ボクの信仰する神 宇宙 愛ボクの信仰する神 宇宙 愛
信仰の対象を喪うと人間はこうなるのかと、イヴァンはティルを観察していた。
ROUND5終了から今日この日のROUND6のステージに立つまで、いや、ステージ上でもイヴァンはティルだけを見ていた。
ボクの信仰が喪われるのを恐れた。
神は既に居ない 宇宙は人間を捨てた そして愛は?
愛を ティルを喪なった自分がどうなってしまうのか。
想像したくなかった、ティルのような自棄になるのか、ミジのような抜け殻になるのか。それは完璧なペット人間であるボクでは亡くなってしまう。人気ランキング1位のIVANというアイドルを演じ続けることができるだろうかと自問する。
イヴァンはマイクを握り囁くように歌う。歌声に世界を宇宙を恋に落とす色香を乗せる。セゲインが喜ぶように整えた衣服、雨天のステージで映えるよう前髪を上げて雨のしずくがひとつふたつ流れるようにセットしたヘアスタイル。外見を整えればアイドル足りえるわけではない、宇宙はペット人間の魂の鳴き声を求めている。
ティルが歌うのをやめた。そぼふる雨音だけがそこにある。
このままではティルが敗ける(ボクの神が喪われてしまう)
次のステージで完璧に泣けない(ボクの世界が壊れてしまう)
何の為に歌えばいい?(ボクの愛が喪われてしまう)
イヴァンはティルのもとへと駆けた。はずみで倒れたマイクスタンドが耳障りな悲鳴をあげる。ティルがのろのろと顔を向けると同時に、イヴァンはティルの唇を奪った。
抵抗を示すティルに唇を押し当て乞うように首を傾けるがティルは応じない。ぎりと首を締めあげて苦し気に喘いだ隙に口内を犯す。アイドルとしてのIVANではなくイヴァンとしてステージに立っている背徳感に心が躍る。これが愛なのだとイヴァンは思う。
スコアのカウントが始まる。ティルの数字は伸びが鈍い。
イヴァンはティルの首に両手を掛けた。
掌にティルの鼓動が響く。人間が生きている音だ。掌にティルの体温が伝わる。人間が生きている温度だ。これを止めればいいのだとイヴァンは理解した。人間の殺し方は、たくさん殴って血を流させることだけだと思っていたら違っていた。これならティルの血を他の誰にも見せずに済むとうヴァンは安堵した。
首輪の光が赤くなる。血を思わせる赤い光。邪魔な首輪だなと思った。
これが愛を永遠にする方法(心中っていうんだって)
ティルの数字がひとつ上がった。
イヴァンは笑む。その直後に銃声が響く。