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    ちよど

    @tiyodo01

    萌えが書けない字書きの二次創作(主にワンライ)置き場。
    成人済。好きなものは帝都騎殺とわし様。他いろいろ。

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    ちよど

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    第8回アシュヨダワンドロライ参加作品
    お題は「怪異」を使用させていただきました。かなり時間オーバーしてしまいました。すみません。
    サムレムコラボ良かったですね!

    ##アシュヨダ
    #アシュヨダ

    アシュヴァッターマンがドゥリーヨダナに会わない話「行け! 我が戦士達よ!!」
     ドゥリーヨダナの声にアシュヴァッターマンは珍しく顔をしかめた。
     彼の声はアシュヴァッターマンに掛けられたものではない。もちろんこの江戸にいないカルナに向けられたものでもない。
     ドゥリーヨダナの『戦士達』はキャンキャン! にゃお──っ! と愛らしい声をあげ江戸城下の大通りを駆けて行き、アシュヴァッターマンの主が投げた鰹節と呼ばれる塊に飛びかかった。
     噛みつきひっかき大騒ぎしている犬と猫を眺めてドゥリーヨダナは目を細める。
    「マスター、やっぱりアレ、カルデアで飼わんか?」
    「無理だよ」
     手に持ったスマホで犬と猫の狂乱を撮りながら返答するマスターに宙に浮く赤い本が揺れた。
    「愛らしいが、この江戸にいるからにはあれらも怪異。この特異点と共に消え去る運命じゃ」
     和服の侍が江戸城を仰ぐ。あの江戸城に生えた空想樹を伐採してから数日。カルデア一行と愉快な仲間たちはのんびりクエストを周回する途中だった。
     メンバーはマスターである少年、藤丸立香。二刀流の使い手、宮本伊織。古事記の英雄ヤマトタケル。サポートサーヴァント、キャストリア。期待の新人オベロン。特攻枠アシュヴァッターマンに絆上げ要員のドゥリーヨダナである。
     彼らは江戸城に向かう途中だったのだが、犬猫を見つけたマスターが撫で。それにキャストリアが参加し、ドゥリーヨダナが餌付けを始めたのだ。
    「旦那、いくら珍しいからってあんまり無理言うんじゃねぇぞ」
    「犬猫が珍しいのかい?」
     アシュヴァッターマンの言葉に蝶の羽根を持つ妖精王が団子から顔をあげた。
     赤い布が敷かれた長椅子には白い装束の王と王子が座って、団子を食べつつお茶を飲んでいる。
     その傍らに立つ古代インドの戦士は妖精王の言葉に困ったようにこめかみをかいた。
    「全体的にはそう珍しいわけじゃねぇが。…旦那は生前なにかと忙しかったからなァ。小動物なんかに構ってられなかったんだよ」
    「王子様は大変だねえ」
     オベロンがお茶を一口飲むと、その横でヤマトタケルが頬張っていた団子を飲み込んだ。
    「確かに。戦場に犬や猫は連れていけないからなぁ」
    「…太閤殿下は小田原攻めの時に白拍子などを連れて行ったと聞く」
     新しい団子の皿を持ってきた宮本伊織の呟きに赤い本が捻れた。
    「あれは勝ち戦だと分かりきっておった。それに白拍子と犬猫を一緒にするでない」
    「そうだな。失言だった」
     黒い瞳が通りの真ん中で犬猫をじゃらしているドゥリーヨダナを見る。
    「情の深い御仁に見受けられるが」
    「旦那は慣れてるさ。戦場では別れは当然の事だからな」
    「そうだな。…慣れる、ものだ」
     戦場を知る赤と白のサーヴァントの言葉に伊織は眼差しを伏せた。
     その前をアシュヴァッターマンが通り抜ける。彼が向かう先は犬猫の前にしゃがみこんでいるドゥリーヨダナだ。
    「旦那。あんまり慣れさすと戦闘中に飛び込んでくるぜ」
    「もう少しいいではないか」
    「周回もあるだろうが。旦那。──ほら」
     両手を差し出したアシュヴァッターマンにドゥリーヨダナはしぶしぶ犬猫を渡した。
    「怪異が少ねぇところに放してくらァ」
    「いってらっしゃーい」
     江戸城の周回の戦力的にはアシュヴァッターマンは特に必要ではない。手を振るマスターにアシュヴァッターマンは頷いて犬猫を抱えて走り出した。



    「それで俺の所に来たって訳か」
     岸壁に海の音が響いている。逸れのサーヴァントの言葉にカルデアのアシュヴァッターマンは静かに頷いた。その拍子に腕の中の犬猫がもぞもぞと動き始めたので慌てて抱え直す。
     その様子を見て逸れのサーヴァントは背負っていた巨大なチャクラムを消した。カルデアのアシュヴァッターマンの腕から猫をそっとつまみ上げる。柔らかい姿をした怪異はにゃーと抗議するように鳴いた。
     それを砂浜に静かに下ろすと潮の香りが珍しいのかふんふんと鼻を動かして、猫の怪異はゆっくりと歩き出した。
    「この辺りは今は静かなモンだからな。害のない怪異の一匹や二匹ぐらい問題ねぇ」
    「頼む」
     カルデアのアシュヴァッターマンも抱えていた犬の怪異を砂浜に下ろす。愛らしい姿をした怪異は跳ねるように波打ち際に走って行った。鳴き声が響く。
     潮風が二人のアシュヴァッターマンの髪を揺らす。
    「ま、『俺』の気の回しすぎだろうけどなァ」
     逸れのアシュヴァッターマンの言葉にカルデアのアシュヴァッターマンは太陽の方向に目をやった。
    「カルデアのサーヴァントは全騎、霊基グラフに登録されている。滅多な事じゃ消滅しねぇ」
    「なら大丈夫だろ。──旦那のあんな顔はもう見たくねぇってのは分かる。身内だと思えば旦那はすぐ情を移しちまうからな」
     波打ち際で遊ぶ怪異に視線を流す逸れのアシュヴァッターマンの呟きを、カルデアのアシュヴァッターマンが遮った。
    「カルナがいる」
    「あ──。そりゃ駄目だ」
     額に手をやった逸れのアシュヴァッターマンは空を仰いだ。
     『アシュヴァッターマン』はカルナが死んだ時のドゥリーヨダナの嘆き悲しむ様子を知っている。それを少しでも呼び起こす可能性があるものはドゥリーヨダナから離しておきたい。それが小さな怪異二匹の消滅だとしても。
     行動の意図が通じたカルデアのアシュヴァッターマンが話題を変えた。
    「『俺』は旦那に会っていかねぇのか?」
     サーヴァントが召喚される聖杯戦争では基本的にサーヴァント同士は敵対する。カルデアのように同じ陣営に召喚されたり、この特異点のように協力関係になる事は滅多にない。
     だが、逸れのアシュヴァッターマンは首を振った。

    「会わねぇよ。──分かってんだろ。会ったらもう我慢出来ねぇ」

     何を我慢できないのか。同じ人物の影である2騎のサーヴァントには言葉にするまでもなかった。
     波の音が時間のように繰り返される。
     逸れのアシュヴァッターマンはいっそ爽やかに笑った。
    「『座』であんたの記録が届くのを楽しみに待ってるぜ」
    「ああ、期待しておいてくれや」
     もうすぐ消える特異点に二人のアシュヴァッターマンが拳を打ち合せる音が響き渡った。
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