サマードレスの彼女ビーチに清楚なワンピースの可愛い女の子がいた。ハッと目立つほど可愛い。
暑さなんて感じないみたい彼女は爽やかで、それでいて愛らしい。長い髪を緩い三つ編みにして、華奢な背におろしている。
ちょっと乙女チックなレースの日傘も、彼女がさしているとノスタルジックだ。海風がスカートを揺らすと、まるで初恋に似た甘い痛みを覚えた。
この子は水着姿を見たかったのに、でもこの姿だからひどく惹かれたんだと思った。
ひと夏のアバンチュールなんてドラマの中だけだと思っていた。
「あの……っ!」
「はい?」
彼女が振り向く。そのひとつひとつが網膜に焼き付くほどに可愛い。
これはきっと夏の火遊びなんかじゃない。一生の恋だ。
「良かったら俺と一緒に遊びませんか!」
「おい……」
後ろから声をかけられた。
振り返るとそこには、金髪サングラスの細マッチョのたぶんイケメンが立っていた。目はサングラスで見えないのに、射殺すようにこっちを見ているのが分かった。
「俺の奥さんになんか用?」
金髪はイライラしながら抱き抱えていた子どもをおろすと、子どもは嬉しそうに彼女に抱きつく。
「ママー!パパすごいんだよ」
「まあ、よかったわねぇ」
彼女は子どもを抱き上げて、かわいらしく微笑む。
ちょっとタンマ。俺のひと夏の一緒になる恋はどうなった。
「……で?もう一回聞くけど、俺の奥さんになんの用が?」
「……ナンデモアリマセン」
ぎしりと身体を反転させて、その場から逃げ出した。
確かにー!確かにあの彼女はすごくとても可愛くて、こうやって逃げ出したことを後悔するくらいに可愛かったけどー!でも、あの旦那は反則だろう!?
なんかの選手ですか!それともモデルってやつですか!あの出来上がった身体ー!取っ組み合いで一息に落とされる自分が想像できた。
「なんだ。あの子、人妻だったのかぁ~」
…………。
「人妻かぁ……。いいなぁ。もうヤッてんだよな、あの旦那と」
こうして、どこかの名も知らぬ少年の性癖に人妻(幼妻)属性が付与された。
「だから襧豆子ちゃんから離れたくなかったのにぃ!」
「でも、仕方ないでしょう。あの子が海行きたいって言うんだから。善逸さんだって、あの子と遊べて楽しかったんだよね」
「そりゃあね。すげー楽しかったけど、海で遊んでるいっぱい襧豆子ちゃんが心配で心配で。やっぱり次は襧豆子ちゃんも遊べるプライベートビーチがある島に行こうよう。そこだったら襧豆子ちゃんも水着きてもいいしねぇ」
「そんな善逸さんが心配するほどじゃないと思うよ?学生時代だって水着きていたでしょう?」
「何言ってんの!奥さんになった襧豆子ちゃんの水着姿は、学生時代とは全然違うんだよ!あの頃は最高に可愛かったけど、今はもう……言葉に出来ないくらいに変わったんだからねえ!だって、そんなワンピースだって声掛けられちゃうんだから、水着になんてなったら心配で横から絶対に離れられないよ!!」
「そんなこと言うなら善逸さんだって変わったよ。学生時代とは違うわ」
「えー!お、俺お腹出てきた?見苦しい?いーやー!!!」
「大丈夫。お腹でてないよ。あのね、学生時代の善逸さんも好きだったけど、今のだんな様の善逸さんはもっと大好きなの」
「ね、襧豆子ちゃん!!俺も襧豆子ちゃんが大好き!!」
半年後に我妻家はプライベートビーチが備わっている水上バンガローを行くことが決定される。
しかし、二人はまだ知らない。そのリゾート地でテロが勃発し、ひと騒動起きること。
ついでに、その騒ぎで3人目の子どもが出来ることも。つまりは、波風立つけど相も変わらず我妻家は愛に溢れているということで。