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    素数ちえり

    素数は数えないタイプの素数です

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    素数ちえり

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    定期的に記憶を突いてきては「なんで続き読めないんだこれ…」ってなるので供養。サクモさんの呪いから抜け出せずに十年経ったカカシくんの話(後にオビカカになる)です

    愛された呪い その青年は、少年のままの姿でそこに留まっていた。
     
     
     *****
     
     
     ミナト先生に言われて向かったのは、なんの変哲もない一軒家だった。
     表札には「はたけ」と書かれている。
     オレはその姓をとてもよく知っていた。と、いうよりオレより上の世代で知らない人間はそういないだろう。
     
     はたけサクモ。
     木ノ葉の白い牙という異名を持つ、凄腕の忍。全盛期はあの伝説の三忍の名ですら霞むような活躍ぶりだったらしい。
     そう、だが今やそれは過去の名声だ。彼は重大な任務を失敗したのだ。実際には失敗、というより中断だったのだけれど。
     当時の木ノ葉では、失敗と大差ない。寧ろ失敗するより酷い扱いを受けたらしい。尻尾を巻いて逃げたのだと里中に中傷されたと聞いている。
     そして彼は、そのまま心を病んで自害した。
     
     だが、彼の亡骸は見つかっていない。
     そして、彼の息子であるはたけカカシの姿も。
     
     忍の亡骸が見つからないことなど、よくあることだ。けれど、家で自害したというのに亡骸が見つからないというのはおかしな話だ。
     亡くなったとされているのに。オレはそれが幼い頃から引っ掛かっていたのだけど、成長するにつれそれが真っ当な疑問であることも理解出来るようになった。
     そう、大人でも当たり前のように疑問に思うことなのだ。
     
     だから今回、暗部と共にこの任務に就いているわけだけれどオレとしてはちょっとしたホラーだ。
     夜中にアカデミーに侵入する、とかって肝試しに似ている。
     
     優秀な暗部連中はともかく、なんでオレだったんだって四代目火影で、オレの恩師であるミナト先生に聞いたら、オレがうちはであることと、「彼の息子であるはたけカカシが生きていたらオレと同じ班員になっていたから」だと言われた。
     先生の話を聞くに、そのカカシってのは年齢はオレの一つ下だが兎にも角にも優秀だったらしい。
     五歳でアカデミーを卒業して、六歳の時には中忍になってたとか。恐ろしい話だ。
     
     木ノ葉の白い牙は、里を裏切り、仲間の自尊心を裏切った。だから彼が死んで十年。
     その亡骸が見つからなかろうと、声を上げる者はいなかった。否、上げられなかったんだろう。
     たった十年前。大人からすれば多分そんな程度。でもオレも、ガキだったけどわかる。たった十年で木ノ葉は劇的に変わった。
     それでも全部が平和、ってわけじゃないけど。十年前に比べたらずっとマシだ。
     
     そして四代目火影となったミナト先生と、それから……彼と親しかったという、三忍の一人だる自来也様がようやっとはたけサクモとカカシの亡骸の捜索に乗り出したのだ。
     自来也様の調べで、恐らく幻術の類いだってことがわかって、それで。オレだ。
     オレより幻術に長けてるうちははいるのに、と思うが先生にも考えがあるのだろう。そうだと信じることにして、オレは暗部たちとともに家へと入る。
     
     幻術がかけられていた場所は、すぐにわかった。居間、だ。
     はたけサクモが亡くなったとされている場所。
     この程度の幻術なら、オレじゃなくてもその場で自来也様が解けたんじゃねえかなって思うけど任された任務なので打ち解くと、見えた光景に驚愕した。
     
     多分、この場にいた全員。言葉を失ったはずだ。
     
     
     ――そこにいたのは、はたけサクモだったと思われる骨と。はたけカカシと思われる、青年だったから。
     
     
     *****
     
     
     結論として、はたけカカシは生きていた。はたけサクモは亡くなって骨と化していたけれど。
     幻術をかけられてたって言ったって、十年だ。十年も飲まず食わずで生きていられるか。と普通は思うのだけど。人間の業、なのだろうか。多分、呪いだ。
     
    「父さんが、忍も。外も、危ないって言ったから。だからずっと家にいた」
     
     幻術が解けて、オレたちに連れ出されそうになったはたけカカシは、その見た目からは想像も出来ないほど幼い仕草で泣いた。
     泣き喚いて、「外は嫌だ、父さんといる、出たらダメだと言われたんだ」と繰り返した。
     手刀で気絶させて、安定剤打って、幻術をかけて、ようやっと落ち着いたところにミナト先生が聞き出して言ったのがさっきのセリフだ。
     
     それを、親の愛で、呪いだと言わずしてなんと表現するのか。とオレは思った。
     忍のやることで、なんでもありだと言われたらそうなのかもしれないけど。まぁ、忍じゃなくたって人間の世は不思議なことばかりだしな。
     
     あの、異臭と血に塗れた部屋の中で十年。
     自分の肉体だけ成長していることにも、気付かず。精神だけがあの頃のまま。こいつが落ち着くような幻術をかけているからまだこうやって落ち着いて話しているけど、それだっていつまで持つのか。
     
     多分、心がこどものままじゃ。解いたら折れる。
     優秀だから、当時の年齢の割に達観していただろうと思う。でも、精神が強ければもっと早く父親の業から逃れられたはずだ。
     それをしなかった、そしてできなかった。選択肢にすら上がらなかったことを考えると多分……そういう一点がかなり弱いと見ていいだろう。
     それはミナト先生も思ったのか、カカシが眠った後に彼に強い記憶を封じる術をかけることにするよ。と言った。
     
    「それで本題なんだけど。カカシの面倒をオビトに見て欲しいんだ」
    「本題を今言う……?」
     
     オレはこの人をとても、そしてかなり優秀な忍で火影だと思っているけれど。
     時々こうやって信じがたいことをペロっと言うので、首をキュッと絞めてしまいたい衝動に駆られる。
     
     まぁ、任務だよ。と笑って言われたら断る術なんて彼の部下であるオレにはないのだけど。
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