星降る至福のティータイム「これ、可愛いからあげるね」
「えっ」
いつものお返しにと星から1つのティーカップをもらったアベンチュリン。大喜びな彼だが、初めは使わずにいた。初めての星からのプレゼント。使って汚すなどあってはならない。
だが………。
「君のティーカップかい? もったいなくって使ってないよ。毎日眺めているさ」
「えっ、使ってないの………あのデザイン気に入らなかった?」
「いやそんなことはないよ。むしろ気に入っているさ」
星が贈ってくれたものは全て好きだ。たとえ、ゴミ箱を送ってくれても気に入る自信はある。
「じゃあ、なんで使ってくれないの………?」
「だって、君からのプレゼントだよ? 汚すなんてことできないよ」
「私、アベンチュリンに使ってほしくってプレゼントしたの………そのできれば……だから、使ってほしい。いやだったら全然捨ててもらっていいけれど………」
「す、捨てるなんてできるわけないだろう!?」
「じゃあ……使ってほしい」
星は少し照れくさそうにお願いをしてくる。ゴミ箱以外のことで自分の思いを教えてくれる彼女なんて珍しい。
「————」
その瞬間、アベンチュリンは己の間違いに気づいた。
彼女のお願いから察したアベンチュリンは己の行いを即座に反省。好きな子から貰ったものを使わず見ているだけなど極刑に等しい。使ってこそプレゼントを受け取ったと言えるだろう。
それに彼女が一番に『使ってほしい」と望んでいる。それに応えられなくて、星の彼氏などなれるものか。
毎日使った方が星に喜んでもらえると知ったアベンチュリンは、帰宅するなりケースにしまっていたカップを取り出し、仕事終わりにそのカップで紅茶を飲む。
その後、紅茶を飲むのが習慣化。朝は弱いアベンチュリンは時間の余裕がある帰宅後に、楽しむようになった。
星イメージのアプリコットとアベンチュリンイメージのピーコックグリーン。そのラインが入るそのカップは、自分たちの概念のよう。星が自分のために悩んで買ってくれたと思うと、笑みが漏れてしまう。
そうして、その日も仕事を終わらせたアベンチュリンは帰宅すると、優雅なティータイムへと入る。星と一緒に過ごせないのは寂しいが、カップを見ると星を身近に感じる癒しの時間。滑らかなカップの表面に手をそわせ、星々が描かれた柄を眺め優しい微笑みを漏らした。
そうして、ティータイムの時間を楽しんでいると、1つの荷物が届く。頼んだ覚えないのない荷物に疑問を抱きながらも、受けとったアベンチュリン。
「これって………」
白の箱に入っていたのはお菓子の詰め合わせセットと一枚のメッセージカード。二つ折りにされたカードを開くと、1つのメッセージと彼女の名前。
『アベンチュリン、お仕事お疲れ様。美味しそうなお菓子を見つけたからあんたに送るね。 星より』
ずっと仕事詰めだったアベンチュリン。紅茶の時間が癒されていたところに、さらに彼女からのプレゼントが送られてきて、幸福のあまりため息をこぼす。
「そっか……」
プレゼントしてもらえるのってこんなに嬉しいんだな……。
いつも送る側だったアベンチュリン。だが、逆はあまりなかった。好きな人からは初めてのこと。
紅茶を入れ直してクッキーを一つ食べる。チョコチップの甘さが口の中に広がっていく。そうして、色んな味が楽しめるクッキーを堪能していると、ぴこんとメッセージ通知音がスマホから響く。見ると、送り主から1つメッセージが届いていた。
『アベンチュリン、お仕事お疲れ様。お菓子届いた?』
『うん、今食べてるところさ。とっても美味しいよ、ありがとう』
『ふふっ……気にいってもらえたのならよかった』
メッセージに続けて送られてきた写真。写っていたのは自分と同じティーカップとクッキー。星もちょうど紅茶を楽しんでいたようだ。
『今度は一緒にお茶しようね』
アベンチュリンは彼女のメッセージに「もちろん」と返信する。数秒待って返ってきたのはかわいい♡マークを耳で作る車掌のスタンプ。愛い彼女のメッセージにアベンチュリンは何枚もスクショを撮り保存。今日も星は可愛い。
「ふふっ……次は僕から君にプレゼントしよう。どんなお菓子がいいかな?」
窓の外を見れば、天の川を煌めく流れ星。カップの水面に映る七色の星光。ティーカップを片手に、アベンチュリンは遠くで同じティーカップを持つ彼女を思いながら、また一口紅茶を喫する。
「君のおかげで今日もいい日だったよ————ありがとう、星」