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    maotwi12

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    maotwi12

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    現代伯父とイニ、親子として生まれ変わった二人が対馬へ旅行に行く話
    当時の記憶無し、イニは中学生くらい?
    会話文多め、急に終わります

    かつて対馬に押し寄せた元寇。その歴史を後世に伝えるべく様々な物品が展示されている資料館をゆったりと歩く。
    元寇といえば学生時代、日本史の教科書でさらっと触れたくらいで、詳しい知識は無かった。それ故展示物の説明文を読むと色々新たな発見があり興味深い。
    対馬に来るのは初めてだが、やはり現地で直接歴史の息吹を感じるのは良いものだ。

    「わぁ…父さん見て、これ本物の鎧だ」

    当時の五大武家についての展示を見ていると、背後で感嘆の声が上がった。
    ガラスのショーケース内で一際目立つ甲冑を眺め、息子が目を輝かせている。

    「ほぉ、地頭の志村氏が身に付けていたものか。見事な造形だな」

    兜には牛の角のような雄壮な飾りが付いている。紐が千切れた鎧は古ぼけてはいるが、所々に鮮やかな色味を残し、当時の色彩を想像させる。
    隣に掛かっているのは辛うじて原型を保った陣羽織。太陽と海を模したのであろう家紋と、丁寧に施された刺繍は、対馬一の武家としての風格を体現しているかのようだ。

    「格好いい…でもこれ、かなり重いんだろうな。こんなのを身に付けて戦ってたなんて」
    「あぁ、太刀も合わせると数十キロもあったそうだ。当時の武士は相当に体を鍛えていたんだろう」
    「鎧の下には着物も着てたんだよね…剣道の胴着でもあんなに暑苦しいのに、武士って凄いなぁ」



    展示品の中には、島民の生活の名残を感じる道具や、和歌が刻まれた石碑などもあった。蒙古軍が集落を襲った時のことも民や僧侶により書き伝えられており、その文章から凄惨な様子が読み取れる。

    「…結局、元寇に立ち向かった対馬の武士はみんなやられちゃったのか…」
    「実際の元寇は嵐がきっかけで壊滅したようだが、民間伝承では冥人という島の守人が現れて対馬を救ったという話もあるらしい。あくまで噂話だがな」
    「へえ、冥人か…なんか格好いいね。本当のところはどうだったんだろ」
    「何にせよ、今平和を享受出来るのは戦ってくれた先人達のお陰だ。感謝しなくては」



    観覧を終えて建物から出ると、柔らかな春の日差しが降り注ぎ、小鳥のさえずりも聞こえてくる。
    初めて来た場所のはずなのにどこか故郷を思わせる長閑な景色。
    立ち止まって新鮮な空気を胸一杯に吸い込み、ほぅと吐いた。

    「父さん、どしたの?」
    「ああ、いや何でもない。すまん」
    「ね、この近くでてつはうチョコっていうの売ってるんだって、食べてみたい!穴子丼も旨そう、昼飯はこれかな…いやでも、いりやきってのも気になる…悩むなあ」

    どこで手に入れたのか、グルメ情報のチラシを食い入るように見つめる息子。
    最近は少し大人びた顔つきになってきたとは言え、まだまだ花より団子の年頃だ。

    「はは、食べ物の事となると俄然色めき立つな。まあせっかく来たんだから、出来るだけ色々回ってみよう」
    「じゃあそこで売ってるお茶のソフトクリーム食べよう!父さんのも買ってくるから待ってて!」

    言うが早いか、遠くに見える売店の一角へ駆け出す。

    「やれやれ、元気だな」

    列に並ぼうとした途端、弾かれたように明後日の方向へ走っていくので何事かと思えば、車椅子の老婦人の元へと駆け寄っていた。石畳の溝に車輪が引っ掛かり困っていたらしい彼女を助け、しきりに感謝されている様子だ。

    妻に先立たれてから再婚せず父子家庭で育てた為に、息子に寂しい思いをさせているのではと気に病んだ事もあったが…
    あんなに真っ直ぐで優しい子に育ってくれて嬉しい限りだ。



    今は父さん父さんと自分を慕う彼も、いずれは自立し、伴侶を得て、巣立って行くのだろう。
    その日のことを考えると正直寂しさは感じるものの、我が子が立派に育っていくのを見守るのは無上の喜びでもある。



    穏やかな風が運んでくるほのかな磯の香り。
    鼻孔をくすぐるそれに、どこか懐かしい気持ちになった。
    理由は分からない。それでもこの島には、不思議と心惹かれてやまない。


    ソフトクリームを手に戻ってきた息子に礼を言いつつ、また旅行に来ようなと笑いかけると、少し首を傾げた後満面の笑みと共に「うん!」と元気な返事が返ってきた。
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    maotwi12

    DONE現代伯父とイニ、親子として生まれ変わった二人が対馬へ旅行に行く話
    当時の記憶無し、イニは中学生くらい?
    会話文多め、急に終わります
    かつて対馬に押し寄せた元寇。その歴史を後世に伝えるべく様々な物品が展示されている資料館をゆったりと歩く。
    元寇といえば学生時代、日本史の教科書でさらっと触れたくらいで、詳しい知識は無かった。それ故展示物の説明文を読むと色々新たな発見があり興味深い。
    対馬に来るのは初めてだが、やはり現地で直接歴史の息吹を感じるのは良いものだ。

    「わぁ…父さん見て、これ本物の鎧だ」

    当時の五大武家についての展示を見ていると、背後で感嘆の声が上がった。
    ガラスのショーケース内で一際目立つ甲冑を眺め、息子が目を輝かせている。

    「ほぉ、地頭の志村氏が身に付けていたものか。見事な造形だな」

    兜には牛の角のような雄壮な飾りが付いている。紐が千切れた鎧は古ぼけてはいるが、所々に鮮やかな色味を残し、当時の色彩を想像させる。
    隣に掛かっているのは辛うじて原型を保った陣羽織。太陽と海を模したのであろう家紋と、丁寧に施された刺繍は、対馬一の武家としての風格を体現しているかのようだ。

    「格好いい…でもこれ、かなり重いんだろうな。こんなのを身に付けて戦ってたなんて」
    「あぁ、太刀も合わせると数十キロもあったそうだ。当時 1712