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    oki_tennpa

    @oki_tennpa

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    oki_tennpa

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    パラロイ西師弟
    イベント開始前に書いたから全部捏造。

    起動きみの髪はルビーの赤だったかな、それともサファイアの青だったかな。
    あぁ、どちらも似合うね。
    きみの瞳は夕暮れの紫だったかな、それとも真昼のターコイズだったかな。
    あぁ、どちらも似合うね。
    きみの──。


    ネオンぎらつくフォルモーントシティの端、ウエストストリートの角を三つ曲がった先にあるメンテナンスショップの奥の部屋。
    ラスティカと刻まれたマスターキーを滑らせると音もなく電磁ドアーが消え失せ、強い薬剤の臭いが鼻をつく。
    立ち並ぶ機材の中を歩く青年の整った横顔にライトグリーンの光がぼんやり当たり、規則的な計器の音が靴音と重なる。
    広く薄暗い部屋の中央に位置するベットはどこか場違いなのに、その周りには多くのプラグが入り交じり足の踏み場もないくらいだった。
    彼はいつも通りの決まった挨拶をする。

    「おはよう、クロエ。⋯⋯おや、まだ眠いみたいだ。そのままゆっくりお休み」

    話しかけた先には赤い髪をした青年が一人寝そべっていて、その身体にはたくさんのプラグが刺さっている。
    アシストロイド───般にそう呼ばれるコミュニケーションロボットである
    赤髪の青年は、眠るように瞼を閉じ小さな駆動音だけをオーナーへと届ける。

    「今日はきみの靴を調整したんだ、気に入ってもらえるかな。僕はきっと、クロエとなら外の世界を歩けるはずだから⋯⋯その時が早く来るといいな」

    そっとクロエにかけていた布団を捲り、蝶番と球体関節から成る冷たく白い彫刻の足を露出させる。
    そこにすっぽりと嵌る綺麗な靴を履かせて、ぱちりぱちりとボタンを止めた。
    相も変わらずアシストロイドの彼はぴくりともせずに押し黙り、ただ一方的に話しかける声だけが薄暗い部屋を這い回る。
    数年前に壊してしまったアシストロイドをどうしても棄てることが出来なかったラスティカは、このラボラトリーに閉じこもり改造と分解を繰り返すようになった。
    混濁する意識と薄れゆく記憶の中で、時には自分がしている事は本当に正しいのか幾度も問答を繰り返した果てに作り上げた機体がクロエである。
    ベースにした機体とは随分違う外見になったような気もするし、主影は残してい
    るような気もする。
    どっちにしろ彼は今日も饒舌で、目を覚まさないままの友人へ微笑みかけた。

    「うん、良く似合うね。明日は腕の良い子が手伝いに来るからヘッドギアを作ろう。⋯⋯きみはいつ目が覚めるのかな、早起きが苦手なところまで僕に似てしまったようだ」
    「ヘッドギア⋯⋯?それって、俺に似合う⋯⋯?」

    突然成り立つ会話に、驚いて声を上げることも出来ない。
    肩にかけていた上着が音を立てて床へ落ちると埃が舞散り、ライトグリーンの照明がゆらりとゆれる。
    真っ白な機体の細い腕を目一杯伸ばして、それから夕暮れの紫の瞳で辺りをきょろきょろと見回す、まるで人間のような目覚め方。

    「あ⋯⋯⋯⋯」
    「あ!あんた⋯⋯貴方?貴方が俺を造ってくれた人?⋯⋯造ってくれた方?俺はクロエ、あんたのアシストロイドだよこの靴新しいやつだよね、さっき履かせてくれて⋯⋯あ、でめんなさい、俺ばっかり喋っちゃった」
    「きみが⋯⋯クロエ?」
    「そうだよ、俺がクロエ!あんたに造ってもらった、最新のアシストロイド!あはは、最新だって。ちょっとかっていいかも」

    その最新のアシストロイドは部屋が薄暗いことも埃が舞っていることも、ラスティカの頭に寝癖があることも霞んでしまうかのように明るい声をしていた。
    丁度、薄紅色の花が舞う時のように心が暖かくなる。
    人とは上手く話せない、社会から隔絶されかけのエンジニアだって思わず嬉しくなってしまう不思議な魅力を持っていた。

    「初めまして、僕はラスティカ。きみを造った⋯⋯クロエが目覚めるのを待ち望んでいた、しがないエンジニア。あまり人と話すのが得意ではないのだけれど⋯⋯クロエはお喋りが上手だね。きみとならたくさん話せる気がする」

    「わぁ、やったー!これからたくさんお話しようね、ラスティカ!」

    まるで、同じ年頃の友達のように。
    違う体温の手を取り合い、これからの日々を祝福するかのように微笑みあって。
    ひとしきり会話を楽しんで、外へ出ようとした時には正午を知らせるサイレンがネオンサインに響いていた。
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