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    出汁晶

    SSにもなってないネタをつらつら(予定)

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    出汁晶

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    とうらぶ×鬼滅

    #刀剣乱舞
    Touken Ranbu
    #鬼滅
    DemonSlayer

    「───お目覚めですか」
    凛とした声に、目を開けた悲鳴嶼はぼんやりと頷いた。笑う気配がして、ゆっくりと身体を起こす。声が慌てて近付いてきた。
    「まだ寝ていてください、半日目覚めなかったんですから・・・!」
    半日目覚めなかった?悲鳴嶼は痛む頭を抑えて記憶を辿った。しかし眠る前の記憶は曖昧だ。
    「お、起きたか」
    「薬研兄さん」
    「主が会いたいって言ってるんだが、呼んでも大丈夫か」
    自分への問いかけに、悲鳴嶼は誰かは知らぬが主と呼ばれる人間であるなら自分が行くのが筋だろうと立ち上がる。
    「出向こう。案内を頼めるか」
    「いや、主は無理はさせるなと・・・」
    「平気だ。動ける」
    子供の戸惑う気配を感じつつも、悲鳴嶼は譲らなかった。これ以上無様な姿を見せる訳にはいかなかった。どこで気を失ったのか覚えていない上に、布団に寝かされていたと云う事は誰かが悲鳴嶼の人並外れた巨体を運んだと云う事だ。既に多大な迷惑をかけたと眉を下げる。
    「・・・まぁ、平気ならいいか。じゃあ俺っちに着いてきてくれ」
    頭気をつけろよと言われて、悲鳴嶼は腰を屈めて縁を避けた。感覚の鋭敏な彼は、敷地全体から感じる不思議な気配や力に戸惑っていた。前と後ろに着いて歩く二人もそうだ。気配が人間のものではない。
    「(───鬼に捕らわれたやもしれぬ)」
    悲鳴嶼はぐっと拳を握る。鬼と戦うには日輪刀が要る。それなのに、今彼は丸腰だ。鬼は基本群れぬが、幾つも同じような気配を感じる。
    主の元に着いて、さぁいただきますと襲われたらどうすべきか。思案する悲鳴嶼の前で、足音が止まった。
    「主、例の御仁を連れて来たんだが、入っていいか」
    「えっ、勿論良いよ。どうぞ」
    部屋の中から聞こえたのは、女の声だった。障子の開く音がして、身構えた悲鳴嶼を迎えたのは穏やかな人間の気配だった。主は人間だったのかと驚いて、悲鳴嶼は見えぬ眼を女に向けた。
    「わざわざ来てもらって悪いね、どうぞ座って。ここの主です」
    「・・・悲鳴じ」
    「あーストップ」
    名乗りを止められて、悲鳴嶼は瞬く。すとっぷの意味は分からなかったが、恐らく待ての意だろうと口を閉じた。
    「ごめんね。ここでは名前は名乗らない決まりにしてるんだ。私の事も審神者と呼んでほしい」
    「・・・神職者なのか」
    「まぁそんなとこ」
    悲鳴嶼は困ってしまった。彼は二つ名など持ち合わせていない。せめて岩柱と名乗るべきだろうか。
    察した審神者は、からりと笑った。
    「さっき「ひめ」って聞こえたから、良かったらひめと呼んでもいいかな」
    「・・・こんな図体の男に、ひめなどと似合わないだろう」
    「そう?」
    気にした様子の無い声に、悲鳴嶼は観念した。
    「・・・致し方ない。そう呼んでくれ」
    「うん。じゃあひめ、ここの説明をしてもいいかな」
    「宜しく頼む」
    「よし、こんのすけ。画面を出してくれ」
    元気な返事と共に、ぽんと軽い音がして四つ足の生き物の足音がした。ご覧下さいませ!と言われて、悲鳴嶼は眉を下げる。
    「・・・すまない。私は盲の身で、見る事が出来ない」
    瞬いた審神者が、宙に映し出された画面から悲鳴嶼へと目を向けた。
    「なんと。それはすまなんだ、口頭で説明させてもらおう。こんのすけも悪かったね、厨で油揚を貰っておいで。光忠が居る筈だから」
    「はぐー!いただきます!」
    とてとて足音が遠ざかって行く。審神者は悲鳴嶼の大きな手を取り、その掌に控えていた少年の手を乗せた。
    「まず、この子らは人ではないんだが、何か感じるかな」
    「・・・気配は確かに人間ではない。だが触れて感じるものは人間のそれだ」
    「うん。何だと思う?」
    悲鳴嶼は言うか悩み、結局答えた。
    「・・・鬼、」
    「おや」
    「・・・だと思ったのだが、別の力を感じる。私の知らぬものだ」
    触れてぞわりと寒気のするものでは無い。それどころか、どこか暖かく力強いもの。それらを感じ取れても、悲鳴嶼は名を知らなかった。審神者の安堵の息で空気が揺れた。
    「ふふ、少し焦ってしまったよ。・・・前田」
    「はい。・・・藤四郎が一振、前田藤四郎と申します。神籍の末端、刀の付喪神です」
    「・・・付喪神」
    前田と名乗った彼は頷き、腰に差していた自分の本体を悲鳴嶼の手に乗せた。肉厚の指に柔く握られ、少しだけ擽ったそうに笑う。
    「それで人と違う気配がするのか。・・・いえ、するのですか」
    「どうかそのままで。我ら刀剣男士、人の身を与えてくださった主にお仕えする身です。人無くして我らは生まれません」
    本来の形の刀を握らなくなって久しいが、悲鳴嶼の手にある刀は彼の触れた事のある物よりも小さかった。
    「刀に詳しくないのだが・・・短刀か」
    「はい。なので、子供の身体で顕現しています」
    「俺っちのも触るかい」
    もう一人の子供の声に、悲鳴嶼は頷いた。両手に短刀を握って、成程子供の身体から感じる気配と同じだと納得する。
    「薬研藤四郎。前田と同じ刀匠の刀だ」
    「・・・有難う」
    悲鳴嶼がそれぞれに刀を返すのを眺めていた審神者が、驚かないんだなと言った。
    「私は元々、人より変化した鬼と戦う事を生業としていた。奴らは妙な術を使う。今更これ位では驚かない」
    「ふぅん、心強いね。ちなみに、ひめが生きている年号は何だ?」
    「大正だ」
    「大正・・・300年ばかり前かな」
    「!?」
    ぎょっと目を開いた悲鳴嶼に、審神者がにやりと笑う。
    「流石にこれは驚いたか。今は西暦2200年を少しばかり越えている。大正時代からざっとそれ位は経ってるよ」
    「・・・・・・」
    悲鳴嶼の背中を冷や汗が伝った。
    何故。血気術か。我らと言っていたが、他にも付喪神が居るのか。ならば神の集うここはどこだ。
    必死に状況を把握しようと脳をフル稼働させている彼を見て、審神者はぽんと肩を叩いた。
    「戸惑うのも無理無いよね。順に説明するよ。・・・ここは私の本丸。歴史改変を目論む遡行軍と戦ってくれる付喪神を私が顕現させて、ここで皆で生活している」
    「歴史改変・・・」
    聞き慣れぬ言葉に、悲鳴嶼は眉を寄せた。良いものとは思えない。
    「敵の正体も詳しくは分からないんだけどね。奴らは過去の大きな事件や出来事を変えようと時代を越えてくる。私はその敵を倒して過去をありのまま守る為、付喪神達を過去に送る。彼らは歴史を、これまでのそしてこれからの人間達を守ってくれている」
    「・・・・・・」
    「ごめん、一気に話し過ぎたかな」
    「・・・いや・・・」
    悲鳴嶼はかぶりを振ったが、審神者は顎に手を当てて声を軽くした。
    「まぁ、とりあえずひめがこの時代の人間でない事は確かだし、元の時代に帰れるよう尽力するよ。それまではここに居ればいい」
    「・・・すまない。恩に着る」
    深く頭を下げた悲鳴嶼に、審神者は片手を振る。
    「いやいや、これも歴史を変えない為だからね。気にしないで。とりあえず今日は歓迎会しよ!」
    「おっ、いいねぇ。旦那、酒はいける口かい?一献交わそうや」
    「・・・!?」
    くいっと杯を傾ける動作をした薬研へ向けられた戸惑いの視線に、皆笑った。
    「刀剣男士は見た目と実年齢に差があるからね。皆本体の刀は何百年と生きてるから」
    「・・・覚えておく・・・」
    はは、と笑った審神者は外へと目を向ける。本丸で審神者以外の人間は珍しい為、そわそわと気にしている気配が幾つも悲鳴嶼の背に刺さっていた。
    「蜻蛉と岩融は外かな?運んでくれた二振りだ、顔を見せてやってくれ」
    「ああ、礼を言いたい。さぞ重かっただろう・・・」
    「ひめ大きいもんね。うちでもそんなに大きい男士は居ないよ」
    まるで闘神の化身だねと言った審神者に、曖昧に悲鳴嶼は笑った。
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    出汁晶

    MEMO粛清の何年も後で。玄弥目線。「良かったら、一つ花を貰えないだろうか」
    世話している盆栽に花がついたと話をすると、悲鳴嶼さんはそう言った。そんな事をこの人が言うのは珍しくて了承して、剪定して花を一つ大きな手に乗せた。
    「有難う」
    飾るんだろうか、見えないから香りを楽しむんだろうかと思っていると、悲鳴嶼さんは庭の隅にぽつんとある墓の元へと歩いて行った。小さな土山の上に渡した花を置いて、手を合わせる。
    「・・・ずっと気になってたんですけど、そこ、誰が居るんですか」
    隊の共同墓地ではなくわざわざ自分の屋敷の庭に墓を作るなんて、余程大切にしていた隊士だったんだろう。もしや恋人だろうか。
    答えは無いかもと思いながら聞いたけど、悲鳴嶼さんは答えた。
    「・・・お前の先輩だ」
    「先輩・・・」
    咄嗟に頭を過ぎったのは、「またあの人が弟子をとるなんてな」と言った音柱の姿だ。また、と云う事は、俺の前に誰が居たんだろう、悲鳴嶼さんの弟子が。
    何故今居ないのかは、誰も教えてくれなかった。でもこの組織に居れば、いつ誰が死んだっておかしくない。
    俺は悲鳴嶼さんの横に並んで、一緒に手を合わせた。あんたもこの人の無茶苦茶な指導に振り回されたんですか 680

    出汁晶

    MEMO悲鳴嶼師範の粛清。夢のような夢ではないような。推しに殺されたい。「師範」
    部屋から出てきた悲鳴嶼師範が玄関に向かうから、外に行くならお供しようと立ち上がる。途端、「来るな」と低い低い声で制された。
    「任務のお邪魔はしません。いつものようにお供させてください」
    「任務ではない。伴はいらない」
    「でも、」
    「いいから来るな」
    「・・・はい」
    師範は頑固な人だ。自分がお願いしても、駄目な時は絶対駄目だ。
    「今日は帰らない。いつも通り鍛錬を」
    「・・・はい。お気をつけて」
    任務ではないと言ったその通り、師範はいつもの日輪刀を持ってはいなかった。代わりに手にあるのは、見慣れない普通の刀。色からして日輪刀ではあるのだろう。
    「行ってらっしゃい・・・」
    師範はあの日どころか翌日も帰らなかった。泣き腫らした瞼を閉じて滝に打たれているのを見つけた時、心配したんですよと自分は怒ったんだ。

    そんな事を今、思い出した。

    「・・・・・・お前には、使いたくなかった」
    師範は泣きながら、庭に正座する自分の前であの刀を鞘から抜いた。
    任務先で邂逅した鬼は、自分の妹だった。殺さないでと頼んだ。一緒に逃げようと手を握った。師範はあの子をいとも容易く葬り去った。自分の目の前で。
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