美大生なアッシュとそのモデルのフェリクスパロ初めて見たのは学校のデッサンの課題のときだった。
中央の台に乗り、一糸纏わぬ姿で彼はそこに立っていた。濃紺の髪はまとめあげられた。
蝉の鳴き声がよく聞こえた、夏の暑い日だったというのに中央に立つ彼は涼しい顔をしていたのをよく覚えている。
彼を被写体として観察して、端正な顔立ちには似合わぬ、鍛えられた肉体。よく鍛錬されているだろうに、白い肌。
その質感を想像しながら描いていく。
真っ直ぐに見つめるその瞳。
じっと眺めているとどんどんと吸い込まれそうになった。
気づけば時間を忘れて作品作りに没頭してて気づけば終わりの時間を迎えていた。
朝焼けにも夕焼けにも思えるあの瞳。どこどこまでも強い眼差し。
惹かれていた。一目惚れした、と言っていいだろう。
それは、ずっと僕の胸の中で燻っていてやがて弾けてしまった。
◇
「僕のモデルになってくれませんか?」
あの人だと見つけたときに、衝動は押さえることはできなかった。腕を取って突然の申し出に彼はひどく怪訝そうな顔をした。
当たり前だろう。見も知らぬ男にこんな言葉をかけられたのだ。慌てて自分は美大生だと説明する。
あなたを描きたいのだと。
ふむ、と考え込む彼は「いくらだ?」と僕に尋ねた。
※ここから以下AIです。
提示された金額を見て眉根を寄せ、「これではとても描かせられない」と言った。もっとたくさん用意してあげるよと食い下がれば、更に険しい表情になる。じゃぁ君は絵を描くたびに小遣い稼ぎをしているのか?と言われてしまい僕は口を紡ぐしかなかった。確かにそうだという自覚はあった。でも絵のためならこれくらいどうってことないと思ったんだけれど…………。結局交渉の結果、「月に1回だけ」「2時間で5000円」という条件で決まった。やった! 嬉しい!とそのときは心の底から喜んだ。だって、月1回なんてすごく贅沢だもの。それだけしか彼に会えないのだから。
そうやって始まった彼のお仕事。モデルは大抵同じ大学の女の子らしいのだが、僕は彼が来るまで知らなかったし興味もなかった。彼以外には欲しくなかった。彼は僕の作品を完成させてくれる素敵な存在なのだから。最初の一回きりで終わると思っていたこの関係が続いたままもうすぐ3ヶ月経ってしまったことに少し驚いた。しかも、彼と過ごす時間はほんの数秒とかじゃないのだ。今日のように、長い時間をかけてデッサンをしたり服を着せたり脱がせたりポーズを変えたりする。そういうこともする。彼の体に余すことなく触れて、隅々までも描き残したいと思うからだ。そんなことを思う人間はこの世に自分しかいないんじゃないかとも思ったりする。