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    そいそい

    @soi_07

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    そいそい

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    ゴムの日に間に合わなかったタツリュウ。

    ゴムの日こどもの日も終わり、ゴールデンウィークも中盤だ。ミユは遊びに出かけていて、兄貴はソファーで読書に耽っている。俺はというと、暇でしかたがなかった。意味もなくSNSを眺めていると、トレンドに上がる単語に目が止まる。
    「今日ってさ、ゴムの日なんだって」
    「5月6日だもんな」
    「つまり、コンドームの日だ」
    「そうだな」
    俺がせっかく話を振ってやったというのに、兄貴は素気なく返事を返すだけ。そして、優雅に本を捲る。いつも通りの兄貴に、俺の眉間に皺がよる。
    「なんか思ってたのと違う」
    「なんだ、藪から棒に」
    「だってさー」
    そう不貞腐れれば、兄貴は本から俺へ視線を向けてくれた。
    真面目な兄貴は、下世話な話題には疎いと思っていた。だから、コンドームの日なんだとからかってやれば、照れるか、怒るかするだろうと予想していた。しかし、実際はスルーだ。何も楽しくない。
    「兄貴、そういうの疎そうなのに」
    「俺ももう中2だぞ」
    「そうだけど」
    中学生といえども、兄貴は兄貴。品行方正で、誰もが認める優等生。そんな兄貴は、恥ずかしくてコンドームのコの字も口にできないと俺は思っていたのだ。もしかして俺はどこか兄貴を神聖なものと思いすぎていたのかもしれない。俺の知らないところで、兄貴は友達とエロ本を見ているかもしれない。クラスのあの子のおっぱいが大きいとか、そんな話をしているかもしれない。いや、でも、兄貴のそんなところ想像できない。
    「そうだ」
    そんなことを考えていると、兄貴が本を閉じ、ソファーから立ち上がる。どうしたのかと様子を伺っていると、カバンから財布を取り出し、何かを探し始める。
    「これ」
    そして、何かを投げてきた。それをキャッチすれば、四角いパッケージのもの。
    「これって…」
    それはおそらくコンドーム。ネットで写真くらいは見たことはあるが、実物を見るのは初めてだった。それを兄貴からもらうなんて…。
    「俺、まだ小学生なんだけど!」
    「男のマナーだ。1つくらい持っておけ」
    悪態をつく俺に、兄貴はそれだけ言うのだった。

    ♢♢♢

    あれから兄貴から貰ったコンドームが俺を悩ませていた。あの兄貴がなぜこんなものを持っているのか。そもそも兄貴はこれをどこで手に入れたのか。自分で買ったのか。そうとするならば、そういう相手がいたということになる。しかし、俺が知る限り、彼女がいたような形跡はない。ならばなぜこんなものを持っているのか。コンドームを眺めながら、堂々巡りの問答を一人続けている。今日もまたいつもと同じことを繰り返していた。違うことといえば、今日はあれから3回目の5月6日だということ。そろそろハッキリさせてもいいだろうと、手で遊ばせていたコンドームをぐしゃりと握りつぶして、ポケットに突っ込む。
    俺は部屋を出て、隣の兄貴の部屋へ行く。ノックもしないでドアを開ければ、案の定兄貴はベットの上で読書をしていた。
    「いつも言ってるだろ。ノックくらいしろ」
    「別にいいだろ」
    いつものやり取りを終え、俺は兄貴が座るベットに腰を下ろす。キキっとベットが軋む音がする。
    「今日ってさ、ゴムの日なんだって」
    「5月6日だもんな」
    「つまり、コンドームの日だ」
    「そうだな」
    3年前と全く同じやりとりだ。そして、兄貴はあのときと同様、俺に構わず本を捲る。そんな兄貴に向かって、俺はポケットの中でぐしゃぐしゃになった例のものを突き出す。
    「これ」
    「これがどうした?」
    「昔、兄貴からもらったやつ」
    「そうだったか?」
    コンドームを見せられても、やはり兄貴は動揺することはない。それはそうと、俺にこれをあげたことを忘れているような口ぶりに腹が立つ。湧いてきた苛立ちをなんとか抑えつつ、質問を投げかける。
    「これ、どうしたの?」
    「どうって?」
    「なんで兄貴がこんなの持ってたの?」
    「もらったんだ」
    「誰から!?」
    思いがけない答えに、俺は食い気味に兄貴に迫る。もらったということは、誰かとそういう関係があったということか。あの兄貴が知らない誰かとと思うと、胸のあたりが苦しくなる。
    「超進化研究所の整備班の人だったかな。中学生なら1つくらい持ってろって言われて。男のマナーなんだそうだ」
    続く兄貴の説明に、俺は呆気に取られる。
    「でも、そういうのに興味がないからタツミにあげたんだ」
    「お、俺だって、興味ないしっ!」
    「だってコンドームの日って言って揶揄ってきただろ?」
    「あれはただの小学生の戯言だ」
    「そうなのか?」
    「そうだよ」
    兄貴がなぜコンドームを持っているのか。あれだけ俺を悩ませていた疑問は、案外簡単に解決してしまった。無駄に入っていた力が抜け、ため息と共に兄貴のベットに雪崩れ落ちる。
    「寝るなら自分の部屋で寝ろ」
    ベットに突っ伏したままの俺に、兄貴がそう声をかけてくる。そんな兄貴に顔を向ければ、いつもの兄貴がそこにいる。まだ誰のものでもない。誰にも触れさせたくない。そんなことを考えていると、持っているコンドームが妙に存在感を主張してきた。
    「俺は使わなかったよ。誰にも」
    ポツリとそう呟けば、兄貴の眉が少しだけ動く。
    「違うからな!使わないでやったってわけじゃなくて、そういう相手がいなかったってことだからな!」
    誤解が生じたのかと、今の発言に対して必死に言い訳をする。だが、兄貴から特に反応はない。
    「なぁ、兄貴」
    ならばと、俺は続ける。
    「これ、兄貴に使ってもいい?男のマナーなんだろ?」
    そう言いながら起き上がり、兄貴に迫る。しかし、兄貴は持っていた文庫本で顔を隠してしまった。
    「ダメだ」
    そして、紡がれたのは拒否の言葉。それは想定済み。あの兄貴から、そう簡単にYESと言ってもらえるとは思っていない。
    「減るもんじゃないからいいだろ?」
    さらにそう迫れば、文庫本の向こうから何かが聞こえてくる。
    「使用期限があるんだ」
    「使用期限?」
    「コンドームの使用期限はだいたい3〜5年。そもそもそれは貰い物。もしかしたら使用期限が切れているかもしれない…」
    思わず文庫本に触れれば、すんなりそれは兄貴の顔の前からいなくなった。そこで出会った兄貴の顔に、俺は息を呑む。
    「あっ、えっ、そのっ、えーと…。す、すぐに買ってくる!」
    そう言い残し、俺は兄貴の部屋を飛び出した。
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    そいそい

    DONEはっぴーリュウシマ真ん中バースデー🥳

    真ん中バースデーとはあまり関係ない話になってしまいました。あと、ひっちゃかめっちゃかしてます。すみません🙏

    ※注意
    かっこいいリュウジさんはいません。
    社会人リュウジさんと大学生シマカゼくんの話です。
    ヤマクラ前に考えた話だったので、シマカゼくんの進路は捏造しています。
    かっこいいリュウジさんはいません←ここ重要
    あの部屋 大学の最寄駅から地下鉄に乗って一駅。単身者向けのマンションの三階の一番奥の部屋。鍵を出そうとしたが、中に人の気配を感じてやめた。そのままドアノブをひねると、予想通りすんなりと回る。そして玄関の扉を開けば、小さなキッチンのある廊下の向こうで、メガネをかけて、デスクに向かっていたあの人がちらりとこちらに視線をくれた。
    「また来たのか」
     呆れながら言うあの人に、ここからの方が学校が近いのでといつも通りの答えを返す。そうすると、少しだけだろといつも通りにあしらわれた。
     ここは僕の下宿先というわけではない。超進化研究所名古屋支部に正式に入所したリュウジさんが一人暮らしをしているマンションだ。もう少し超進化研究所の近くに住めばいいのに、何故か程遠い名古屋の中心部に部屋を借りている。そのおかげで僕は大学帰りに寄ることができているのだ。
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    そいそい

    DONEフォロワーさんからいただいたリクを元にして書きました。あんまりリクに添えた話にならなくて、本当にすみません🙇‍♀️
    リクありがとうございました🙌
    安城家に子守り行くリュさんの話です。
    「こんなことまで面倒かけちゃってごめんなさいね。ほらうち、お父さんが仕事でいつも家空けてるし、おじいちゃんおばあちゃんも遠くに住んでるから、こういうときに困るのよ。だから、リュウジくんが来てくれることになって本当に助かるわ。お土産買ってくるからね。苦手なものとかない? あっ! あと……」
     リュウジさんが持つスマートフォンから母さんの声が漏れ出ている。母さんの声は大きく、よく喋る。それは電話だろうが変わらない。そんな母さんの大音量のマシンガントークをリュウジさんはたじたじとしながら聞いてくれていた。
     母さんは大学の友人の結婚式に出るため、東京にいる。しかし、帰りの新幹線が大雨で止まってしまったらしい。それで今日は帰れないかもしれないと超進化研究所で訓練中の僕に電話がかかってきたのだ。このまま超進化研究所の仮眠室を借りて一晩明かしてもよかったが、あいにくナガラはフルコンタクトの稽古で不在で、家には帰らなければならない。しかし、家に帰ったら帰ったで、僕たち子供しか家にいないことになる。それは母さん的には心配なようで、どうしようかと頭を悩ませていると、俺が面倒見ましょうかとリュウジさんが申し出てくれたのだ。それでいつ運転再開になるかわからないからと、母さんは東京で一泊してくることになった。
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