同じ時を刻んで桜が終わり、カラフルだった山は夏に向けて緑色を鮮やかにしていた。
猗窩座は大学生となり、充実した日々を送っていた。
だがいつも付き纏うのは
本当に自分は人として生きられているか、
目の前の幸せは、また、この手からすり抜けていくのではないかという不安だ。
そんな心の揺らめきをいつだって
大丈夫だと
自分がずっとそばにいると
言って抱きしめてくれるのは
「杏寿郎……」
前世で、鬼の自分が殺した、今世では高校で教師と生徒として出会った男だった。
ただ一緒にいて欲しかった。
二度と離れないように
死なないで、誰にも殺されないで、共にいたいと願った。
結局は……
自分が壊してしまうくせに。
「はぁ……」
猗窩座は大きくため息を吐く。
信じていないわけじゃない。
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