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    irie_q

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    irie_q

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    #土銀ジューンブライド企画様、今年もありがとうございます!
    相変わらずうちの新婚なアレのひとたちのプロポーズの日なアレですが、宜しければお納めください

    #土銀ジューンブライド企画
    doitsuGinJuneBrideProject

    6/6はプロポーズの日


     ちょっと相談乗ってくれ、と土方が言い出したのは、よく晴れた日曜日の昼下がりのこと。その日はふたり揃って休みだったので、昼飯は素麺にした。
     ゆで卵にツナ、庭からとってきた小ネギとミョウガをたっぷり刻む。白胡麻、糸唐辛子、花山椒。ごっそり茹でた素麺をそれぞれ丼に入れ、好きなように具と薬味を乗せてつゆをかければ出来上がり。これマヨネーズ入れるとうめえから、と教えると、土方の目が少年のように煌めいた。
     腹いっぱい好きなアレンジで素麺を食べて、熱い番茶をいっぱいずつ。湯呑み片手に、片付けの前に何か甘味でも食おうかな、と銀時が思案しているところに、土方から相談を持ちかけられた。
     なに、とどうでもない返事をすると、
    「そのな、プロポーズの言葉って、どんなもんなんだ」
     とそんなことを言い出した。
     藪から棒だ。
    「はあ? プロポーズ?」
    「おう」
    「なに、お前、どこかにしに行くの?」
    「違う」
     ンなわけあるか、とちょっとご立腹になりながら土方が語ったのは、こうだ。
     世の中が少し落ち着いて、真選組にも春が来た。若い男連中が人生の春を謳歌しはじめ、お付き合いからゴールへのテープ目前という隊士も出てきた。そんな折、つい先日夜勤の休憩時間に隊士の恋バナに巻き込まれて、プロポーズってどうしたらいいんですか、という質問を受けた。副長、経験者ですよね、という期待の眼差しを受けながら。
    「経験者ぁ? いつ」
    「……や、」
    「誰によ」
    「……誰にってお前、そりゃ」
    「え、俺?」
     自分で自分を指差して、銀時は首を傾げた。
     プロポーズ。されただろうか。
     この男に。
     記憶をいくらプレイバックしてみても、プロポーズされた覚えは、ない。
     目の前の男はなんだか居心地悪そうな顔になっているし、走馬灯が廻るぐらい記憶を走らせても一向にそれらしいものは思い出せないしで、銀時は困り果てた。
    「俺、された?」
    「……まあ、」
    「いつ」
    「……、」
    「でも俺ら結婚はしてねーよな?」
    「するか?」
    「ハァ?!」
     するか?、で目が輝いた男の頭をはたき落としてやりたくなったが、そこはひとまずグッと堪えた。
    「とにかく。それで、相談ってなんだっけ。あープロポーズの言葉ってどんなのがいい、だっけ?」
    「おう」
    「そうだなぁ……」
     さて、と銀時は湯呑みを置き、腕組みをして考え始めた。
     プロポーズ。求婚。ずっと一緒にいたい相手に、それを伝える言葉とは。
     定番といえば、まずど直球で『結婚してください』だろう。そのものズバリ、何も足さない、何も引かない。だが、地球人の男はシャイなので、ウィルユーマリーミー?とズバリは言い難いのかもしれない。確かに自分も言わないだろう。そんな小っ恥ずかしいことは言えない。
     だとすれば、ちょっとひねった『俺に毎日味噌汁を作ってください』か。少し古い気もするが、そして今どきどちらかだけが家事をするのは流行らないが、結婚という単語を使わずに意図は通じるだろう。これを聞いて『家政婦になってください』という内容で受け取る相手もまずいまい。だが。
     味噌汁構文に欠如するのは、一緒にいたい、という情熱かもしれない、と銀時は思った。毎日味噌汁は一緒にいなくても実現可能だ。なんなら相手が毎日モーニングをやっている定食屋の店員だったとしたら、毎日その店に通うことで結婚しなくてもそれは実現できる。味噌汁の調理者がたとえプロポーズの相手では無かったとして、年季の入った店のオヤジだったとしても、サービスしてくれるのが相手であれば形としては有効かもしれない。
     ということは、プロポーズにこの際一番大事なこととは。一緒にいたい、ということを伝えることではないだろうか。
     そこで閃いた言葉は。

    「一緒に住まねえか、とか?」

     口にして、した途端、あれっ、と銀時は咄嗟に思った。この言葉、どこかで聞いた。ドラマとか映画とか、そういうのではなく。この耳で。しかも、ここの場所で。
     この家に泊まりにきた朝。このちゃぶ台で朝食を食べて、それを片付けようと立ち上がった時。そろそろ春の声が聞こえそうな、そんな頃のこと。
     言った土方は、煙草片手に奥様向けの朝のテレビ番組を眺めていて、頑なに自分の方を見ようとしなかった。
     少し硬い、低い声。耳に甦ったその時の声。
     では、あれは。
     あれはつまり、この男にとっては。
    「っ、タバコ買ってくる」
     銀時の思考がそこまで辿り着いたのが、おそらく顔に出ていたのに違いない。居心地悪そうにしていた土方が、突然、立ち上がり遁走した。
     行きがけに財布だけを引っ掴み、慌てた様子で草履をひっかけ玄関からガラガラと出て行くその様子に、照れてしまったのは銀時のほうだ。
     顔は暑いし、胸がバクバクする。
     重力に任せて畳に転がると、畳の目が頬の皮膚でわかってしまうほど。
     ヤダもう。
     なにアレ。
     なにあの子。
     アレ、プロポーズのつもりだったの?
     ヤバいじゃん。
     受けちゃったじゃん。
     銀さん、一緒に暮らしちゃってるじゃん。
     なんでこんな時にこんなこと分からせちゃったりするんだよ、あのバカ。
    「ああーーーもう恥ずかしいったらねーよ……」
     思考は千々に乱れまくり、自分の状況も正視できなければ、それをプロポーズだという認識で今まで自分と暮らしてきた土方という男のことも、いま帰って来られたりしたら正視できそうにない。
     どこかのゴリラが昔、言っていた。
     チーズ蒸しパンになりたい、と。
     今ならわかる。気持がわかる。内訳は違うだろうが、わかってしまった。
    「…………、」
     黙って畳に転がっていると、開け放った座敷のほうから、どこのものともしれない生活の音。言葉までは聞き取れないひとの声。通りのほうか、車の音に混じり、やや気の早い風鈴の音色。
     今ではもう慣れた、この家を包む音たちが、銀時の耳には今日はヤケにくすぐったい。
     冷凍庫に海老がある。貰い物の、大きい良い海老だ。あれを下ろしてまずエビマヨネーズ。片栗粉を塗してカリッと揚げて、卵の黄身とマヨネーズと隠し味に練乳少しと塩胡椒。糸唐辛子をちょいと乗せよう。
     ジャガイモをふかして、ポテトサラダ。キュウリとハムと、確かミカンの缶詰があった。マヨネーズは多めに入れることにする。
     そうだ生椎茸がある。アレをトースターで焼いて食おう。昼の薬味のネギとミョウガと白胡麻に、マヨネーズを和えて椎茸に塗る。焦げるくらいが香ばしい。
     あとそれから、それから、それから。
     恥ずかしさのあまり無になるべく必死に夕食の献立を考え始めた銀時は、その献立が相方の大好きなマヨネーズ塗れであることを、この時、全く自覚などしていなかった。
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    irie_q

    MOURNINGワンライ「勝負パンツ」なのですが途中中折れして時間オーバーなのでタグ無しで。
    そして純さんのノーパン方くんとネタ被ってますごめんなさい🙏
    #土銀SS
    勝負パンツ「ちょっとそこへ座れ」
     土方が真顔で言い出したのは夜も更けてそろそろ眠ろうかという頃合。銀時は風呂で汗やら汁やら何かいやらしいものやらを綺麗に流して、さっぱりした風呂上がり。ここは連れ込み宿の一室、つまりは事後というやつだ。
    「なに」
    「いいから座れ」
     浴衣を雑に着て布団に胡座の土方が、タバコをふかしながらそう言い募るので、なにお前寝タバコダメだって何度言ったらわかんだよ本当によ、と小言を垂れながら『そこ』と言われた目の前にとりあえず座った。バスタオル一丁、胡座をかくのは躊躇われたので一応正座した。
     なぜバスタオル一丁かといえば、目の前にパンツがあるからだ。
     胡座をかいた土方の目の前、布団にくったり置かれているのは銀時が今日履いてきたパンツ。スーパーの衣料売り場のワゴンで買った、三枚千円(税抜)のピンクにイチゴ柄のアレだ。今日はさっさと脱いだので、汚れという意味では綺麗なものだが、それでも先ほどまで身につけていたものなので、そこはそれ、ちょっとはヨレている。
    1972

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    irie_q

    DONE #土銀ジューンブライド企画様、今年もありがとうございます!
    相変わらずうちの新婚なアレのひとたちのプロポーズの日なアレですが、宜しければお納めください
    6/6はプロポーズの日


     ちょっと相談乗ってくれ、と土方が言い出したのは、よく晴れた日曜日の昼下がりのこと。その日はふたり揃って休みだったので、昼飯は素麺にした。
     ゆで卵にツナ、庭からとってきた小ネギとミョウガをたっぷり刻む。白胡麻、糸唐辛子、花山椒。ごっそり茹でた素麺をそれぞれ丼に入れ、好きなように具と薬味を乗せてつゆをかければ出来上がり。これマヨネーズ入れるとうめえから、と教えると、土方の目が少年のように煌めいた。
     腹いっぱい好きなアレンジで素麺を食べて、熱い番茶をいっぱいずつ。湯呑み片手に、片付けの前に何か甘味でも食おうかな、と銀時が思案しているところに、土方から相談を持ちかけられた。
     なに、とどうでもない返事をすると、
    「そのな、プロポーズの言葉って、どんなもんなんだ」
     とそんなことを言い出した。
     藪から棒だ。
    「はあ? プロポーズ?」
    「おう」
    「なに、お前、どこかにしに行くの?」
    「違う」
     ンなわけあるか、とちょっとご立腹になりながら土方が語ったのは、こうだ。
     世の中が少し落ち着いて、真選組にも春が来た。若い男連中が人生の春を謳歌しはじめ、お付き合いからゴ 2787

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