奇妙な時間それは夜中の出来事だった。
街での仕事を済ませて潜伏場所へ帰る途中、路地で複数人に囲まれた。
そんな事は慣れている。だから刀を抜こうと手をかけるも、体が痺れて上手く動かせない。
思い当たる節を辿る。
……最初に出てきたあの酒か
仕事をする時の食事には基本口にしないが、付き合い故に酒の最初の一口だけは口にする。勿論臭いは嗅いだものの、今日のは無味無臭だった。
「チッ」
痺れる体に鞭を打って敵からの攻撃を避ける。刀が抜けないなら逃げるしかない。そう思って路地を出て走る。
しかし痺れのせいで足がもたついてしまい、転んだ。振ってきた一太刀を転がって避けるも、相手は複数人。そいつら全員が俺に一斉に刀を向けてきたら終わりだ。案の定目の前に切っ先が広がり、俺は目を瞑った。
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