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    badger_0107

    @badger_0107

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    LXH師弟沼/黑限/黑限/捏造成長弟子/捏造設定ゴリゴリ/相手・左右・性別完全固定
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    マシュマロ>https://marshmallow-qa.com/badger_0107

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    badger_0107

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    ■書きかけみたいな、出会い編中編みたいな
    ■設定ふんわり
    ■小黒がそれなりの年齢で師父と出会って、反発から始まる話が見たいな~からスタートしたパラレル
    ■名前とセリフのあるモブが出ます

    #黒限
    blackLichen
    #黑限
    blackLimit

    没落貴族の小黒が大貴族の無限に買われる話(2) 言われていたとおり、迎えの者が羅家へやってきたのは昼前です。紫羅蘭と共に、鄭家の屋敷へ連れて行かれました。大門の内で執事に迎えられた小黒はそのまま外院に留め置かれ、紫羅蘭は召使い頭らしき年配の女性に奥向きへ伴われていきます。
    「お泊まりいただく房間(おへや)です」
     案内された房間には数人の召使いが控え、何着もの華やかな絹の衣装が並べられていました。
    「お見合いのためのお衣装合わせです」
    「衣装合わせ?」
    「羅小黒さまはそのまま立っていていただければよろしい」
     そう告げられると、召し使いたちに取り囲まれてみすぼらしい単衣を脱がされます。
    「えっ、あ」
     驚いている間に手際よく衣装の一揃いを着せられ、執事に上から下まで吟味され、また脱がされて着せられて、何回もそれを繰り返して、小黒に一等似合う衣装が慎重に選び出されました。合わせて、柔らかな革の長鞋や絹の組紐の佩玉も見立てられます。まるで人形にでもなった気分で、体力には自信がありますが、どうにも勝手が違いすぎて疲労困憊してしまい、召使いたちが引き取った後は暖かな炕牀(暖房付きベッド)にぐったりと懐いていました。
    『紫羅蘭、どうしてるかな』
     大門で別れたきりの紫羅蘭を案じますが、まさか内院へ入っていくわけにもいきません。
     冬の短い陽は瞬く間に暮れて、役所から戻った鄭禄に夕食の席へ招かれました。
     擦り切れていた単衣の代わりに与えられた玉緑色の立て襟の綿の長袍と春緑色の綿入りの上衣に身を包んで卓子に着くと、鄭禄が満足げに頷きます。
    「ふむ、無限大人がお見初めになっただけはある。重畳、重畳」
     容姿を褒められていると好意的に解釈するべきなのでしょうが、少しも嬉しくありません。
    「それさ、無限大人って全然知んないんだけど。偉い人なんだろ、どこで俺なんか見初めたわけ?」
    「そんなことは私も知らん。それより、お前のそれよ」
    「それ?」
    「無限大人を少しも知らぬで見合いとは失礼が過ぎる。私が教えてやるから、しっかり覚えて臨めよ」
     どうやら、そのために夕食の席が設えられたようです。
     小金持ちの鄭家の主人の夕食ですから、じっくりと炭で焼いた家鴨を筆頭にずらりと並んだ料理は小黒にとっては大層なご馳走ですが、鄭禄の無限についての講釈が蕩々と続いて、ゆっくり味わうどころではありません。
     曰く、はっきりとした年齢は知れないが50歳ほど、青嶺公爵の領地といえば小国にも匹敵する広大さにして肥沃であり、他国との交易なども手広く、皇家を上回ると言われるほどの資産を有していること。それほどの財を持ちながら ―― むしろそれが為にか当主である無限は無私にして国家と民の安寧に尽力し、皇帝陛下の信任篤く、親政をお支えしていること。
    「なにしろ、一度は年号にもなられたお方だからな。主上(おかみ)からどれほど篤く信をおかれておいでか、それでわかろうというものだ」
    「へえ~、年号」
    「それも知らんのか?」
    「全然」
     2つ前の年号と言えば小黒が生まれる以前で、知っていても知らずとも、生きていくには何一つ差し障りなどありません。そもそも小黒は読み書きができませんから、誰かが語って聞かせてくれねば、歴史について知るよしはありません。それでも、紫羅蘭に『疎い』と言われたのはこのためだったのではないかと、ふと思い至ります。
    「やれやれ」
     眉を寄せた鄭禄が小さな溜息を吐き、講釈を再開しました。これまでの無限の功績や故事を延々と聞かされ、ようやく解放されたのは一刻半も経ってから、明日の夜は鄭禄に教えられた子細をそっくり復唱するよう申し渡されます。
    「別に、ざっくり覚えてりゃなんとかなるってのに」
     ぼやきながらも、今夜教えられたあれこれを炕牀の中で黑咻相手に反芻します。頷きながら聞いている黑咻はどこまで理解しているものか、けれどその愛らしい仕草には慰められます。
    『つーか、鄭禄だって木っ端役人なんだからそんなお偉いさんと直に口きいたわけでもないだろ』
     せいぜいが、皇城で遠目に姿を見かけた程度でしょう。随分と人柄を褒めそやしていましたが、話半分どころか真実が一つまみと思って聞いておいたほうがよさそうです。
    「お前もそう思うだろ」
    「ショ~」
     同意を求めると、小黒の胸の上に乗った黑咻は不思議そうに瞬きました。
    「って、わかんないか。あ~あ、紫羅蘭どうしてるかな。大丈夫かな」
     昼に別れたきりの紫羅蘭の顔が、また浮かんできました。鄭家の使用人たちに、意地悪などされてはいないでしょうか。
    「……明日は会えるよな」
     黑咻に語りかけるでもなく独りごち、自身の邸であれば望むべくもない暖かな被子(ふとん)を顎まで引き上げました。黑咻も、ぬくぬくと懐に潜りこんできます。
    「寝よっか。晩安(おやすみ)」
     呟いて、目を閉じます。
     思った以上に疲れていたのか、上と下の瞼がくっついた途端に眠りに落ちていきました。


     朝の早い鄭禄がとっくに役所へ出仕してから、小黒はのんびりと目を覚ましました。
     顔を洗っているところへ朝餐を運んで来てくれたのは、紫羅蘭です。小黒と同じく、擦り切れた単衣の代わりに梔子色の短衫に蝋白色の裙と布鞋、綿の入った薄紅の上衣の、さっぱりと新しい衣服を着ていました。
    「よかった、どうしてるかと思ってた」
    「私も、明日は無限大人のお屋敷にお供しますでしょう。だから、羅伯爵家の腰元として恥ずかしくないようにと」
     話を聞けば、良家の奥仕えに見えるように礼儀作法を教えられ、荒れてひび割れた手にはよく効く軟膏をたっぷりと擦りこんでもらったと言います。
    「向こうはこっちが没落してんの知ってんだろ。体裁なんか調えたって意味ねーのに。紫羅蘭に新しい服もらったのはよかったけど。手の薬も」
    「鄭禄さまの体面がありますでしょう。若さまも、お衣装とてもお似合い」
     紫羅蘭はいつものように優しく笑ってくれますが、それでも不安げな様子は隠しきれていません。
    『俺がしっかりしなきゃ』
     産後の肥立ちの悪かった小黒の母親が寝ついたまま亡くなったのは2歳の時、下働きばかりか乳母代わりを勤めてくれた紫羅蘭の母親と父親はさらに2年後に流行り病で相次いで亡くなり、心労の続いた小黒の父親も7歳の時に亡くなりました。まだ13歳だった紫羅蘭と、それからずっと2人で生きてきたのです。善意だけの人ではないにせよ、鄭禄が悪い人間ではなく、何世代も前に別れた遠い縁ながら、令嬢の小白が幼馴染みでもある同姓の豪商・羅家のさりげない援助などもありましたが、紫羅蘭の苦労は並みではなかったでしょう。まさに鄭禄の言っていた通り、今回の縁談はまたとない出世の機会です。
    「俺はさ、昨日は鄭禄から無限大人のこと色々教えてもらったんだ。有能で優しくていい人みたいだし、なにも心配することないよ」
     50歳を過ぎるまで独り身で居るのも、忙しすぎたためかもしれません。
    『側室も子も居ないってのは引っかかるけど』
     高貴な一族や豪商において当主が同性の正室を迎えるのは珍しくはありませんが、ほぼ家同士の結びつきを深めるための政略的な婚姻です。家を継ぐための子は側室によってもうけているものですが、無限にはどちらも居ないと聞きました。もちろん、同性にしか興味のない当主やどうあっても子が出来ない当主に、親族から跡継ぎを迎える場合もあります。
    『う~ん、デカい家だし今さらどっかの家との結びつきも必要なくて、無限大人が男好きで本当に俺を見初めた……とか?』
     考えても詮ないと思いながらふと考えてしまう堂々巡りを、頭を振って打ち払いました。
    「今日は馬の稽古して湯浴みして、鄭禄が帰ってきたら無限大人の話の復習するって言われた。紫羅蘭は?」
    「私も、言葉遣いを習ってました。それとガサツだって言われちゃったから、しとやかな物腰のお稽古もって」
     厳しそうに聞こえますが、朗らかに笑っているところを見ると決して居心地悪くはないようです。
    「そっか、じゃあ紫羅蘭と次に会うのは明日の朝かな。お互いがんばろ」
    「……はい」
     釈然としない風ではありながら、それでも紫羅蘭が頷きます。
    「朝餐のお支度しますね」
     支度を調えてくれると頭を下げて房間を引き取り、羅家では紫羅蘭と2人で質素な卓子を囲んでいた朝餐を、時々黑咻にも分けてやりながら小黒は黙々とひとりで食べ終えます。
     下げに来てくれたのは、鄭家の召使いでした。


     池と呼ぶには随分と広い水域に渡された典雅な九十九折りの石橋を案内されて、反り返った屋根と朱塗りの柱を持つ水上の小さな建物へ通されました。小黒には読めませんが、「星池軒(シンチーシュアン)」と彫られた扁額が掲げられています。
    「ただいま主が参ります。お掛けになってお待ちを」
     灰色の髪をした壮年の家令は、丁重に頭を下げて引き取っていきました。
     ひとりで残されて、小黒は小さくも暖かい建物の中をぐるりと見回します。
     白い漆喰の壁はどっしりとして柱は太く、入り口の門扇と三方の壁に填められた精緻な格子細工の木枠には、高価な玻璃が惜しげなくあしらわれています。六角形をした石の床の中央には螺鈿が施された紫檀の円卓と二客の肘付きの椅子が置かれ、湯気を立てている風炉の上の玉書煨(湯沸かし)と雨過天晴の青磁の茶器が一揃い支度されていました。
     玻璃を透かして射す黄金色の陽光が床に描く複雑な格子模様が目に入って、窓辺へ寄って外の様子を眺めます。広い池を囲んで建てられた建物と葉を落とした木々に薄く雪が積もり、空は澄明にしてどこまでも高く、池の面は鏡のようです。池に映る空の青を眺めながら、どこか夢の中の出来事とも感じられて、軽く自分の頬をつねってみました。
    『……夢じゃないよな、やっぱり』
     鄭家の執事が見立てた、艶やかに光る絹の衣装を見下ろします。
     交領の襟や袍の袖の縁取り、きりりと締めた帯の若々しい緑は小黒の眸と同じ色、身頃の月の光を思わせる白銀は小黒の髪と同じ色。袴と革の長鞋の黒が、全体を垢抜けた印象に引き締めています。
     今朝方、朝餐を終えるとこの衣装の一揃いに綿入りの外套とを身に着け、鄭禄や紫羅蘭を含む供の者たちと共に鄭家を出立しました。武門の若君らしく、小黒は昨日習ったばかりの騎馬です。身体を動かす事柄の習得は早く、動物にもよく懐かれますから、生まれた時から馬に乗っているといっても疑う者もないだろう堂に入った姿に視線を投げてくる者も少なくありませんが、小黒自身はなにかおかしなところでもあるのかと不審に感じるばかりです。
     道々に注目を浴びながら城内を奥へと進み、四半刻もかかって案内された屋敷に目を瞠りました。
     生まれた時からの京城(みやこ)育ちですから、皇城にほど近く延々と連なる石壁の屋敷と園林(ていえん)はもちろん知っていますが、青嶺公の当地での屋敷とは少しも知りませんでした。ここでもまた、紫羅蘭に『疎い』と言われたことを思い出します。京城に暮らしていれば嫌でも目に入る広壮な屋敷の主人の名前すら知らないのですから、さもありましょう。どこのどんな大官が住んでいるのかと思っていたこの屋敷の主に、本当に自分が輿入れするのでしょうか。
     物思いに耽る耳に門扇が開く音が届いて、慌てて振り向きました。
    「すまない、待たせたな」
     てっきり無限が来たものと思いましたが、二十代前半と見える若い男性が入ってきます。
    『なんだ、露払いか』
     高貴な人との接見として当然ですが、肩すかしをくらって少々気が抜けます。
    『にしても』
     ゆったりとした足取りで卓子を回りこむ若者に、さりげなく視線を投げました。
     池に映る天の青ほどに軽やかな竹月色と雪白を基調に、吉祥の文様を組み合わせた刺繍(ぬいとり)を全面に施した絹の衣装は豪奢にして品良く、帯から下げた佩玉は彫りが施されているでもない簡潔な円環ながら、深い森の緑が雫となって滴り、また凝って石となったかのような極上の翡翠です。
     しかし、衣装や装飾品よりも、際立っているのはその容姿(すがたかたち)。
     背の半ばで緩く束ねた垂髪は絹よりも艶やかに光を滑らす藍(あお)、肌はさながら卵の殻の薄さの最上の白磁、巴旦杏の形の目は夏の森の葉の色を映した泉の碧の眸を浮かべ、名工の手が繊細に彫り上げた如き小作りな鼻に二片(ふたひら)の葩(はなびら)めいた唇は、優しい線を描く面輪の中へ黄金律に配されています。
    『男……だよな?』
     決して線が細いわけではありませんが、稀有にして甘やかな美貌に少々混乱します。小国に匹敵する大貴族ともなれば、家臣すら選び抜かれた人間なのでしょうか。
    「茶を淹れよう。座りなさい」
     立ち尽くす小黒に青年がそう声を掛けながら、主人の座に着きました。
    「えっ、いや、ダメだろ、そこ」
    「ん?」
     小黒の困惑をよそに、青年は火折子と呼ばれる種火の入った竹筒を取り出して息を吹きかけ、たちまち大きくなった火と共に、小さな建物の中がいとも馨しくなりました。
    「そこ、あんたのご主人の席だろ」
    「主人とは?」
     故意なのかそうではないのか、青年はのんびりとした口調で風炉に火を点けます。
    「あんたの主人だよ。無限大人」
    「無限は私だが」
    「へ」
     図らずも間抜けな声が出て、唖然と目の前の人物を見つめました。鄭禄と紫羅蘭によれば、青嶺公爵無限の年齢は50歳かそれより上のはずです。鄭禄は「若々しくも見目麗しい」とも言っていましたが、目の前の青年は容姿ばかりではなく、肌の張り艶も声も茶器を支度している手も、三十代にすら見えません。
    「なっ、揶揄ってんのかよ、だってあんた若いじゃないか。無限大人って50歳とかそのくらいって」
    「そうだな、50じゃない」
     というのは、青年自身のことでしょうか、それとも青嶺公のことでしょうか。
    「47だ。齢などなんでもいいが」
     淡々と答えながら、温めた蓋椀に茶葉を入れ、湯を注ぎ、優雅な所作で茶を淹れていきます。
    「47、って?」
    「私の齢だ。50より多少若いが誤差の範囲だな」
     広く長い袖の袂を押さえ、小黒の前に茶を淹れた茶器を差し出します。
    「いつまでも立ってないで、掛けたらどうだ。羅の若君」
     にこりともしない美しい顔を、薄く口を開けて見つめました。


    つづく
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    badger_0107

    DOODLE■書きかけみたいな、出会い編中編みたいな
    ■設定ふんわり
    ■小黒がそれなりの年齢で師父と出会って、反発から始まる話が見たいな~からスタートしたパラレル
    ■名前とセリフのあるモブが出ます
    没落貴族の小黒が大貴族の無限に買われる話(2) 言われていたとおり、迎えの者が羅家へやってきたのは昼前です。紫羅蘭と共に、鄭家の屋敷へ連れて行かれました。大門の内で執事に迎えられた小黒はそのまま外院に留め置かれ、紫羅蘭は召使い頭らしき年配の女性に奥向きへ伴われていきます。
    「お泊まりいただく房間(おへや)です」
     案内された房間には数人の召使いが控え、何着もの華やかな絹の衣装が並べられていました。
    「お見合いのためのお衣装合わせです」
    「衣装合わせ?」
    「羅小黒さまはそのまま立っていていただければよろしい」
     そう告げられると、召し使いたちに取り囲まれてみすぼらしい単衣を脱がされます。
    「えっ、あ」
     驚いている間に手際よく衣装の一揃いを着せられ、執事に上から下まで吟味され、また脱がされて着せられて、何回もそれを繰り返して、小黒に一等似合う衣装が慎重に選び出されました。合わせて、柔らかな革の長鞋や絹の組紐の佩玉も見立てられます。まるで人形にでもなった気分で、体力には自信がありますが、どうにも勝手が違いすぎて疲労困憊してしまい、召使いたちが引き取った後は暖かな炕牀(暖房付きベッド)にぐったりと懐いていました。
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