人魚への質問:3.人魚と次兄の関係 50%(3/3) アオイは数秒頭を抱えた後、立ち直った。仕方がない。アオイは多様性を認めた。いくぶんか枠から外れた多様性だけれども、しのぶにはしっかりと生きる希望を持ってほしかった。呼吸器系が弱いから、成人を越せない体だと聞いたときは驚いたが(幼かったアオイは泣き喚いたらしい)最近、しのぶに生きる希望が湧いているのならそれに越したことはない。
ふと、脳裏に傷だらけの男が浮かぶ。
「あ」
「どうしました、アオイ」
ぱちりと何度かしのぶを見て、アオイは思い出したことを素直に告げた。
神崎のガレージがカナエのアトリエになっていること、そこには、たくさんのディップフラワーがあること、そこに、大きな翼が転がっていたこと、そして。
「傷だらけで、白髪の男性に会ったんです。輝利哉様は『サネミ』と呼んでいた方なのですが」
輝利哉がサネミと呼んだ存在の詳細を告げると、穏やかだった人魚の空気が張り詰めた。
「さっき僕が説明した通り、サネミさん……不死川さんは、冨岡さんの同僚です。彼は現在、裏山に生息していて……今日は、居ますね」
枯れた木々が、ざわめいてる。
「不死川に会うなら、おはぎを持っていくといい」
ムフフと得意げに笑った人魚が、不死川の好物はおはぎだ、と付け足した。普通のおはぎでいいのだろうか。確か材料はあったから、作ってみよう。
「不死川さんは、一週間ほどいるようです。それを過ぎると、どこに行ってしまうかわかりません」
しのぶからアドバイスをもらって、アオイはいったん自室へと引き上げた。