ビマヨダの属性が交換された話 恋人同士の属性が入れ替わるバグに小躍りしたのはドゥリーヨダナだ。
「わし様が!! 神性!!」
そのまま部屋から飛び出していこうとするドゥリーヨダナを部屋の主が引き止める。
「どこへ行くつもりだ!このトンチキ!!」
「ちょっとドゥルガーにちょっかいかけてくるぐらいいいではないかー。わし様なぁんかあの女神を見るとぞわぞわするので気になっておったのだ」
きらきらと子供のように目を輝かせている恋人にビーマは額を抑えた。
ドゥルガーの魔性特攻は強力だ。魔性属性のドゥリーヨダナが近づくのを躊躇するのは分かる。
だが、神性属性だからと言って
「おまえがバーサーカーなのは変わんねぇだろ」
「えー! わし様ランサーでも我慢するゥ」
「不満そうに言うな、馬鹿」
唇を尖らせたドゥリーヨダナをビーマはベッドサイドに引き戻した。
「バグが直るまでこの部屋から出るんじゃねぇぞ。──神性属性って言っても無敵じゃねぇんだ」
魔性属性が特攻持ちが多くて不利なだけで。神性持ちが特別有利というわけではない。
それが分かっていない様子の元魔性属性をベッドに座らせて、ビーマはその顔を覗き込んだ。
「──いつもと同じじゃねぇか」
魔性から神性に属性が入れ替わって雰囲気ぐらいは変わっているかと思ったが。ドゥリーヨダナの容姿に変化はない。
ビーマからのその評価にドゥリーヨダナは首を振った。
「分かっとらんのう。この、神性溢れるわし様から香り立つ高貴なスメル! 今のわし様が一声かければどんな者も平服して従うであろう」
「…おまえは神性をなんだと思ってやがる」
浮かれきっている様子のドゥリーヨダナにため息をつくと、今度は逆にドゥリーヨダナがビーマの顔を覗き込んだ。
「そういうおまえはどうなのだ? 魔性持ちのおまえなど、さぞかし…」
途中で言葉が切れた。
「ドゥリーヨダナ?」
ゆっくりと赤くなっていく顔にビーマが疑問を投げかけると、ドゥリーヨダナは慌てて顔を背けた。
「いつもと同じ!! いつもと同じ!! ただの怪力ゴリラーっ!!」
突然叫んだドゥリーヨダナにビーマが首を傾げて考え込む。そして、横を向いたドゥリーヨダナの頬が赤くなっているのに気づいた。
なるほど魔性属性にはこういう効果もあるのか。なら──。
「…ドゥリーヨダナ」
いつもドゥリーヨダナがビーマにそうするのを真似て耳元で囁くと、面白いくらいにドゥリーヨダナの体が跳ねた。
「ひっ!」
悲鳴をあげて逃げようとする体を引き寄せる。引きつった頬をそっと撫でると腕の中のドゥリーヨダナは小動物のように振り返った。
「び、ビーマ。…わし様ちょっと用事が」
「もちろん後にしてくれるだろ?」
ビーマは笑った。──バグが収まるまで楽しい時間が過ごせそうだ。