修復を行ってきた。
     向家は今こそほどほどに大きな世家ではあるが、かつては江家の翼下にあった。武を得意とせず、呪術の研究と開発に重きを置いていた。五代前に遡れば、江家宗主の妹が嫁いでくる近さである。
     その彼が、夜半に前庭に出ていた。庭は夜狩から帰ったばかりの一団でにわかににぎわっている。
     安学逸はその中にいたひとりの仙子の腕をつかんだ。
    「ようやくつかまえたぞ、向陽紗」
    「学兄! 学兄こそ! やっと会えた!」
     向陽紗は飛び上がって笑顔になった。
     安学逸が向門下にあったころ、彼女は十歳にも満たない子どもであった。よく子どもの相手をした安学逸を慕って、しょっちゅう後をついて歩いていた。
     しかし、安学逸のほうは厳しい顔をくずさない。
    「ふざけるな。お前、宗主になにをした」
    「なにって? なに? 江宗主になにかあったの?」
    「ここのところ表にお出ででない」
    「え! そうなの!」
    「しらばっくれるつもりか」
    「そんなこと言われても! 私だって三日も夜狩に出てたんだ。今帰ったところだし、なにかできるわけがないよ」
     安学逸はそれでも引き下がらずに、向陽紗の腕を引いた。
    「向家には呪織があるだろう」
     向家の編み出した術式の中に呪織というものがある。通常は札に書く呪紋を布に織るという術であったが、おそろしく手間がかかる。機織りの間霊力を流し続ける必要があり、さらには裁断すると効力を失うという、まったく実践的ではない術であった。
     しかし、逆手を取れば、手間さえかければいいのである。しかも、周知されていない術となれば警戒されることもない。
     これほど貴人に害をなすのに適当な術はないと思えた。
     しかし、向陽紗は首をかしげた。
    「呪織?」
     初めて聞いたと言わんばかりの表情に、安学逸も怪訝な顔になる。
    「まさか、知らないのか」
    「うん、聞いたことない。なんだ、それ」
     安学逸は思わず口元を手で隠した。
     杞憂か、と一瞬安堵したものの、あれは運び手を選ばない。向陽紗が正体を知らずとも、呪織が江宗主のそばに運び込まれた可能性はある。
    「向家から贈物があっただろう」
    「ああ、うん。なんか、いっぱいあった」
    「内訳を覚えているか」
    「覚えてるわけないよ! ほとんど返しちゃったし」
    「ならば受け取ったものは?」
    「えーと……、興味ないから聞かなかった」
     がっくりと肩を落とす安学逸に、向陽紗は慌てて記憶をたどった。
     たしか、あのとき取りまとめていたのは誰だったか。
     受け取ることにした物品を采配していたのもたしか同じ人だったはず。
    「秀師兄!」
     唐突に叫んだ向陽紗は、安学逸の両肩をつかんでゆすった。
    「学兄! 秀師兄なら詳しく知ってる!」
     二人は顔を見合わせると、急いで試剣堂へと向かった。
     夜狩の報告を受けるため、師兄の誰かひとりはいるはずだった。
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    PROGRESS恋綴3-2(旧続々長編曦澄)
    転んでもただでは起きない兄上
     その日は各々の牀榻で休んだ。
     締め切った帳子の向こう、衝立のさらに向こう側で藍曦臣は眠っている。
     暗闇の中で江澄は何度も寝返りを打った。
     いつかの夜も、藍曦臣が隣にいてくれればいいのに、と思った。せっかく同じ部屋に泊まっているのに、今晩も同じことを思う。
     けれど彼を拒否した身で、一緒に寝てくれと願うことはできなかった。
     もう、一時は経っただろうか。
     藍曦臣は眠っただろうか。
     江澄はそろりと帳子を引いた。
    「藍渙」
     小声で呼ぶが返事はない。この分なら大丈夫そうだ。
     牀榻を抜け出して、衝立を越え、藍曦臣の休んでいる牀榻の前に立つ。さすがに帳子を開けることはできずに、その場に座り込む。
     行儀は悪いが誰かが見ているわけではない。
     牀榻の支柱に頭を預けて耳をすませば、藍曦臣の気配を感じ取れた。
     明日別れれば、清談会が終わるまで会うことは叶わないだろう。藍宗主は多忙を極めるだろうし、そこまでとはいかずとも江宗主としての自分も、常よりは忙しくなる。
     江澄は己の肩を両手で抱きしめた。
     夏の夜だ。寒いわけではない。
     藍渙、と声を出さずに呼ぶ。抱きしめられた感触を思い出す。 3050

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    月はまだ出ない夜
     一度、二度、三度と、触れ合うたびに口付けは深くなった。
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     差し込まれた舌に、自分の舌をからませる。
     いつも翻弄されてばかりだが、今日はそれでは足りない。自然に体が動いていた。
     藍曦臣の腕に力がこもる。
     口を吸いあいながら、江澄は押されるままに後退った。
     とん、と背中に壁が触れた。そういえばここは戸口であった。
    「んんっ」
     気を削ぐな、とでも言うように舌を吸われた。
     全身で壁に押し付けられて動けない。
    「ら、藍渙」
    「江澄、あなたに触れたい」
     藍曦臣は返事を待たずに江澄の耳に唇をつけた。耳殻の溝にそって舌が這う。
     江澄が身をすくませても、衣を引っ張っても、彼はやめようとはしない。
     そのうちに舌は首筋を下りて、鎖骨に至る。
     江澄は「待ってくれ」の一言が言えずに歯を食いしばった。
     止めれば止まってくれるだろう。しかし、二度目だ。落胆させるに決まっている。しかし、止めなければ胸を開かれる。そうしたら傷が明らかになる。
     選べなかった。どちらにしても悪い結果にしかならない。
     ところが、藍曦臣は喉元に顔をうめたまま、そこで止まった。
    1437

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    PROGRESS長編曦澄17
    兄上、頑丈(いったん終わり)
     江澄は目を剥いた。
     視線の先には牀榻に身を起こす、藍曦臣がいた。彼は背中を強打し、一昼夜寝たきりだったのに。
    「何をしている!」
     江澄は鋭い声を飛ばした。ずかずかと房室に入り、傍の小円卓に水差しを置いた。
    「晩吟……」
    「あなたは怪我人なんだぞ、勝手に動くな」
     かくいう江澄もまだ左手を吊ったままだ。負傷した者は他にもいたが、大怪我を負ったのは藍曦臣と江澄だけである。
     魏無羨と藍忘機は、二人を宿の二階から動かさないことを決めた。各世家の総意でもある。
     今も、江澄がただ水を取りに行っただけで、早く戻れと追い立てられた。
    「とりあえず、水を」
     藍曦臣の手が江澄の腕をつかんだ。なにごとかと振り返ると、藍曦臣は涙を浮かべていた。
    「ど、どうした」
    「怪我はありませんでしたか」
    「見ての通りだ。もう左腕も痛みはない」
     江澄は呆れた。どう見ても藍曦臣のほうがひどい怪我だというのに、真っ先に尋ねることがそれか。
    「よかった、あなたをお守りできて」
     藍曦臣は目を細めた。その拍子に目尻から涙が流れ落ちる。
     江澄は眉間にしわを寄せた。
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    雲夢はれんこんの国だけど、江澄はお芋を育てる力が強くてそれがコンプレックスでっていう設定。
    お野菜AU:出会い 藍渙が初めてその踊りを見たのは彼が九つの年だ。叔父に連れられ蓮茎の国である雲夢へと訪れた時だった。ちょうど暑くなり始め、雲夢自慢の蓮池に緑の立葉が増え始めた五月の終わり頃だ。蓮茎の植え付けがひと段落し、今年の豊作を願って雲夢の幼い公主と公子が蓮花湖の真ん中に作られた四角い舞台の上で踊る。南瓜の国である姑蘇でも豊作を願うが、舞ではなくて楽であったため、知見を広げるためにも、と藍渙は叔父に連れてこられた。
     舞台の上で軽快な音楽に合わせて自分とさほど年の変わらない江公主と弟と同じ年か一つか二つ下に見える江公子がヒラリヒラリと舞う姿に目を奪われた。特に幼い藍渙の心を奪ったのは公主ではなく公子だった。
     江公主は蓮茎の葉や花を現した衣を着て、江公子は甘藷の葉や花を金糸で刺繍された紫の衣を着ていた。蓮茎の国では代々江家の子は蓮茎を司るが、なぜか江公子は蓮茎を育てる力よりも甘藷を育てる力が強いと聞く。故に、甘藷を模した衣なのだろう。その紫の衣は江公子によく似合っていた。床すれすれの長さで背中で蝶結びにされた黄色い帯は小さく跳ねるのにあわせてふわりふわりと可憐に揺れる。胸元を彩る赤い帯もやはり蝶のようで、甘藷の花の蜜を求めにやってきた蝶にも見えた。紫色をした甘藷の花は実を結ぶことが出来なくなった際に咲くというから、藍渙は実物をまだ見たことないが、きっと公子のように可憐なのだろうと幼心に思った。
    2006