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    銀ちゃん誕生日おめでとう〜!
    まだ全然序盤で書きかけですがせっかくなので上げます!続きはゆっくり、10月中には上げたいな...
    高銀ですが、うっすら土→銀要素ありです

    #高銀
    highSilver

    『恋に焦がれて鳴く蝉よりも鳴かぬ蛍が身を焦がす』異常気象と騒がれているがこのところ急激に気温が下がり、むしろ例年よりも早く衣替えを始めた木々に囲まれてその小さな家は静かに佇んでいた。
    「あ痛てっ!」
    と思えばそんな悲鳴が聞こえてくる。
    Amazonesで購入した箒を伸ばし瓦葺き屋根から雨樋に積もった赤や黄の葉をはたき落としていた際、小石が銀時の頭を直撃したのだ。次いでぶつぶつと悪態が続く。普段であればこんなところまで丁寧に掃除などしないが今日はそうでもしていなければ落ち着かなかった。
    十月十日。十五夜に共に月を見る約束をした男はいまだ帰っては来ない。
    「別にいいけどね〜一々献立に気ぃ遣わなくて済むし。用意しといた圓七の月見饅頭、俺が全部食っちまうもんね」
    どっちにしたっててめぇが全部平らげるだろ、饅頭みてぇに肥えてもしらねぇぞ。そんなツッコミが入りそうなことまで勝手に想像してしまって非常に面白くなかった。
    「...早く帰って来ねぇと本当に全部食っちまうからな」
    誕生日には必ず戻る。そう表示されたままのスマホを縁側の脇に投げ置き、銀時は毎夜段々満ちてそして欠けていく月を眺め饅頭を頬張った。
    さて、とうとうその日を迎えても門扉をくぐるあの派手な着物の切れ端すら目にすることもなければ、あの無駄に腰にくる低い声で名を呼ばれることもなかったので何食わぬ顔でいつも通り三度寝をキメる。
    「飯は...これでいいか」
    正午前にやっと観念して行動を開始したが、意識して時計を見ることを避けていたので本当に正午前かもわからない。丼に盛った温かい飯に醬油と酒で漬け込んだ鯛の刺身を乗せその上からあら出汁をかけて刻みネギや大葉、刻み海苔などの薬味を散らす。あとは適当に卓袱台に並んだご近所さんからもらった惣菜をつまんで朝昼飯を摂りながら結野アナのにこにこ顔を眺めても心が晴れることはなかった。
    迎えに...いやいや!ないない!何処にいるのかも分からねぇし帰って来るかも分からねぇのに...新八のとこにでも行こうかなでもこの前...
    『今日も依頼がびっしり入っていて忙しいんですから!リア充の管巻きに付き合っている暇はないんです!』
    眼鏡の奥を怒らせたなかなかの迫力でそう言われ、後で神楽に今月に入って目当ての娘に十回振られたらしいというどこかで聞いたことがあるような話を聞かされた。しかし、新社長に席を譲った頃突然現れた高杉にあれよあれよと江戸から十数里の小さな田舎街にあるこの家に連れ込まれ今に至るわけだが、自分がやっていた頃よりも遥かに儲かっているのは事実のようで面白くない。
    「二号店は閑古鳥が鳴いてるってのによ」
    平和そのもの、長閑そのもののご老人が多いこの街でたまに買い物代行や掃除の依頼を受けながら慎ましく暮らしているわけだったが今日も今日とて仕事はなく、家事以外は暇を持て余している。やはり江戸に出て土方か長谷川さんあたりでもからかって飲みに連れて行ってもらおうか...あ、でもこの前...
    『いいのかよ。野郎にバレたら...』
    『大丈夫だって〜どうせ向こうで好きにやってんだから俺だってこのくらい好きにさせてもらうっての!』
    いつ帰って来るかも分からない男をただ待つのに飽きて銀時は江戸に顔を出すと巡回終わりの土方とついでに暗い顔で徘徊していた長谷川を捕まえて久しぶりの安酒に上機嫌になっていた。
    『くそ〜...英雄から結局タクシードライバーに転職したってのに...ハツの奴、いい年こいてそんな恥ずかしいことしてた野郎とは会いたくないって...調子こいて英雄なんかやらなけりゃあよかった...』
    徳利ごと一気に煽って突っ伏し、さめざめと泣く長谷川を銀時は慰めてやる。
    『わかるよ〜長谷川さん。奢ってやるから元気だしなって、土方くんが。』
    『何勝手なこと抜かしてんだ!』
    『あ、だし巻き要らないの?もーらい』
    話を聞かない相変わらずの傍若無人に土方の米神に薄く筋が浮かんだが久方ぶりに会った銀時が変わらずいつも通りに見えたので不本意ながら安堵してしまう。
    『大体俺が奢んなくても十分稼いでるだろうが...てめぇのツレは。』
    それ故についぶっきらぼうに聞けば上回るような低い調子で返してくるので少し驚く。
    『...知らねぇよ。どこで何してんのかもよく分からねぇし。俺に管理させると際限なく使っちまうから生活費しか渡さねぇとよ』
    不満そのものの表情であるのに、紅くなった鼻の頭を頬杖で隠しそっぽを向く銀時に土方は思わずどきりとする。若干潤んでいた瞳は酒のせいだと思いたかった。
    『新政府に協力してるっつーから見逃してはいるがな...もしまた騒ぎを起こそうってんなら例えてめぇがどう思おうが俺は奴を斬るからな。』
    静かにそう言っても銀時は猪口を煽り答えなかった。
    『いや〜まさか長谷川さんに奢ってもらう日が来るとはね〜』
    『銀さんには事あるごとに就職先をめちゃくちゃにされたり色々世話になったからね。やっと恩が返せて嬉しいよ〜』
    『や〜俺も甲斐があったってもんだわ』
    少々いかれた会話にツッコミは入れず放置して自分の分を渡し支払いを長谷川に任せた土方は、足元が覚束ない銀時に肩を貸して先に店を後にした。
    『おいこら、しっかり歩け!』
    『ん〜土方くん強引〜...』
    うにゃうにゃ言う銀時に辟易しながらもほろ酔い加減でなかなかによい気分ではあった。夜風が程よく冷たくて赤らんだ頬に心地よい。が、すぐに冷水を浴びたようになってしまった。
    『腕なんざ組んで随分楽しそうじゃねぇか』
    既に何度か斬り殺されたような殺気の中、土方にしな垂れかかっていた銀時は目の前の男を見てだらしなく笑う。
    『あ〜高杉だあ〜』
    『お楽しみだったみてぇだな銀時ィ...人が新政府にこき使われている間に真選組副長ともあろうもんが人のものに手ぇ出すとはなァ...』
    いいご身分だと口元で三日月のような弧を描き笑みを浮かべる高杉の瞳は怒気に満ちていた。
    『は?何言ってやがんだ!俺はただ飲んでいただけで...』
    今にも抜刀しそうな勢いで睨む高杉に土方は重苦しいびりびりとした久方ぶりの感覚を肌に覚えた。思わず鯉口を切るが、そこに店から出て来た長谷川も現れてさらにややこしい事態になってしまった。
    『あれ?何してんの?えーと、あんたは...』
    『ほら!このおっさんも一緒だろ?な?』
    『なるほど3Pか』
    『んな面してどうやったらそういう発想になるんだてめぇ!』
    呑気にやって来た長谷川を突き出して土方が弁明しても血走った眼で静かにそう言うので瞳孔の開いた瞳でキレる。すると、大人しくしていた銀時が猫のように目を擦り爆弾を投下するのであった。
    『えへ〜長谷川さん♡またのましてね?』
    そう言いながら無邪気に長谷川に擦り寄る銀時の姿に高杉はくわっと凝視して言った。
    『長谷川...そうかあんたか。銀時が色々世話になったらしいなァ...犬小屋に住んでくれてやるほどによォ。なかなかいい趣味した格好も好みとか』
    今度着てみせてくれよと恐ろしい笑みを浮かべる男に長谷川は真っ青な顔に滝汗をかいて思い出す。長らく離れていた銀時のツレは原作でのあれやこれやを完全に把握していて、しかも一応放置している自分の部下のコスプレはともかく、長谷川のことを見逃す気はないらしかった。
    『で、何をのませてもらったんだ銀時。そいつは俺のよりよかったってのか』
    『待て待て!!ご、誤解だって!あれは事故...いやいや!なかったことにして...違う!ほんと何もなかったんだって...な!銀さん!』
    『ってか、なんで下に変換するんだ!てめぇそんなキャラだったか?』
    ターゲットが自分から移ったとはいえ、仕事柄一応一般人である長谷川を庇おうと土方が前に出ようとする。が、驚く間もなく先に銀時が高杉の前に立ち塞がった。
    『長谷川さん虐めてんじゃねぇよ高杉。てめぇがぜーんぜん帰って来ねぇのが悪いんだろ』
    つまらなそうに顔を歪ませ言い放つ銀時の瞳は先ほど土方が目にした時よりもずっと潤んでいた。
    『来い!』
    高杉はその姿に密かに息を呑んだが、すぐに唇を噛み銀時の腕を乱暴に掴んだ。
    『っ痛ぇ!っにすんだ俺はまだ飲むんだよ!』
    『いいから大人しく来い!』
    仲裁に入るべきか決めあぐねている間に恐らく鬼兵隊の車だろう、黒塗りの高級車が野次馬を掻き分けて横付けした後部座席に銀時は悪態をつくのも虚しく押し込められた。
    『てめぇはいつもそうだ!なんでそう勝手...んむ...んんン...』
    『黙ってろ。おい、さっさと出せ』
    艶めく牛革の広い後部座席に自分よりもデカい図体をなんなく放り投げた高杉はうるさく喚き起き上がろうとする体にのし掛かり片手で頬を掴んで口を塞ぐ。
    『おい』
    繰り出される拳を避け腕をメリメリと音が出るほどに掴んで捻っては暴れ強烈に蹴り上げようとする脚を交差した太腿で座席側面に挟み体重をかけマットの上で思いっきり足を踏む。
    銀時の鈍い悲鳴が漏れるのを聞きながら連れ合い同士の戯れ合いにしては不穏すぎる攻防を呆気に取られ見ていることしかできなかった土方と長谷川に窓を開けさせた高杉は獲物から目を逸らさないまま声を掛けた。
    『この馬鹿が飲み食いした代金は後で届けさせる』
    そう言い残すと車は嵐のように走り去っていったのだった。
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