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    すぺ2

    すぺ2という牛天垢です。Twitter上でタグとかで書かせていただいたのをまとめようかなーと思って作ってみました
    ゆるーくよろしくお願いいたします

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    すぺ2

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    オレンジの日(4/14)に書いたものです

    【オレンジの日】

    最近、お店によく来てくれるお客さんが、なんかやたらと日本語で話しかけてくる。
    「サトリ、今日、オレンジのチョコ、ある?」
    「あるヨー」
    ひょろりとしたスタイルに醤油顔。どう見てもアジアンな彼は、どうやらコリアンらしい。言われてみれば、最近流行りのKーPOPアイドルに入っていそうな顔立ちのような気もしないでもない。
    彼曰く、大和なでしこな日本人女子を落とすために日本語を練習していたらしい。初めてうちの店に来た彼は「サトリってほんとに日本人?」と怪訝そうな顔をされたのをよく覚えている。赤い髪と日本人らしからぬ顔立ちが不思議なんだろうと勝手に解釈した。フランスに来て何度もされた反応なので俺自身はもう慣れっこだ。
    「そーだ。サトリ、オレンジデーって知ってる?」
    「なにそれ?」
    「あれ~? 日本人になら伝わるって聞いたけど?」
    彼の「日本人なら」情報は大体が例の大和なでしこからの情報だが、大抵が俺は知らなかったり当てはまらなかったりするらしい。にしても、オレンジデーなんて知らない。
    店内をちらっと見回す。雨の日は総じて暇だ。
    「ねぇ、もし時間あるならさ」
    オレンジデーって何? と訊くと、彼はパッと表情を明るくし、やや前のめりで話し始めた。このコリアンくん、この1年近くうちの店にほぼ毎日来ている。そうして、くだらない世間話を俺と『予行練習』するのだ。もしかしたら、全く同じ話題を例の大和なでしこにしているのかもしれない。その健気さは古き良きジャンプのヒロインよろしく、といった感じだ。ヤローだけど。
    彼の滑らかになった日本語に説明によると、オレンジデーとはいわゆる促販デーのようなものらしい。バレンタインデーとホワイトデーの盛り上がりにあやかろうと愛媛県がオレンジデーを制定。フランスで多産や幸福の象徴であるオレンジにちなんでホワイトデーに成立したカップルが1か月後にイチャイチャする日、らしい。つまり、4月14日。本日だ。韓国にも似たような名称の日があるらしいが日にちが違うらしい。
    「だから今日は彼女にオレンジのチョコあげるの」
    黙っていればイケメンなのに笑うと人懐っこさが滲み出るこの男は、とうとう意中の大和なでしこを射止めたらしい。
    「おめでとー! なら、ラッピングちょっと凝ってやろーか?」
    「お願いします!」
    ニコニコ笑う彼がどれだけうちに通い詰めて日本語の練習をしていたことか。元々甘いものが好きだからショコラを買うことも目的のひとつだったらしいが、そんなに安くない、うちのショコラをほぼ毎日買っていた。俺と話せる日もあれば話せない日もある。それでも毎日練習のために来ていたのだから、なんて献身的なのかと思わざるをえない。
    いつもより少し派手なラッピングを手にした彼は、何やら感嘆の声らしきものをあげていた。
    「サトリにもいい事がありますように!」
    アーメン、と十字を切ってくれる心持ちだけ頂いて意気揚々と店を出ていくその男の後ろ姿をなんとなしに眺めていた。雨の中揺れる真っ青な傘も楽しげだ。
    「そーいえば最近、若利くんに会ってねぇナァ……?」
    数年前にポーランドのチームに移籍してきた恋人を思いながら、1人カウンターの中で小さくゴチた。

    滅多に鳴らない呼び鈴がなる時、それは特定の人物が訪問してくる時と牛島若利はわかっていた。
    思わず時計とカレンダーを確認する。平日ど真ん中の夜半。件の訪問者が来るには少々おかしな時間だった。
    牛島が首を傾げながら玄関を開けると、ぶつかるように抱き着かれる。ほぼ反射で抱き締め返して、肩口にある短い赤髪を横目で確認していた。
    「こんばんは~」
    「どうした、こんな時間に? 連絡してくれていたか?」
    「んーん? ビックリさせたくて突然来た」
    頭をぐりぐりと肩口に擦り寄せる天童の様子を見ながら酔ってでも居るのだろうかと牛島が顔を覗き込もうとした時、ばっと天童が離れて行く。その瞳はいつも通り爛々とした光を宿している。素面なのが明白だ。
    とりあえず、なか入ろ、とまるで家主の様な振る舞いの客人に対して牛島はなんの文句も紡がない。国境を越えてきたとは思えない軽装の天童にも特に何も訊く様子は無かった。
    勝手知ったる天童がサッサと手を洗い、何かガサゴソとキッチンで始める。ケトルで湯を沸かし始めた所を見ると、紅茶か珈琲を淹れるのだろうと思われた。
    「若利くん、オレンジデー知ってる?」
    キッチンから声を掛けて来る天童に近付き、牛島は静かに「知らん」と返す。ケラケラ笑う天童の手元には紅茶の缶がある。ふんわりと立ち昇る香りは紅茶特有の物の中に少しだけフルーツの様な爽やかさも含んでいる。
    「だよネー? まぁ、でも、今日、オレンジデーらしいから会いに来たヨ!」
    「そうか」
    天童いわく、紅茶を淹れるのにちょうど良い温度に沸いた湯を茶葉を入れたティーポットに注いでいく。くるくると踊る様に舞う茶葉が見えるティーポットが欲しいと言ったのは天童だった。牛島が一人で自分のために紅茶を淹れることもあったが、天童ほど丁寧に淹れることは出来ないため、いつも同じ茶葉を使ってもどこか違う味がするのだった。
    「あ。若利くん、もう寝るトコだった?」
    「いや」
    「じゃぁ、お茶にしまショー?」
    「構わない」
    真っ白な下地に数本の細い青のラインが引かれただけのシンプルなティーカップも天童が選んだものだ。繊細な作りのそれは天童が牛島の家に訪問した時のみ活躍する。確かに、鮮やかなオレンジ色の紅茶が白地に映えるので、やはり天童の選択は正しいのだろう。
    カップの内側の水面の縁が金色に輝いて見えるのは良い茶葉を良い状態で淹れることが出来た時のみに見える物なのだといつか自慢げに天童が言っていた。確かに、天童が淹れる紅茶は薫り高く、甘みと奥深い味わいがバランスよく共存する。
    簡素なダイニングテーブルに置かれた二つのティーカップの間に小さな箱が置かれる。牛島がダイニングテーブルに着くと、その子箱が開かれる。見覚えがあるような箱だと牛島が思ったのもそのはずだ。それは天童の店のチョコレートを数種類詰めた小箱だった。小さなブラウンの立方体の表面はつるりと光り、今にも溶けだしそうだ。ちいさな4つの立方体のうち2つにはその上にオレンジの皮のようなものがちょこんと乗せられている。
    「オレンジデーだから、うちのオススメオレンジ系ショコラを持って来たヨ」
    食べて食べて、と薦める天童に促され、ひとまず、乾かしたオレンジの皮らしき物が乗っているチョコを口に含む。少しだけ噛むと、中に含まれていたらしいオレンジのジャムのようなものが口の中に拡がる。甘みの強いチョコに柑橘類特有の酸味が混ざり、普段はあまり甘い物を嗜まない牛島でもするりと一つ食べきることができる。
    向かいに座る天童もゆったりと紅茶を飲みながら、自身の店のチョコを楽しむ。「さすが俺」と自画自賛する様は高校時代の天童の様子と全く変わらないように見えた。
    「若利くんにはコッチのホーがオススメ」
    先程のチョコよりも少しだけ暗い色合いの、ただ美しく四角いだけのチョコを天童が指さす。つい今さっき溶けだしたかのように末広がりになっている形状さえ、天童の計算通りに作成された形状なのだろう。ダークな色合いに反して、柔らかさを表現するようなその形状が牛島の興味を誘った。
    今度はわざと、カリッと半分だけ齧る。齧った瞬間、口に拡がったのはオレンジの爽やかな香り。しかし、それだけでなく、ピリッと舌を刺すような刺激がある。
    「クローブってスパイス入ってンの。ケッコー、オレンジピールと合うっショ?」
    「チョコレートで辛いというのは意外だ」
    「このショコラはねぇ、la vieって付けたンだ。割と好評なんだヨ?」
    la vieとはフランス語で生活や命を示す言葉だ。甘さと辛さを内包したこれをそう表現する天童の感覚を牛島は正しく理解しているとは思っていない。ただ、そういう人間なのだと静かに受け止めるだけだ。残りの半分を口に含み、指先に付いたチョコをぺろりと舐める。
    「もう一つ食べる?」
    「天童は食べないのか?」
    「いーヨ? 若利くんに味見してもらいたくて持って来たンだし」
    紅茶を飲みきった天童は、しかし、何故か最後の一粒のその黒いチョコレートをパクリと自分の口に含んでしまう。暫く口の中でそれを転がした後、ガタリと立ち上がり、牛島の顎を掴む。そのままその唇に口付けし、ころりと口の中で溶けたチョコを流し込んだ。
    「美味い?」
    ぺろりと自身の唇を舐める天童の赤い舌まできっと今なら甘さとスパイシーさを纏っているのだろうかと牛島は想像する。ついさっきまで目の前の男の口の中にあったチョコを丁寧に舐めて、その舌の薄さを思い出す。考えてみれば、暫くお互いに忙しい期間が続き、会えていなかった。
    「明日までに向こうに帰るのか?」
    「んーん? 明日は臨時休業の張り紙してきた」
    ma moitiéに会いに行きます、って書いたから数日は休み取れると思う。
    ケラケラと笑う天童の声音はついさっきキッチンで聞いたものと同じでいて、違う。先程よりほんの僅かだけトーンが低くなったそれは、思惑を含んでいる時に天童がする笑い方だった。
    「クローブにもカカオにも、催淫効果があるらしいヨ?」
    気分はいかが? とわざとらしく首を傾げる天童の後頭部を左手で引き寄せていた。口の中に、甘さと辛さ、それからオレンジの甘酸っぱさが拡がり、確かにそれは命の味がした。
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    すぺ2

    DOODLE若利くんお誕生日に思いついたネタなんですが、なんか、薄暗い…?いや。めっちゃハートフルハッピーエンドのつもりで書きました。
    新書メーカー背景付きで投稿しましたが、なんか読みにくかったので
    Dear… 牛島家にはいつからかサンタが夏にやって来る。
     ある日の夕方、牛島若利がバレークラブから帰ってくると、玄関に両手で抱える程度のダンボール箱が置かれていた。差出人の名はなく、『若利へ』という右上がりのメモが貼られている。
     玄関まで出迎えに来てくれた母を見上げると、母は若利に小さく頷く。
    「季節外れですが、サンタさんが来ました。若利にだそうです。手を洗ったら開けてみなさい」
     何の疑問を感じないのか、若利はただ素直にこくりと頷く。そぉっとそのダンボール箱を持ち上げると、大きさの割には軽く感じられた。
     中身がなにかさえも分からないので、若利はそれを慎重に持ち運び、洗面台の足元にそっと置く。それからいつものように固形石鹸を丁寧に泡立て、爪の中まで丁寧に洗った。いつでも乾いた清潔な物がかけられているタオル掛けのタオルで丁寧に指先までしっかりと水分を拭き取ってから、もう一度若利はダンボールを抱えて居間に向かう。
    1835

    すぺ2

    TRAININGかさねさん(@kasanedane22)の素敵絵にss付けさせていただきました!元絵が本当に!!可愛いのにえっちいのでぜひ見てください!!!
    絵も小説も描ける&書けるかさねさんに私ごときが書くの本当に恥ずかしいですが!!!恥を忍んで書きました!
    【きみは、ぼくのおきにいり】

    天童覚は変わっている。

    「ブロックは読みと勘だヨ~」
    今では珍しいゲスブロックを得意とするMB、ひょろりと伸びた手足、異様に青白い肌、それに対比する様に真っ赤な逆立てられた髪。普段は猫背な彼も、ひとたびコートに入り、ブロックに跳べば、その背はにょきりと伸び、ゴム製で出来たおもちゃのようにしなやかな手指が相手からの攻撃を叩き落としてしまう。
    初めて牛島若利がその独特なブロックを見た時。今まで見た数々のブロッカーと異なるその「叩き落とす」技術に釘付けになった。牛島の父が繰り返し話していた言葉を思い出す。
    「強いチームに行けば、強いやつ、面白いやつに会える」
    白鳥沢バレー部はどこからどう見ても強いチームだった。だからこそ、この、一味も二味も変わったゲスブロッカーに出会えた。
    ——お父さん。やっぱり、このチームは、強い——。
    自分が一番の変わり者とされていて、そのチームで最も強いと思われているとは気づきもしない牛島は、天童をはじめ、数々と集まるメンバーを見てそう感じていた。

    「若利く~ぅん!」
    間延びしたイントネーションで天童がそう呼ぶ時、牛島はただ、静かに 1326

    すぺ2

    TRAINING亜歳さん(@asai_oekaki)のかわいい牛天ワシの絵に付けさせていただきました!元絵がすごくかわいいので!!!ぜひ見に行ってください!!【にひきのわしのうしてん】

    「ワカトシくん、ワカトシくん」
    テンドウワシが ぴょこぴょこと あかいかざりばねを ゆらしながらワカトシワシのまわりを ちょこちょこあるきます。
    「はしのむこうに、おいしいきのみがいっぱいあるんだって! いこうよ!」
    「はしのむこう?」
    ワカトシワシがみどりのかざりばねをゆらして ちいさくくぶをかしげます。
    「あのトロルのいるはしのむこうか?」
    「そーそー!」
    テンドウワシが そのまっしろなつばさをひろげます。よくみれば、そのつばさは ひかりにすけてうすむらさきいろに みえます。
    「このまえまでとなりのもりにすんでた ことりのおやこがたべられちゃったってきいたけど たぶん、おれらはだいじょうぶ」
    ふふん、ととくいげにテンドウワシはその するどいくちばしをみせびらかします。ワカトシワシは なにかをかんがえていました。
    となりのもりの ことりのおやこは テンドウワシとウシワカワシがこのもりに すみはじめたとき、となりのもりの きれいなみずばを おしえてくれたしんせつな おやこでした。
    「わかった。ほんとうにトロルがあのおやこをたべたなら おれたちはいくべきだろ 705

    すぺ2

    MOURNING栗原さん(@kuri_usiten)に大変仲良くしていただきまして!ありがたいです!!
    そんな中で、素敵絵をいただいて、それに小説付けさせていただくというものをやらせていただけたので&公開許可をいただきましたので、自慢という名の公開をさせていただきます!!いいだろ!!!
    おとぎ話パロです。
    栗原さんの素敵な絵付きのものは支部にあります(https://www.pixiv.net/artworks)
    【はだかのおうじさま】

    その国はとても美しい国でありました。人々は幸福そうに微笑み、動物たちも穏やかに過ごせる緑に溢れ、美しい空と清涼な川と湖がその領地にありました。

    そこにやってきたのが1人の赤毛の男です。正確に言うなれば、彼は男と言うにはやや幼い顔立ちをしていました。年としては10代後半といったところでしょうか? ギョロリとした白目の多い大きな目は彼を幼くも奇妙にも見せております。ただ、その長身をひしゃげるように曲げて歩く様は老人のようでした。
    彼は、ヒョロリと長い手足をブラつかせながら質素な身なりで現れました。背中には大きな木箱を背負っております。ずっしりと重そうなそれのせいで少年は背中を丸めて歩いているのかもしれませんでした。

    「王子様の17歳のお祝いに参りまシた」
    その国の真ん中の少し小高い丘、その上に質素なお城がありました。赤毛の少年はそのお城の門の前で門番の少年にそう告げておりました。太眉の門番はその特徴的な眉をㇵの字にして赤毛の少年をマジマジと眺めます。
    「えっと、祝賀会はまだ先で……」
    「分かっていマス。ですので、その、祝賀会に見合う服を仕立てるために参りまシた 9238

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