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    Teaholic

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    Teaholic

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    生存if。
    全年齢ななごですが、見方によっては五七になるかも!

    夢のその後「満足した?」
    「…はい。ありがとうございます」
    「お礼なんていいよ。僕と七海の仲じゃん?僕も見たかったし。美味しいケーキは食べれたし」
    そう言われた男は車椅子に乗り、仕立ての良い上品な中折れ帽を被り、濃い色のサングラスを掛けていた。帽子から覗く髪は海外にルーツを思わせるくすんだ金色であった。
    見る人が見たらわかるだろうが、左側の顔半分から首にかけて皮膚が一部ケロイド状になっていた。
    この陽気であっても左手のみ手袋をしており、おそらくは自由に動かせないのだろう。
    全体には高身長のその人はかなり痩せており、介護をしている大きな男との体格の差が際立っていた。2人の関係は何なのだろうか?車椅子の男より、介護をしている男は白髪であるにも関わらず、声の張りと身につけているもので30歳の前半と思われた。介護されている男性の年齢はわからず、白髪の男の父親とも思われたが、右手の肌から推測するともしかして白髪の男と同じくらいの年代かもしれなかった。

    ***

    二人は道路側が一面ガラス張りになったカフェレストランで、外がよく見える窓際の出入り口に近いテーブルについていた。外が見えるように車椅子をテーブルに寄せ、車椅子の左側60度の位置に白髪の男は座っていた。
    その距離の近さから互いに気を許しあう存在なのだろう。
    時間はランチタイムを過ぎたばかり。店も空いてきて、ゆっくりと食事をするのに頃合いであった。
    そのレストランでも一番高い価格帯のメニューを二人の美丈夫はゆっくりと味わっているようだった。そうなのだ。どんな様子であっても、彼らを表現するならば美丈夫という言葉がもっとも適していたのだ。
    車椅子の男のメインの肉料理は食べやすいようにあらかじめ厨房でカットされていたが、白髪の男はそれに何度かナイフを入れて、より食べやすいように手を加えた。
    「ありがとうございます。五条さん」
    「どういたしまして」
    顔を見合わせて微笑み合うと、二人はゆっくりと食べ始めた。
    特に気を遣っているようには見えないのに、二人の皿はほぼ同時に空になった。
    「おいしかったね」
    「ええ。とても」
    また二人は視線を交わして微かに笑った。
    「ほら?そろそろだよ」
    「……」
    二人は窓の外に目をやった。
    そこそこ往来のある通りである。そこを制服を着た三人組が早足で何事かを話しながら、通っていく。
    一人の黒髪の男子生徒が手に持ったタブレットを見て立ち止まった。少し前を歩いていた、ピンクの髪の元気そうな男子と艶のある茶色のボブヘアの勝気そうな女子は振り返って一緒にタブレットを覗き込んだ。丁度店から見えるギリギリの位置であり、店の中からは彼らの背中と横顔しか見えなかった。窓際の二人はまっすぐ前を見て、道ゆく人々を見ている様子であった。
    ほんの数分後、三人の学生は移動を始めたが、数歩進んだ黒髪が後ろを振り返り、頭を下げた。振り返った残り二人も軽く頭を下げた。
    それきり、三人は小走りで去っていった。

    「気配を捉えるのが上手になったな、恵」
    「呪力を消していたのですがね」
    「最初に教えた先生がよほど優秀だったんじゃない?」
    「否定はしませんよ……」
    「丁度、デザートがきた!」
    二人は再びテーブルの上に視線を戻し、食事を再開した。

    ***

    食事を終えると、二人は若者が向かったのとは逆の方へとゆっくりと歩み去っていった。
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    Sssyashiro

    DONE【展示】書きたいところだけ書いたよ!
    クリスマスも正月も休みなく動いていたふたりがい~い旅館に一泊する話、じゃが疲労困憊のため温泉入っておいしいもの食ってそのまましあわせに眠るのでマジでナニも起こらないのであった(後半へ~続きたい)(いつか)
    201X / 01 / XX そういうわけだからあとでね、と一方的な通話は切られた。
     仕事を納めるなんていう概念のない労働環境への不満は数年前から諦め飲んでいるが、それにしても一級を冠するというのはこういうことか……と思い知るようなスケジュールに溜め息も出なくなっていたころだ。ついに明日から短い休暇、最後の出張先からほど近い温泉街でやっと羽が伸ばせると、夕暮れに染まる山々を車内から眺めていたところに着信あり、名前を見るなり無視もできたというのに指が動いたためにすべてが狂った。丸三日ある休みのうちどれくらいをあのひとが占めていくのか……を考えるとうんざりするのでやめる。
     多忙には慣れた。万年人手不足とは冗談ではない。しかしそう頻繁に一級、まして特級相当の呪霊が発生するわけではなく、つまりは格下呪霊を掃討する任務がどうしても多くなる。くわえて格下の場合、対象とこちらの術式の相性など考慮されるはずもなく、どう考えても私には不適任、といった任務も少なからずまわされる。相性が悪いイコール費やす労力が倍、なだけならば腹は立つが労働とはそんなもの、と割り切ることもできる。しかしこれが危険度も倍、賭ける命のも労力も倍、となることもあるのだ。そんな嫌がらせが出戻りの私に向くのにはまあ……まあ、であるが、あろうことか学生の身の上にも起こり得るクソ采配なのだから本当にクソとしか言いようがない。ただ今はあのひとが高専で教員をしているぶん、私が学生だったころよりは幾分マシになっているとは思いたい。そういう目の光らせ方をするひとなのだ、あのひとは。だから私は信用も信頼もできる。尊敬はしないが。
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