桜はすっかり緑に染まり、春の陽気に照らされている。新学期が始まって、今日から授業も始まった。クラス替え直後でまだまだ落ち着かない。今年から僕は五年生。高学年になった。それに、シンカリオンの運転士候補生という責任ある役割も得た。しっかりしなければと、気持ちを新たに昇降口を出る。
「ねぇ」
校門を出たところで、見知らぬ女の子に話しかけられた。サーモンピンクのランドセルを背負い、髪をサイドでオレンジのゴムで束ねている。意思の強そうな瞳が僕を捉えていた。
「あなた、安城シマカゼくんだよね?」
「そうだけど、君は?」
この子は何故僕の名前を知っているのだろうか。空手の大会を通して知っているという人に会ったことはある。だが、この子が空手をやっているようには見えない。
「ちょっとつらかしなさいよ」
「えっ?」
僕の質問に答えずに、彼女は続ける。そんな僕たちを取り巻いていた児童たちが、告白かなとざわつき始める。
告白。その言葉に、まさかと顔が熱くなる。だが、この状況なら一番あり得そうなことだった。告白とならば、この子が僕の名前を知っているのも頷ける。
告白されるなんて初めてだ。付き合ってくださいって言われたらどうしよう。なんて答えたらいいのだろう。だって、僕はつい最近シンカリオンの運転士候補生になったばかり。デートとかしてあげる余裕なんて……。
そうテンパっていると、手に持っていた自転車の鍵をスルリと取られた。今日は学校帰りに超進化研究所に行く予定だったから、鍵だけ持っていたのだ。
「あっ、えっ?」
彼女の行動に戸惑っていると、これと得意げにN700Aのキーホルダーがついた鍵を掲げてくる。
「返してほしかったら着いてきて」