猪七猪ファンタジーパロディ「ん?」
仕事を終え、売れ残りのパンを片っ端から買い占めて家路を急ぐ猪野の神経に何かが触れた。
ひしめくように違法建築を重ねた家と家の隙間とも言える細い路地。そこからなにか妙な物音が聞こえた。
すっかり日は落ちて、大通りすら人はまばらになっている。そんな時刻に細い路地に居るものはろくなものじゃない。
もう仕事は終わっているし、気づかなかった振りをして通り過ぎるべきだ。きっと首を突っ込めば手に負えないことになる。
そんな予感がひしひしとするのに、路地裏への入口を十二歩通り過ぎたところで足が止まってしまった。
──あの騎士さまならどうするかな。
ふと思い浮かぶのは金の髪をした騎士の姿だ。
幼い頃魔憑きだと罵られ足蹴にされていた猪野を助けてくれた清廉な騎士。
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