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    まつば

    @waka_kasumire
    成人済。kmt沼にいる古の夢女の壁打垢。アイコンは黒兎さん作。
    21年6月に🔥さん救済夢本が出ます。

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    まつば

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    ハニー🍯無限列車編の叩き上げ原稿です。
    見直しもしていない、本当に打ち込みしただけの状態です。
    列車に乗る前までになります

    ##夢小説

    御角朔乃(みつの さくの)に指令が届いたのは、夕飯の後片付けも終わって一休みついた時だった。殺風景な自室へと戻り、布団を敷いていた朔乃は窓を叩く音に顔を上げる。鎹鴉だ。これといった装飾品は付けておらず、誰の鎹鴉だろうかと思いながら窓を開ける。鎹鴉はすぐ側の文机に降り立つと、片足を差し出してきた。そこには文が括られており、朔乃は外してやる。鎹鴉の首元を撫でてから文を広げた。文面に目を通し、小さく呟く。
    「総隊長からの指令だ」
     隠密部隊から簡単な指令をもらうことはあれど、総隊長直々の文はヒトガタになって初めてもらった。
    『隠密部隊の人員不足により、御角朔乃に緊急招集をかける。炎柱・煉獄杏寿郎の任務に随行し援護しろ。出立は明朝。所定の場所によって隠の配置を確認したのち、東京駅から乗車せよ。詳細は以下通り――』
     任務内容は杏寿郎に届いた指令と同じだった。夜行列車で人が行方不明になる事件が続いており、数名の剣士を調査で送り込んだが消息不明。隠密の斥候も然り。柱直々に調査するので、炎柱と縁がある朔乃に白羽の矢が立った。
     内容を二度確認し、朔乃は息をはく。
    「呪術班に異動した私まで駆り出されるなんて、星読みが悪かったのかしら」
     指令書と一緒に呪術に用いる札の発注書も届けられた。その数を確認し、今度の鬼はそれなりの相手だと察する。
     札を書くために硯を用意し、墨を磨る。必要枚数を書き終えたのち、自分用にも数種類こさえた。
     羽を休めていた鎹鴉に発注書の返事を持たせて返してやる。そのまま杏寿郎の部屋へ足を運んだ。
    「杏寿郎さん、朔乃です」
     了承を待って襖を開ける。彼は文机に座っており、文を折りたたんでいた。封筒には『遺書』と綴られている。
    「どうした。風呂の順番か」
    「いえ……私も明日、任務に発つことになりました。呪術班の作戦に参加します」
     杏寿郎は短く「そうか」と返す。
    「差し出がましいとは思ったのですが、炎柱様に結界札をお渡ししようかと。私の筆なのでじゃじゃ馬な札ですが、その辺の術者より確かな札です」
     使いこなすにはコツが必要だが、発動ならさほど難しくはない。結界札なら胸ポケットに折り畳んで入れておくだけでも効力を発揮してくれる。
     朔乃の提案を杏寿郎は断った。
    「嬉しい申し出だが、気持ちだけもらっておく」
     こちらに身体の向きを変えた杏寿郎は、自身の胸元に手を当てた。
    「俺には綾女からもらったお守りがあるからな」
     そう言って嬉しそうに笑うものだから、朔乃は懐から札を出せなくなった。
    (意中の相手からの御守りですか。それは……敵いませんね)
     肌身離さず持っているのなら、御守りとしての効力は申し分ない。とんだ気を利かせてしまったと内心苦笑する。
     杏寿郎にあれほど優しい顔をさせる相手だ。朔乃のこさえたじゃじゃ馬札など役に立つはずもない。
    「いいえ。では、風呂の確認をしてきます。槇寿郎さんは上がったようですので」
     立ち上がる朔乃の背中に杏寿郎が声をかけた。
    「任務の度に声をかけてもらっているのに申し訳ない。威力を疑っているわけではない。呪術班は少数精鋭と聞く。ならば、君の作る札も確かなものだろう。ただ――」
     言葉を探す杏寿郎に、朔乃はふっと笑った。
    「不特定多数を想定した札より、一人を想う御守りの方が強いのは確かです。あらゆる災厄から守るようにと特別な想いが込められたものです。手放してはなりませんよ」
     杏寿郎は僅かに目を見開き、幼子のようにこくりと頷いた。
    「――ああ、絶対に離さん」
     朔乃は杏寿郎の部屋を後にし、風呂の順番を伺いに千寿郎を訪ねる。惚気に中てられたのか少し熱い。
    「人というのはいいですね。想い思われ……ヒトガタは一方的に叶えて散るだけですから」
     それさえも敵わなかった朔乃は、ヒトガタの中でも欠陥品だ。中途半端なまま生きている。
     千寿郎に確認したのち、杏寿郎に風呂の空きを伝えて自室へ戻る。懐にしまっていた札を文机に置いた。
    「私も一度でいいから貴方に想われてみたかった」
     零した言の葉は、あまりにも小さく、涙が流れる暇もなかった。


     朔乃は明朝、隠の装束で槇寿郎の部屋を訪ねた。起きている気配がしたので声をかけ、部屋に入る。槇寿郎は布団の中で書物を眺めていた。
    「朝早くに失礼します。隠密部隊総隊長より任が下りました。杏寿郎さんと同じ列車に乗ります」
     返答はない。朝からうるさいと酒瓶を投げられないだけマシである。
    「それでは、行って参ります」
     部屋を辞する時まで槇寿郎は何も言わず、ぴくりとも動かなかった。静かに玄関へ赴き草履を履く。忘れ物はないかと思い出していると、台所の方から千寿郎が駆けてきた。
    「朔乃さん!」
     声量は押さえている。
    「おはようございます千寿郎さん」
    「おはようございます……じゃなくて、朝食も食べずに発つのですか? てっきり兄上と同じ時刻かと」
    「隠として先回りしなければなりません。杏寿郎さんより出立は早くなります。仲間との合流先で食事をとるので心配は無用です。数日の間、煉獄家をお願いしますね」
     千寿郎の頭を撫で、結界札が入った風呂敷包みを抱えて屋敷を出る。
     合流先の藤の家紋を掲げる屋敷を訪ね、老婆に一室へ通してもらった。刀掛けには一振りの日輪刀が掛けてある。朔乃の愛刀だ。隠密部隊を去ってから日輪刀を使う機会がとんと減ったため、よく世話になるこちらの屋敷に装束と一緒に置かせてもらっていたのだ。
    「朔乃様はこちらで着替えたのち、奥座敷へ移動ください。膳もそちらへ運びましょう」
    「ありがとうございます」
     襖が静かに閉じ、朔乃は隠の装束を解いた。さらしで胸を潰し、紺色の忍装束を纏う。上衣は小袖を落としたもので、腕がむき出しになる。手甲を嵌めてハチワレ柄の猫面を被ると日輪刀を持って奥座敷へ移動した。
    「ハチワレ、只今参りました」
     声をかけてから中に入れば、竹林柄の羽織をまとった好々爺が上座に胡坐をかいて座っていた。好々爺の前には白い羽織を着た男性と、朔乃と同じ忍装束に身を包んだ隊士が数人座していた。
    「…………!」
     隊主会議のような圧に朔乃は一瞬たじろぐも、一呼吸で慣らした。好々爺は朔乃を見ると一層笑みを深める。
    「久しいのぅハチワレ、こっちへおいで」
     好々爺に手招かれた先は、彼の眼前――白い羽織を着た男性の向かいである。呪術班の下っ端がそんな上の方に座るわけにはいかないだろうと躊躇えば、白い羽織の男性から「いいから来なさい」と言われてしまう。仕方なくそこに座せば、刺すような視線を感じた。
     隊士の一人が口を開く。
    「芦屋(あしや)様」
     呼ばれた男性は目を伏したまま語らない。
    「芦屋様、何故このような下っ端を上座へ置くのです。お前も何故普通に座る。所属はどこだ」
    「呪術班です」
     間を置かずに答えれば、隊士は片眉を跳ね上げた。
    「呪術班だぁ?」
    「はい。所属は呪術班ですが、昨夜総隊長の文により、隠密へ招集命令が下りました。なんでも、人員不足だとか。私の受け取った文が間違いであれば直ちに帰ります。前線任務なんてしばらくこなしていませんので」
     腰を上げた朔乃に芦屋の嘆息が被る。
    「……はぁ、座りなさい。今回の任務はお前が行かねばなりません。呪術も使える隠密の隊長格でなければ消息不明で終わってしまう。ハチワレ、ここには零班しかいません。面を取りなさい。そして、当時の名乗りを」
     芦屋から好々爺に視線を移せば、こっくり頷かれた。上官命令ならば仕方がない。朔乃は猫面を外し、零班の隊士達に身体の向きを合わせる。
    「お初にお目もじ仕ります。第八班次席、水上朔乃(みなかみ さくの)です」
     朔乃に突っかかって来た隊士が青い顔になった。
    「水上……水上統括守(とうかつのかみ)の親族」
    「長兄です」
     ひぃぃ、と誰かが引きつった悲鳴を上げた。兄に嫌がらせでもされたことがあるのだろうか。
     芦屋が咳ばらいをし、部下を黙らせる。
    「朔乃は私と同席です。座る位置に異論はありませんね。隠密部隊も人が減り、異動した隊士まで駆り出さねば回らなくなりました」
     由々しき事態です、と芦屋が首を振った。
    「朔乃、最前線には出なくても構いません。炎柱の援護を。柱の支えである彼を失うわけにはいきません。何がなんでも生還させなさい」
     その命に代えても、と続けられた気がした。有事の際はヒトガタを発動して杏寿郎を生き永らえさせろと。
     朔乃は短く是と答えた。話が途切れた頃合いを見計り、朝食が運ばれてくる。続きは食後ということになり、朔乃は黙々と食べた。上座から視線を感じたので好々爺を見れば、デレデレとほほ笑まれる。
    「んんー、朔乃。お主美人になったのぅ。ほれ、もうちっとにこっとしてみよ」
     好々爺に笑みを見せられ、朔乃も口角を上げてみる。しかし及第点には至らなかった。
    「笑顔が固い。ちゃんと笑っておるのか?」
    「特に日常生活で笑顔は必要ないかと。美人と言われるほどの容姿でもありませんし」
     ガタン、と隣から茶碗を落とす音が聞こえた。どうしたのかと見れば、隊士が手元を滑らせたらしい。
    「も、申し訳ありません……お話の邪魔を」
     他の隊士達もどこかびくびくしながら食事をしている。部外者である朔乃が一緒なので食事が美味しくないのではと思い、ずずっと茶を飲んで食事を終える。
    「ご馳走様でした」
     膳を持って廊下に出れば、隣の隊士が自分の膳を持って追いかけてきた。
    「あの……ハチワレ様――朔乃様!」
     立ち止まり、彼を見やる。
    「今は呪術班の下っ端なので様付けは必要ありません。呼び捨てで結構です」
    「い、いえ……そういうわけには! 先ほどは失礼な態度を取りました! 申し訳ありません」
    「見ず知らずの人物が来たら疑うのは当然です。何も間違ってはいないので顔を上げてください」
     朔乃の言葉に隊士は顔を上げた。
    「あの、先程翁が言った言葉ですが」
    「美人とか?」
     隊士がこくこく頷く。
    「はい! オレも美人だと思います」
     ヒトガタ相手に美人ときたか。それでも少し嬉しく思う。ふんわり微笑めば、隊士が目を見開き、頬を真っ赤に染める。
    「ありがとうございます。煉獄家でそんな風に言われたことがないので……ふふっ、意外とこそばゆいものですね」
     あなたのお膳もついでに下げます、とぽかんとする隊士から受け取り、朔乃はスタスタと台所へ歩いて行った。


     食後は地図を広げての作戦会議が始まった。隠の指揮を執るのが隠密部隊、総隊長田中が率いる零班。隊長の田中は既に現地へ赴いており、第一班と協力して隊士を動かしているそうだ。
     朔乃は端の方で説明を聞きつつ、好々爺に時々茶を注いでいる。
     話し合いの内容は隠の配置から呪術班編成へと移った。芦屋は囲碁の白石を呪術班に見立てて地図上に二つずつ配置していく。
    「――という配置になります。意見はありますか」
     零班の部下達は何も言わない。元呪術班の芦屋が言うなら間違いないだろうという判断だ。芦屋はそれを由とせず、茶を注ぐ朔乃に話を振る。
    「朔乃、お前も何か出しなさい」
     好々爺の側を離れ、地図を覗き込む。
    「……石を動かしても?」
    「構いません」
     朔乃は白石を回収し、一つずつ駅と駅の中間地点に配置していった。数は全部で十。それが呪術班から絞り出した人数だ。
    「呪術班から借りられた人数は私を除いて十人と聞いています。間違いありませんか?」
     芦屋の頷きを確認し、話を続ける。
    「列車の夜間走行区間で、駅と駅の間に一人ずつ配置。トンネルは配置しようがないので除きます」
     朔乃の案に芦屋は難色を示した。
    「せめて二人一組では? 攻守に分けられます」
     かつて統轄守をしていた人物とは思えない発言に、朔乃は首を傾げる。
    「呪術班は少数精鋭で三十人程度しかいません。その中で柱が出向く重要任務に一人で術式展開も覚束ない雑魚は集めないでしょう?」
    「…………」
     ――おや。
     朔乃は目を瞬かせ、好々爺を見た。彼の顔から笑みが引っ込んでいる。
    「まさか、雑魚しか集められなかったんですか?」
     呪術班に在籍する術者はそれなりに強い。上官達と雲泥の差があれど、一人で攻守の術式を扱えない奴は半人前扱いされる。
     芦屋が指先でこめかみをもみほぐす。
    「朔乃、お前の所属する部署ですよ。もう少し言葉に注意なさい」
    「あんな胡散臭い部署、実力が伴っていなければ即刻取り潰しされてしまうんですよ。そのくらいこなせなくて何が術者ですか」
     言い切った朔乃に好々爺が笑う。
    「はっはっは! 芦屋、お主の人脈の悪さもここまでくると笑うしかないのぅ。朔乃に本当のことを言わんと全力を出してもらえんぞ?」
    「翁! ……はぁ、分かりました。ちゃんと言います。二人で一人前しか貸してもらえませんでした。統括守曰く『修行には持ってこいだ。根性を叩き直せ』だそうです。私だってもう少し使える人材が欲しかったんです。でも袖を振られたので札を増やし、貴女を呼んだんです。ええ、第八班主席にも、呪術班にも内緒ですよ! 煉獄家で知っているのは槇寿郎殿だけです。でも、お館様と翁の許可はいただきました」
     だんだんと投げやりに叫んだ芦屋に言葉もない。溜らず部下が声をかける。
    「……あの、芦屋様。それはさすがにまずいのでは?」
    「朔乃様の兄上方が知らないのは……その、あとが恐ろしいのでは? 呪術班の主戦力ですよ」
     ぐぬぬ、と唸る芦屋がかわいそうになり、朔乃は二度手を叩いて注意を引き付ける。
    「はい。そこまで。要は私が生きて戻れば一月の物忌み程度で済むでしょう。半人前ならば致し方ありません。今回頑張って一人前になってもらいます。今からヒトガタを作るので、対応しきれない場所に配置してください。鬼気を感知すれば勝手に展開する術式を組みます。話し合いを続けてください」
     朔乃は硯と和紙を借りてくると、文机の前に座して深呼吸をする。自分の息遣いだけ聞こえるように結界を張り、作業を始める。墨を磨る前に小指を小刀で傷付け、血を垂らした。隊士達が興味深そうに眺めている。
     芦屋が説明役を買って出た。
    「術者の血液を混ぜると使役する難易度は跳ね上がりますが効力は抜群です。……ん? 朔乃、お前まだ男を知らないのですか?」
    「…………」
     ヒトガタ作りに集中しているので朔乃には芦屋の声が届かない。隊士が芦屋に質問する。
    「あの、生娘だと何か不都合が?」
    「逆です。穢れなき身体の巫女の血を混ぜるのですからその辺の札より強力です。雑魚鬼なら『えいっ!』と掲げるだけで一発です」
     芦屋は声を落とした。悲痛そうに眉根を寄せる。
    「……煉獄家に入って十年ですよ。ヒトガタをただ生かしてきたのですか。なんと惨いことを」
     好々爺は自分で茶を淹れて湯呑みを煽る。
    「ヒトガタとして死ぬこともままならず、愛されず人にも戻れず……水上家の二人が聞いたらどんな顔するかのぅ。呪詛をけしかけそうでおっかないわ。内緒で借りてきてよかったのぅ芦屋」
    「一月の物忌みは覚悟しましょう。ええ、間違いなく物忌みです絶対外には出ません。家に結界張って閉じこもります。お前達も覚悟なさい。呪術班統轄守の水上六連と副官の水上暁生は恐ろしく強い術者です。ヒトガタ作りが終わったら朔乃に御札を書いてもらいなさい。いいですね」
     上官の鬼気迫る顔に部下達は赤べこのように首をこくりこくりと振ったのだった。
     ヒトガタを書き終え、方々へ飛ばした朔乃は何故か御札を頼まれて人数分書いてやる。ついでに芦屋と好々爺にも渡した。なんでも魔除けにするらしい。
     配置の話し合いも終わったので、出立しようとした朔乃を芦屋が呼び止めた。
    「朔乃、これを」
     渡されたのは羽織と札だった。
    「札は猫面の裏側に貼りなさい。声を変えるまじないがかけてあります。列車に乗ったら炎柱様とも接触するでしょう。男言葉を意識しなさい」
    「はい」
     ハチワレ柄の猫面を裏返し、口元に札を貼ればすぅっと吸い込まれるように消えてしまった。その代わりに紋様が内側に浮かび上がる。術式が発動したのだ。
     一緒に渡された羽織は透明感ある緑の生地に竹の紋様があしらわれていた。
    「鬼が出現するまでしっかり着込んでいなさい。隠形するのも忘れずに」
    「芦屋様。そんなに心配ですか?」
    「私の物忌みの酷さがかかっています。いいですか、腕の一本ももがれてはなりません。私の腕が飛びます」
     善処します、と話を切り上げ、羽織を着ると尻まで隠れる丁度いい長さだった。帯でしっかり縛って忍び装束を隠す。猫面を被って好々爺にも挨拶した。
    「では翁、行って参ります」
     口から発した音は、中性的な声となって零れ落ちる。これならば杏寿郎に朔乃だと気付かれまい。
     屋敷の老婆に見送られ、朔乃は一人東京駅を目指した。
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    MAIKINGハニー🍯無限列車編の叩き上げ原稿です。
    見直しもしていない、本当に打ち込みしただけの状態です。
    列車に乗る前までになります
    御角朔乃(みつの さくの)に指令が届いたのは、夕飯の後片付けも終わって一休みついた時だった。殺風景な自室へと戻り、布団を敷いていた朔乃は窓を叩く音に顔を上げる。鎹鴉だ。これといった装飾品は付けておらず、誰の鎹鴉だろうかと思いながら窓を開ける。鎹鴉はすぐ側の文机に降り立つと、片足を差し出してきた。そこには文が括られており、朔乃は外してやる。鎹鴉の首元を撫でてから文を広げた。文面に目を通し、小さく呟く。
    「総隊長からの指令だ」
     隠密部隊から簡単な指令をもらうことはあれど、総隊長直々の文はヒトガタになって初めてもらった。
    『隠密部隊の人員不足により、御角朔乃に緊急招集をかける。炎柱・煉獄杏寿郎の任務に随行し援護しろ。出立は明朝。所定の場所によって隠の配置を確認したのち、東京駅から乗車せよ。詳細は以下通り――』
     任務内容は杏寿郎に届いた指令と同じだった。夜行列車で人が行方不明になる事件が続いており、数名の剣士を調査で送り込んだが消息不明。隠密の斥候も然り。柱直々に調査するので、炎柱と縁がある朔乃に白羽の矢が立った。
     内容を二度確認し、朔乃は息をはく。
    「呪術班に異動した私まで駆り出される 6932

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