Dear… 牛島家にはいつからかサンタが夏にやって来る。
ある日の夕方、牛島若利がバレークラブから帰ってくると、玄関に両手で抱える程度のダンボール箱が置かれていた。差出人の名はなく、『若利へ』という右上がりのメモが貼られている。
玄関まで出迎えに来てくれた母を見上げると、母は若利に小さく頷く。
「季節外れですが、サンタさんが来ました。若利にだそうです。手を洗ったら開けてみなさい」
何の疑問を感じないのか、若利はただ素直にこくりと頷く。そぉっとそのダンボール箱を持ち上げると、大きさの割には軽く感じられた。
中身がなにかさえも分からないので、若利はそれを慎重に持ち運び、洗面台の足元にそっと置く。それからいつものように固形石鹸を丁寧に泡立て、爪の中まで丁寧に洗った。いつでも乾いた清潔な物がかけられているタオル掛けのタオルで丁寧に指先までしっかりと水分を拭き取ってから、もう一度若利はダンボールを抱えて居間に向かう。
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