私のお兄ちゃん「利吉くん、お疲れさま」
コンサートホールのホワイエにいる観客がまばらになった頃合いを見計らって半助は利吉に声をかけた。
「お疲れさまです、半助さん。ご来場ありがとうございます」
「コンサート、誘ってくれてありがとう。相変わらずすごい数の差し入れだね……」
「ええ。まあ……」
沢山の紙袋や花束を手にしながら利吉は苦笑した。整った顔立ちもあってか利吉は同じ音楽大学の学生は勿論、学外にもファンがいるから演奏会に出るとなると毎回沢山の差し入れをもらう。
「ごめんね。仕事終わりに急いで駆けつけたから差し入れ用意できなくて」
「いえ。来てくださっただけでもありがたいですからお気遣いなく。……半助さん。今日の演奏、どうでしたか?」
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