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    takami180

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    曦澄のみです。

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    曦澄ワンドロワンライ
    第十三回お題「食事」
    本編終了後、付き合ってない曦澄。

    #曦澄

     準備は前日からはじめる。
     まず、よく太った豚を一頭選ぶ。これを十人がかりで屠殺場に運び、首を突いて殺す。そこから血抜きをする。その間にわらを持ってこさせ、血抜きが終わった豚にかぶせて燃やす。これで毛が取れる。最後に煤で黒くなった豚に水をかけて洗い、ようやくさばける状態になる。
     さばくのは料理人に任せる。江澄は骨付き肉ともも肉を分けてもらって、この日の準備を終えた。

     翌朝は日の出とともに蓮根を採りに出る。
     蓮根畑の主人に従って、水に潜り蓮根を掘り出す。水が泥でにごる。
     舟二艘がいっぱいになるまで採ったら戻る。三人で抱えられる分を分けてもらって、邸に戻る。
     料理人五人と一緒に大量の蓮根を洗う。穴の中まできれいにする。
     それから用途に応じて切り分ける。
     乱切り、輪切り、薄めのいちょう切り、粗いみじん切り、すりおろし用には丸ごと残す。
     昨日、分けてもらった骨付き肉は江澄が蓮根を採っている間に料理人が煮てくれた。それと乱切りの蓮根を鍋に入れて火にかける。
     もも肉は叩いてひき肉にする。半分は粗いみじん切りにした蓮根と、葱と茸と合わせてあんこを作る。もう半分は葱と混ぜて蓮根に盛る。
     鉄板を火にかける。その上に蓮根の肉盛りを並べて焼く。
     その隣で鉄鍋に油を敷く。いちょう切りの蓮根を炒める。塩を振り、唐辛子を少しだけ入れる。
     それから料理人が用意してくれていた生地で先ほど作っておいたあんこを包む。包み終わったら料理人に引き渡して蒸してもらう。
     最後に残しておいた蓮根をすりおろす。小麦粉と混ぜ合わせ、そこに刻んだ韮を加える。できた生地を平たくまるめて並べて置く。鉄鍋に今度は油をたっぷりと入れる。さっと揚げる。
     江澄は額の汗を手の甲でぬぐった。もう昼に近い。しかし、何とか間に合いそうだ。
     そこに門弟の一人が走ってやってきた。
    「宗主! いらっしゃいました! 客房にお通ししました!」
    「わかった、行こう」
     江澄はいったん自室に戻って、内衣から全部を着替えた。
     蓮根を採った後に一度衣を変えていたが、料理をしているうちに汗だくになっていた。
     夏、沢蕪君は蓮花塢に盛りの蓮を見に来た。そのときに言っていた。
    「秋には蓮根が旬を迎えますね。きっと、とてもおいしいのでしょうね」
     それを聞いて江澄は決めたのだ。この人を招いて、存分に蓮根を味わってもらおうと。
    「お待たせした、沢蕪君」
    「江宗主、お久しぶりです」
     微笑んで拱手する男は、また少しやせたようだった。閉閑を解いて後、彼は無理を押して仕事をしている。
    「夏におっしゃっていたので、蓮根づくしの食事をご用意いたしましたよ」
    「それは、楽しみです」
     この人の笑顔が好きだと思う。
     この人の力になりたいと思う。
     でも、宗主としての付き合いしかない自分にできることは限られているから。
     煮る、焼く、炒める、揚げる、蒸す。
     思いつく限りの調理法を使った。
     どれかひとつでも気に入ってもらえるといい。
     江澄は門弟をひとり呼び寄せて、食事を運んでくるように伝えた。
     緊張で手が震えた。

     江澄は知らなかった。
     前日に宗主自ら豚を下ろしたと町で噂になっていたことも。
     宗主が茸や韮を買っていったと八百屋の店主の妻が触れ回っていたことも。
     明日の朝、宗主がうちの畑に蓮根を採りに来るんだと誰彼かまわずにしゃべっていた爺やがいたことも。
     それを聞いた沢蕪君が、蓮根を採る様子を見に来ていたことも。
    「宗主はもうすぐ参ります。ここでお待ちください。え? ああ、今、お出しする料理をですね」
     江澄が何をしているか、つまびらかにしゃべっていた門弟がいることも。

    「ありがとうございます」
    「いや、あなたは客人だからな」
     沢蕪君は箸を取って、並ぶ器をながめて、なぜか江澄にほほえみかけた。
     江澄は首をかしげつつ、蓮根の炒め物を口に運んだ。
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     一度、二度、三度と、触れ合うたびに口付けは深くなった。
     江澄は藍曦臣の衣の背を握りしめた。
     差し込まれた舌に、自分の舌をからませる。
     いつも翻弄されてばかりだが、今日はそれでは足りない。自然に体が動いていた。
     藍曦臣の腕に力がこもる。
     口を吸いあいながら、江澄は押されるままに後退った。
     とん、と背中に壁が触れた。そういえばここは戸口であった。
    「んんっ」
     気を削ぐな、とでも言うように舌を吸われた。
     全身で壁に押し付けられて動けない。
    「ら、藍渙」
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     藍曦臣は返事を待たずに江澄の耳に唇をつけた。耳殻の溝にそって舌が這う。
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    1437

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    1112

    y4u3ki

    DONE曦澄ワンドロワンライのお題が「夢」だったので考えたけどこんなんしか思いつかなかった。やばい。まじでやばい。キャラ崩壊とかいうレベルじゃない。ギャグセンスのないやつが書いたギャグ。怒らないでほしい。「阿澄、私の夢を話してもいいかい?」
    「なんだ藪から棒に。まぁ…構わないが」
    「私の夢はね、いつの日か、江家にも藍家にも後継ができて、我々がその役割を終えるときがきたら」
    「うん」
    「それはきっと遠い遠い未来の話だと思うのだけれど、すべてを捨てて。立場も家も、すべてを取り払って、ただのひとりの男として」
    「うん」
    「BARを開きたい」
    「うん。………え?」
    「バーテンダーさんってかっこいいなって」
    「えっちょっと待って今そういう流れだったか?そこは『過去も立場も全て捨ててあなたとふたり只人として慎ましく暮らしていきたい』って言うところだろ」
    「それもとても魅力的なのですが、どうしても蔵書閣の書にあった『あちらのお客さまからです』っていうのをやってみたくて」
    「どういう世界線?」
    「ちょっと予行演習で今やってみてもいいですか」
    「漫才の導入部分だった」
    「お願いです阿澄…!!」
    「くそっ顔がいいな。わかったじゃあ俺が客をやればいいんだな」
    「話が早くて助かります」

    「はぁ…仕事は山積みだし、見合いはことごとくうまく行かないし、酒でも飲まないとやってられんな…」
    「失礼します、お客さま。 1633