線引きコツリとシマカゼが何かを机に置く音がした。紙の箱の音だったから、お菓子が何かだろうと予想をつけてチラリと視線を向ければ、極薄やら何ミリやらの文字。お菓子のパッケージにそんな文字が並ぶわけがない。まさかシマカゼがと、視線を上げると顔を真っ赤にしているシマカゼがいた。
この状況をどう解釈していいかわからない。
「お、お願いがあって……」
シマカゼがもじもじしながら口を開く。ぎゅっと手を握り締める。そして、何かを決意するように大きく深呼吸をする。
「ぼ、ぼぼぼくぉぉぉっ……、だ、抱いて、く、くくださいっ!」
「なにを言って……」
「いやっ、そのっ、これがなくても」
俺が唖然としていると、机に置いた箱にシマカゼは手を伸ばす。それが箱に触れる前に、俺はその手を掴んだ。
「そういう話をしてるんじゃない」
そう、これがあるとかないとかの以前の話をしているのだ。
「これ、自分で買ったのか?」
シマカゼにそう問い掛ければ、小さくコクリと頷く。シマカゼはまだ中学生だ。それなのにこんなにも簡単にこれを買えてしまうのかと頭を抱える。
「未成年に手を出す訳にはいかないだろ」
それが素直な気持ちだった。シマカゼと付き合っているとはいえ、まだシマカゼは未成年。手を出せるわけがない。
「大学って綺麗なお姉さんとかいっぱいいるし……」
「不安にさせたのか?」
「そんなことないです」
「じゃあどうして?」
「僕はリュウジさんの恋人です。恋人を求めることに理由がいりますか?」
シマカゼは俺をしっかり見つめてそう言ってのける。シマカゼは真剣なのだ。その気持ちを無碍にはできない。
「わかった」
だから俺はそう答える。じゃあと立ち上がろうとするシマカゼを頬に手を寄せて、唇を奪う。目を見開いて固まっているシマカゼの唇を割って舌を入れるのは容易だった。そのまま逃げ腰なシマカゼの舌を絡め取る。静かな部屋に熱のこもった吐息が響く。シマカゼの上顎をなぞり、歯に触れる。そうやって口の中を蹂躙したところで唇を離せば、目に涙を浮かべながらトロンとしたシマカゼがいた。何度か呼吸をして、やっと何をされたのかわかってきたのか、あわあわとまた顔を真っ赤に染めていく。そんな様子にふふっと頬を緩ませる。
「どこまでが、許させるんだろうな」
そう呟いて、今度は優しく床に押し倒した。