幼少期、カグラギと会う話「どうしたんですか?」
コーカサスカブト城に連れてこられたカグラギは背後から声を掛けられた。振り向けば、大人しそうな少女がカグラギを見ている。
「迷ってしまって」
「……ディボウスキの方、ですか?」
「ええ。母に連れられて」
「なら、次期国王様ですね」
服装から判断したのか。カグラギはトウフの民だ。服装を見ればシュゴッダムの人間ではないことは直ぐに分かる。トウフ国は女王が収めている。
一つ一つ、少女は情報を判断していた。
少女はコーカサスオオカブト城には似つかわしくないふわりとした雰囲気をしていた。
「将来はそうなりますな」
「謁見室はこちらです。女王様はそちらにいるかと」
カグラギを案内してくれるらしい。
「この城は大きい」
「慣れないと、迷っちゃいますよね」
慣れるぐらいにはこの城にいるということか。
少女は眠そうに欠伸を一つしている。
歩調はゆっくりだ。
「貴方は」
「自己紹介が遅れました。私は」
「ここにいたのか」
「ラクレス様」
カグラギは少女の名を聴こうとした。少女が名乗ろうとすると別の声がする。少女は現れた少年のことをラクレスと呼んだ。
ラクレス・ハスティー。シュゴッダムの次期国王だ。
「来ていると聞いていたが、カグラギと一緒だったのだな」
「迷ったようだったので。謁見室まで」
「父上たちは地下だ」
「地下でしたか? なら、駄目ですね。入るなとは言われていますから」
少女の言葉をラクレスは拾い上げ、話していく。
「庭にいると想っていたのに」
「デミシュゴッド達が、宝物を囲んでいたんです」
デミシュゴッドは人々の生活を助けてくれることもある昆虫機械生命体だ。
「父たちが帰ってくるまで時間がある。お茶にしよう。お前も一緒に」
「私も?」
「食べておいて、休んでおくんだ」
言い聞かせるようにラクレスが話す。はい、と少女が頷く。
(彼女は)
誰なのだろうとなる。ラクレスが気にかけている少女にカグラギは興味を持った。