俺は王子様じゃないプロローグ
シンデレラ。
意地悪なまま母と義理の二人の姉から虐げられ、灰かぶりと笑われた少女。
魔法で生み出された美しいドレスを纏い、彼女はきらびやかな舞踏会へと向かった。
裾からのぞくのは、シャンデリアの眩い光を反射しきらめくガラスの靴。普段よりも高い目線に臆することなく、靴音を響かせまっすぐに進む。
あの美しい令嬢は誰だと、興味と好奇心の滲む囁きが耳に届いた。
ひときわ豪華な衣装を身に着け、つややかな光沢を帯びるマントを翻しこちらへ歩いてくる青年は、きっと『シンデレラ』の運命の王子様だ。
(それでも、私は――)
迷いも疑問も振り捨てて、晶は一つの決意を固める。そして立ち止まると、ドレスの裾を大きく持ち上げた。
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